緩和ケア病棟に勤務していた頃、
九州からいらっしゃった方がいました。
すい臓がんで腹水が溜まっていたので
飛行機でいらっしゃる前日2ℓ腹水穿刺と点滴を受けたようでした。
数時間かかって病棟に到着された時、ぐったりとされ
「抜く前ともう、同じ張り感です。」
採血では、クレアチニンは3近くにあり、急性腎障害となっていました。
この病態は、次のことが考えられます。
1)腹水は蛋白など栄養に富んでおり
点滴はポカリスエット程度の栄養分しかないことから
穿刺をおこなうと薄い体液(低栄養)になってしまう
2)急速な腹水排液により、体液が変動し血管内脱水が起こる
3)2つのことから腎障害のリスクが高くなった
4)がん性腹水の場合、抜けば、腹圧が下がった分、同じだけ再度貯留しえる
このような場合は、
できるだけ穿刺しなくても済むように薬剤を調整して
腹部の張り感を最小限にするようにします。
そして、点滴で水分を入れすぎないようにします。
すると、次第に腹水を体は使い始めるのです。
実際、低血圧にならないように点滴量はゆっくりと減らし(3割ずつ)
体液が定常化するように粘りました。
この間、一度だけ300mlほど穿刺しましたが
その後は抜くことなく症状緩和できていました。
この時、鍵になる薬剤は、非ステロイド性抗炎症薬
モルヒネなどのオピオイド、ケタラール
ステロイド(抗炎症効果の高いもの)です。
ただし、腎障害があると非ステロイド性抗炎症薬は投与できません。
こんなところにも、昨日のケタラールは本当に効果的です。
一日50mgから次第に250mgくらいまで効果があるところまで増やしていくのですが
初期の50mg/24時間投与でもよく効きます。
腹水、胸水は、兎に角、できるだけ抜かないで薬剤でコントロールしていくことです。
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そうそう、3月に亡くなった我が主人も昨年末から腹水が溜まり、少し抜きましたが、熱が出たりするのと、体調が本当に、ガックリと悪くなりましたので必要最小限しか腹水を抜きませんでした。(腸の辺りが、幾つもの小部屋に分かれてしまっていて、抜けない状況にもなっていましたが。)
それに応じて、点滴量も少なくしていただいたり・・・。
改めて、適切な処置を受けていたと実感しました。