イチロー・カワチ先生は日本生まれのハーバード大学の公衆衛生大学院教授。
昨日は帰国されて、ショートレクチャーを所属先で。
社会医学は暮らしに直結していて、それを科学するので、説得力があります。
昨日の話の中からトピックスを。
ソーシャル・キャピタルとは、
人との結び付きを支える仕組みの重要性を示した概念。
つまり・・
人はつながっていて、健康を保っているということです。
そのソーシャル・キャピタルを次の二つに分けた概説でした。
Bonding social capital:
内部結束型ソーシャル・キャピタル(中で結束)
同じ傾向の人々が固まってしまう。
友情はこれ。
友情は、社会階級ごとのクラスター化を認める。
Bridging social capital:
橋渡し型ソーシャル・キャピタル(グループ間を結びつかせる)
多様性のある集団
例えば、高所得者が低所得者と混ざると、情報提供や影響が波及し、経済的流動性を生み、こういう地域は格差が小さくなっていくのだそうです。
アメリカの研究で、低所得の家庭の子供は大きくなっても低所得という環境を打破することが困難な傾向がある一方で、社会や地域の中に多様性がある(高所得者と低所得者がともに時間を過ごすことができるような環境、例として、ボランティア活動などが整備されている)と、子供達は成人したときにその環境をブレークすることができると報告されていました。つまり、社会の様々な層が混ざり合い、グループ間に橋が架かっているような地域であることが重要で、指数化されたグラフでは、サンフランシスコが特によい地域でした。
(Natureの論文を引用。論文のVol.などはメモが取れませんでした)
感染症(コロナなど)や地震などは隔絶させたり、格差を大きくさせる。
実は、
AIやIT化は人と人とのネットワークの成長を減速させてしまう。
フェースブック(FB)を使った研究。
FB広告で募集した2743人に対するランダム化比較試験
(ランダムに2グループに分け、それぞれに条件を課し、その二つのグループ間で結果にどのような差がでるかみる研究方法)
一つのグループ:今まで通りFBを使用。
一つのグループ:FBを辞めてもらった。
結果、
FBを辞めたグループは
一日60分の余裕が生まれた。
それを、多くの人は対面時間に使い、
さらに、満足度や幸福感が大幅に改善したという結果でした。
この時の対面時間の使い方のトップ3は
ディナーに行った。
友人との交流
親に会いに行った。
この研究に限定した結論ですが、
FBは対面での社会的交流を排除し、その結果幸福度が低下していると考えられました。
AMERICAN ECONOMIC REVIEW. 2020, 110(3), 629-76
逆に言えば、
友人や親に会いに行く、食事を一緒にするといった年末年始は、幸福感を増強する機会でもあるのですね。
SNSで上手くつながれば、ネットワークは広がるようにも感じますし、コストの削減にもつながるという長所があります。一方、似た者で固まる傾向が強化されたり、依存、うつ、誤った情報の拡散、エコーチェンバーなどの短所は、他者との深く良好なつながりを阻害し、幸福感を低下させたりするのだろうという考察と共に、カワチ先生は、SNSが悪いということではなく、デジタルトランスペアリング(デジタルの透明性)の確保を行い、リスク管理(何が問題なのか理解し対応すること)が重要だと結論付けていました。
SNSで上手くつながれば、ネットワークは広がるようにも感じますし、コストの削減にもつながるという長所があります。一方、似た者で固まる傾向が強化されたり、依存、うつ、誤った情報の拡散、エコーチェンバーなどの短所は、他者との深く良好なつながりを阻害し、幸福感を低下させたりするのだろうという考察と共に、カワチ先生は、SNSが悪いということではなく、デジタルトランスペアリング(デジタルの透明性)の確保を行い、リスク管理(何が問題なのか理解し対応すること)が重要だと結論付けていました。
ITの手軽さより、対面の社会的交流が勝るということでしょう。
他者とのかかわりの希薄化は、特に、若者に影響が大きいといわれています。
SNSの影響を強く受けやすいのかもしれません。
Bridging social capital:
橋渡し型ソーシャル・キャピタルを育んでいくために
社会インフラの強化:
コミュニティーセンター、ボランティア活動、公共交通機関都市計画、公園、地域の遊び場(産後うつのお母さんの割合を有意に下げた)、図書館、体育館などを整備し、多様な人々が集まる場を確保する。
地域の医療・福祉、介護や行政機関を強化し、社会的処方を高めていくこと
コミュニティーサポート 医療者、リンクワーカー(日本では地域包括センターや保健師さん、ケアマネジャーさんなどでしょうか)が医療ではない支援(病院などではなく、腰痛体操クラブとか患者会、健康相談窓口といった地域のサポートシステム)につなげていくことが大切。
Our Epidemic of Loneliness and isolationsより
Our Epidemic of Loneliness and isolationsより
最後に
能登半島地震のことで、危機にさらされている人々にとって、この橋渡しソーシャル・キャピタルを意識することがとても大切だと思いました。
東北の震災の時のデータからカワチ先生は、
避難所から仮設住宅に移動するとき、
それまでのつながっていた人々と離れてしまった人々は健康障害(うつ、生活習慣病など)が多かったと話されました。
今、感染症予防対策で親から離れて中学生が疎開するといった対策が聞こえてきます。
感染症を予防しつつ、分断が短い期間となること、つながりを維持できる工夫(それこそ、Zoomなどを使って顔を見ながら話ができるなど、デジタルをよい形で活用するなど)、分断されることがリスクがあることを心に留め、皆で(階層化(能登の方々のみ)にせず)、応援していきましょう。
👀 Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像
👀 Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像