エバ夫婦の山紀行ログ

道産子60代、四季を通じて主に夫婦で登った北海道の山を中心に紀行文を載せています。アウトドア大好き夫婦。

幌天狗(1222m)~群別岳(1376m)

2009年04月19日 | 山紀行 (増毛・夕張・芦別)
増毛山魂・・・幌天狗(西群別岳) (1222m)~群別岳 (1376m)

■ 山 行 日     2009年4月18日(土)~19日(日)   1泊2日
■ ル ー ト      浜益岳林道~南西尾根ルート 往復
■ メ ン バ ー      夫婦登山 №16
■ 登 山 形 態     山スキー&アイゼン・ピッケル登行
■ 地 形 図      1/25000地形図  「浜益」「雄冬」
■ 三角点・点名    三等三角点・点名 不明
■ コースタイム    1日目 登り 3時間10分 (C715付近テン泊)
           2日目 登り 5時間5分  下り 5時間10分

<登り>
4/18 浜益林道入口12:50---C550尾根上14:50---C715尾根上16:00 テント泊
4/19 出発4:40---幌天狗 7:10---群別岳 9:45
<下り>
群別岳 9:50---幌天狗 11:40---テン場 12:40~13:20---登山口15:00



★ 未踏の1000m超峰を求めて・・・
念願の増毛山魂の中で最も厳しい山とされる鋭鋒「群別岳」へ南西尾根上にある
「幌天狗(西群別岳)」を経由して挑戦する計画を立てていたが、とうとうその日を迎えることが出来た。



果樹園の終点が浜益岳林道の入口・・この先にゲートがある


車から100mほど進むとゲートがあり林道の出発点になる (ようやくスキーが履けるほどの残雪)

登山口は、国道231号線浜益村幌地区の幌川に掛かる「新幌橋」を渡ってすぐに右折する舗装路に
入る。道なりに3kmほど進む間に左右「さくらんぼ」などの果樹園がありその終点が林道(浜益岳林道)
の入口だ。ここまで舗装路である。
入口には先客の車が2台駐車してありその先には残雪もあったので侵入は不可能だった。
道路脇に駐車し出発準備を始める。



少し登った林道の状態。雪解けで林道が川化している・・・

天候はくもり。ちょっと遅い12:50の出発となった。
幸いにして林道入口からスキーを履いて登ることが出来たが、少し進むと林道の雪解けが川と化し
2度ほどスキーを脱ぐ場面もあった。それ以降は問題なく雪山の南西尾根だった。
スタートして25分ほどの所で沢の渡渉 (橋が崩壊しているため)があるが今回はスノーブリッジを
渡って対岸の林道に行くことが出来た。これが無ければ飛び越える際、渡渉に足を濡らす事も・・。

先行者のトレース(スノーシュー)は、真新しく読図をしながらもありがたく利用させていただく。
今回はスタートも遅いので出来れば700m付近の尾根上まで登り、テントを設営したいと思っている。
そして、明日は早朝の出発でアタック・・という計画である。


★ 久しぶりの重装備3時間でタイムアウトも・・・

ルート的には、林道の残雪状態によって複雑な地形は非常に分かりずらいと感じた。
GPSを持たない地図がガイドの・・エバ夫婦にとって慎重になる入山初期の読図である。
それでもC500mまで登ると林道から離れ尾根も顕著に広くダケカンバと松の疎林帯となるので
少し安心してくる。ピンクのテープは欠かさず付けて登るのはエバスタイルだ。



C550m付近の広い尾根を登る・・

★ 16時でタイムアウト・・何とか700m強でテン場

登山口からほぼ3時間でC715m付近の広く平らな尾根上に着く。
久しぶりの重装備もあるが時間的にもこの辺が限度と見てテン場に決めた。

16:20 テントの設営を終え、明日の好天と成功を祈って安着の儀へ移行する。
今夜のメインディッシュは、チーyan特製トマト野菜スープだ。




特製トマト野菜スープ・・いつも美味しい鍋料理の一品です。

外は予想通り、雪が降って来たが風は弱く明日の好天に期待するばかりだ。
早朝の出発に備え夫婦の山談義は19:30で終了、20:00には就寝した。


★ 4/19 満天の星空そして無風・・・

夜中の1:30頃トイレでテントを出ると、昨夜の雪も風も収まって満天の星空と月夜だった。
もうこのまま起きたいほど高まる鼓動を感じた。今日はいい天気になるぞ。何としても群別の頂を
踏みたい・・と強い意欲が湧いてくる。そのためにも、もう少し寝よ・・とまたシュラフに潜り込んだ。

2:30 起床。
いつものようにコーヒーを落とし、チラッと外を見て月夜に浮かぶシルエット状の浜益御殿の南西尾根
を望みにんまりとするエバである。

4:40 出発。気温は0℃。
薄っすら積った新雪は1cmにも満たないが雪面は程よく固くなって歩き易かった。
昨日先行しているはずのパーティーは何処でテントを張ったのか?ベストテン場は、ビューポイントの
幌天狗頂上らしいが取り合えずこの広い尾根を辿り高みへと進んで行った。
次第に疎林帯から森林限界に近づくに連れ視界も広がり正面に望む幌天狗の後ろからはご来光の
陽が間もなくというところだ。気が付くと一面が雲海となって右側には黄金山がポッカリとそして
神秘的に顔を出していた。



夜明け前の南西尾根から雲海と黄金山が顔を出していた・・・

雲海の中から顔を出す「黄金山」は神秘的だった・・・

★ いよいよ 幌天狗と核心部へ・・・
先行パーティーはここに居たのかぁ~・・・
幌天狗手前のC1044付近でスキーをデポした。(6:30頃)
強風と突風そしてこの先の急斜度を見てアイゼン歩行が安全と見ての判断である。
その前に先行グループを始めて目視した。
地図上の943.4m三角点ピークの北側にテントを確認し9名のパーティーだった。
颯爽と隊列を組み一列になって登る様は実に格好が良かった。昨日からトレースを作ってくれた
パーティーに間違いなく出来れば追い着いてお礼を言いたいと思った。



スキーをデポして、幌天狗手前の広い南西尾根を登る・・

★ 快晴・強風の初登頂・・幌天狗(1222m)
先行パーティーが幌天狗に達する頃エバ夫婦のスキーデポである。
ここから再びトレースを辿りながら「幌天狗」の頂上を目指しアイゼン歩行する。

7:10 幌天狗(1222m) 頂上。到着・・
テン場から2時間30分だった。
初登頂なのにその感動が起きず突風に耐えつつその先に立ち尽くす鋭鋒・群別岳が余りにも強烈に
目に飛び込んで来た。チーyanと登頂の握手はしたが三脚を出して記念写真を撮れる状況に無く一人
ずつ写真に収めてすぐに出発する事にした。先行パーティーがデポしたスノーシューがまとまって頂上
に残され、彼らの姿はその先のC1189mとC1171mの間にあるコルに確認した。
彼らとの時間差は50分だった。
到底追い着ける時間ではなかったのでマイペースでトレースを利用させて頂いた。


★ 1171m点を下降する先行パーティー・・・?


幌天狗(1222m)頂上・・(下山時に いさむさん@に撮ってもらう) 背景は群別


初登頂! 幌天狗(1222m) 頂上にて (背景は群別岳)


幌天狗を後に 痩せた南西尾根に挑む・・・


幌天狗から群別岳に挑む・・・


群別岳南稜岩峰西側のコルに着いたエバ夫婦・・(写真提供 いさむ@大麻さん)
写真右側が南稜岩峰・・とても登れるものではない


★ 先行パーティーに追い着いた・・・

南西尾根、標高1171mピーク手前で先行パーティーに追い着いてしまった。
良く見ると何故か彼らはロープを使って下降しているのを確認。追い着いた理由は判ったが
何故下降しているのかが判らなかった。もしかして1171mピークの先がガケ状で降りられ
ないので下降しトラバースするのかなぁ~と思いつつピークを越えて偵察して見ると通過可
能のルートだった。
すでに下降を終えていた彼らとは挨拶が出来ぬまま追い越す形となりエバ夫婦が先行した。


先行していきなりの洗礼・・・・

1171mピークを越えた先には小さな岩峰があり左右は切れ落ちた痩せ尾根である。
地図上にも僅かにその痕跡が示されているが、岩峰の上を辿るのは困難で止む無く北西の
急斜面をトラバースするしかなかった。今ルート最大の山場である。
距離は20~30mも斜度は50度と言ったところだろうか。スラブ状の斜面に果敢に挑むエバ、
12本歯のアイゼンとピッケルを駆使して蟹歩きの言わばヘツリである。当然落ちれば怪我で
済むはずもなく緊張した場面だった。しかし、なんとかクリアーして再び尾根上に戻ると
そこには見たことも無い群別岳の雄姿が目の前に聳え立っていた。
どこから見ても鋭鋒・群別岳なのだが、間近に見上げるここからの群別は圧巻である。
そしてまたこんな山のどこから登れば登れるのか・・と不安さえ覚える美しさと険しさを感じた
ほどだ。


★ ルートファイティング・・・

圧巻の現場、コルからのルートは群別川の源頭をトラバースしながら群別岳南(南尾根)峰の
南側稜線に上がる。次に岩峰東側の斜面をトラバースしながら岩峰の北側稜線に登り頂上
への登りとなる。
このルートファイティングは、エバも後続の9人パーティーも同じ考えであった。コルで始めて
合流した9人パーティーはある登山ツアーだった。そのガイドにC1171でロープ下降した
理由を訊ねると・・「勘違い」「記憶違い」の間違いだったと言うので少し安心した。
50分の差が一気に追い着いた理由が判ってまずはホッとする。

以降は総勢11名のパーティー化していよいよ念願の登頂となったが同じ頃群別岳東尾根
からも10名のパーティーが登って来て彼らがひと足速く登頂した。
鋭鋒群別の頂上は強風が吹き荒れる狭い場所で10名でも一度に登れない。
そのため直下での順番待ちである。

そして・・
9:45 頂上到着。

感動の群別岳 (1376m) 登頂に成功!
偶然にも総勢21名が順次登頂、大賑わいのピークである・・


群別岳(1376m)頂上・・・団体で大賑わいだった。

登り8時間の登頂もわずか数分の滞在

★ 時間待ちの群別岳・・・
なんて考えられなかった。
なんでこんなに人が居るんだ?と言いたいエバ夫婦の誤算である。

ただこうして無事登れたのは先行していたパーティーのトレースに大いに助けられたからで、
「静かな群別の頂?」なんて余裕を見せられる立場にないのも事実だ。好天にも恵まれ微妙な痩せ
尾根の通過もルートの確認も最後の急登も皆先行パーティーが居たからこそ登れ切った登頂だと感
謝している。

強風が吹き荒れる中、わずか数分の滞在ではあったが「賑やかな群別もまた良し」であり
その眺望も目と心に焼き付けて大満足の群別岳になった。



群別岳の下り・・・
★ 9:50 下山開始・・・
順次入れ替わって頂上を踏み、順次下山する各パーティー・・出来れば最後のエバ夫婦だけ
こっそりとゆっくりと頂上を満喫と行きたいところだがどうしようもない風がそこにあった。

東尾根から登って来た10名のパーティーは、浜益岳からの縦走隊で直接繋がっている北西尾根
からの登頂は厳しいので群別岳の北斜面をトラバースして東尾根に登ったらしい。帰路はエバたちと
同じ南西尾根を下り登山口に車があるそうだ。2台あった内の1台であった。

頂上での突風は少し降りただけでそよ風に変わり日差しが暑いくらいだった。
総勢21名3パーティーは互いに抜きつ抜かれつのペースで幌天狗までほとんど一緒だった。
しかし、ここで他のパーティーはスノーシューや輪かんを付けるため休憩を取っていたので
エバ夫婦だけ先行して下りた。ただこの下にスキーをデポしていたので結果また追い着かれる。



直下のエバ夫婦・・・  (写真提供 : いさむ@)


群別岳から往路を下る先行パーティー・・・正面は南尾根の岩稜帯

南岩稜帯の東斜面を下るエバ夫婦・・背景は群別岳 (写真提供:いさむ@)

南尾根岩稜帯の東斜面をトラバースするチーヤン (真後ろ奥が群別岳)


エバ      (写真提供 : いさむ@ )

帰路・・群別岳を背に幌天狗への登り  (写真提供:いさむ@)


C1189mの北西斜面をトラバースする先行パーティー


幌天狗への痩せ尾根を辿る・・・(正面奥が幌天狗)

★ なれどスキーは早し・・・
群別岳頂上から幌天狗までの下りは1時間50分。
また幌天狗から直下でスキーに履き替えテン場のC715まで約1時間だった。
シールを付けたままでも下りのスキーはやはり早い。ツボ足組はあっという間に見えなくなり
ほどなくテン場に到着する。



帰路のテン場にて撤収前に撮影・・・
テントの撤収やパッキングで40分ほどの休憩となった。それでも後続からの姿は無かった。

13:20 再び重荷を背負って下山開始だ。
最初シールを付けたまま滑り始めたが昨日の新雪と旧ザラメ状の雪面はブレーキがかかって
滑りずらかったのですぐにシールを外してスキーモードにした。


★ 快適なスキーを楽しむ・・・
テープを回収しつつも緩斜面の南西尾根は下手なエバ夫婦のスキーでも何とか楽しむ事が出来た。
「これなら幌天狗からシールを外せば良かったね」と後の祭り。


★ トレースはほとんど判らなくなっていた・・・

昨日助けられたトレースは今日の暖気と昨夜の僅かな新雪で判らなくなっていた。
また、今日日帰りで登って来ているパーティーも幾人か居てその滑り降りたトレースがルートを迷わせる。
幸いこまめにテープを付けていたので問題は無かったが地図とコンパスだけでは不安になるほど大きく
広い南西尾根であった。


★ 春はそこまで・・・

300m付近の林道沿いに小さな小沢が・・・満開のエゾノリュウキンカ(谷地フキ)が疲れを癒す

間もなく登山口という林道の脇に小沢が流れそのわずかな溜りに日が当たって暖かな場所だった。
谷地ブキという名で親しい「エゾノリュウキンカ」が三株ほど黄色い花を咲かせていた。

重荷を背負いザラメ状の雪道をようやく降りてきて、ホッと疲れを癒される春の花にであった思いだ。

林道の雪解けは進み、昨日に増してスキーを脱ぐ回数があり足元をドロで汚しながら車に着いた。
15時丁度である。

山行をトータルすると、登山口から登り 8時間、下り 5時間である。
この位だとやっぱり1泊が丁度いい。

10名の縦走隊は南西尾根を忠実に辿って幌川左岸の林道に下りたようだった。
先頭組は私たちよりも早く車に着いていた。


エバは2度目の群別岳も時期も違えばメンバーも違う頂に新たな感動と満足感に浸る山行だった。
パートナーチーyanにお疲れ様と感謝の意を表し、そのパートナーも・・次回が北海道1000m超峰
200座目の登頂となる事も記しておこう。

帰路では、浜益村の門脇商店で名物の「ゆでダコ」を購入し浜益温泉で疲れを癒し、
18:30無事帰宅した。






※ このページは2013年3月に再編集致しました。