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たかつき市民環境大学

2024-09-30 16:45:08 | たかつき市民環境大学

たかつき市民環境大学

第14回「クモから見た虫と自然」

日時:2024年9月29日(日)10時~12時

場所:あくあぴあ芥川 3F多目的ホール

講師:中田兼介さん

  (京都女子大学 現代社会学部 教授)

 

 本日の講師を務めてくださる中田先生は、京都大学理学研究科博士後期課程を修了され、

長崎総合科学大学人間環境学部 講師、東京経済大学現代法学部 准教授を経て、現在は

京都女子大学で教鞭をとられております。

 今回のテーマは、身近にどこにでもいるのに、苦手な方が多いかも知れない生き物”クモ”

についてです。クモの拡大写真も掲載しておりますことを予めお断りしておきます。

内容:

 午後からの「あくあぴあ芥川周辺でのクモの観察」を行う前に、まず午前中に座学でそもそもクモって何?どんな生き物について学びました。本日は、18名(数名欠席)の受講生の皆さんが、興味深々、ちょっとドキドキしながらなど、それぞれの思いをもって聴講されました。

 

 虫は、人類、獣類、鳥類、魚類以外の小動物の総称だそうですが、じゃあクモって何? 

 クモは虫の仲間ですが、虫編の漢字はたくさんあり、上の写真の中の漢字の読み方を教えて頂くと、恐らく皆さんがご存じの生き物ばかりでしたが、記号別にグループ分け(体系化)されることも知りました。

  〇:蝉(せみ)、虻(あぶ)、蛍、蝶、蜂、(のみ)ーーーーーー昆虫

  ▢:蜘蛛(くも)、蠍(さそり)ーーーーーーーーーーーーーーー鋏角類(きょうかくるい)

  五角形:蜈蚣(むかで)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー多足類

  ◇:蟹(かに)、蝦(えび)ーーーーーーーーーーーーーーーーー甲殻類

  _:蛞蝓(なめくじ)、蝸牛(かたつむり)、蛤(はまぐり)ーー軟体動物

  太点線:蛙(かえる)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー両生類

  細点線:蜥蜴(とかげ)、蛇ーーーーーーーーーーーーーーーーー爬虫類(はちゅうるい)

  無記号:蚯蚓(みみず)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーその他

 

 少々難しくなってきましたが、クモは節足動物(体がたくさんの節でできており、その節に、間接をいくつも持った脚がはえている動物)の中の「鋏角類」に属すそうです。

 鋏角類の特徴は、1対の鋏角(口の直前にある1対の関節肢で、主に餌を掴む為の口器として用いられる)と、複数対の歩脚型の肢(手足)を持っているんです。

 クモの脚は8本ですが、海の中に住んでいるカブトガニ(脚は10本)もクモの親戚だそうです。カブトガニを裏返すと、ちょっとクモっぽい?クモは歩くための8本の脚をもっていますが、実は元々は10本脚だったとか。2本の触肢は脚が変化したものでしょうか?

 

 鋏角類の名前は、鋏角類に特有の付属肢は通常小さくて目立たない鋏(はさみ)型で、それが由来になっているそう。クモの鋏角は牙状なので例外なのでしょうね?サソリのハサミは、鋏角ではなくて触肢だそうですよ。

 

 さて、ここからがいよいよ本題。ハエトリグモの顔をご覧ください。

 8個の目を持っていて、そのうち正面の4個はとても大きく、動くものに対しての反応が凄い。キバみたいに見えるのは2つの節からなる鋏角(上あご。触肢)。クモは肉食なんです。まず、これを刺して、毒を注入して動けなくして食べるわけです。

 サンデーナイトスクープというテレビ番組に、スパイダーマンに憧れている男の子から、クモに嚙まれたいという依頼があり、先生に大丈夫かと相談されたそうです。そこで、先ず大人の指に2本の触肢を押し付けてみたが、大丈夫だったようです。ただ、外来種の「セアカコケグモ」は毒を持っているので、危険です。もし見つけたらその場で処分してくださいネ。

 クモの鋏角は、別の役割も果たしています。クモは繁殖のための交尾をせずに、雄クモは精子を地面に置き、雌クモは好みのものを見つけると、吸い取って受精するそうです。精子を触肢(オスの頭部にある突起状のもの)に収納しておき、メスの腹部の生殖器に挿入(交接)する種類もいるのだとか。不思議な生態ですね!

 メスが交接後に相手のオスを食べる「性的共食い」という恐ろしい行動は多くの種にみられ、栄養補給のためなどと考えられているそうですが、(男にとっては)少々悲しい話です!! この他にも、いろいろ興味深いお話が続きます。

 

 クモは頭胸部(頭と胸)と腹部(腹部の先から糸を出す)の2つに分かれており、4対8本の脚を持っていますが、観察していると、3本位しかないものも見かけます。天敵に襲われたクモは自ら脚を切り離して身を守ることがあるそうです。クモの脚は生え変わらないのでそのまま。可哀そう!

 クモの脚には凄い能力?があるんです。脚を曲げる時は、人間と同じように筋肉を使いますが、伸ばす時は、何と、関節に蓄えた体液の圧力(水圧)を使うそうです。水圧なので、かなり大きな力を出すことができます。(脚が細いので、中に脚を曲げるためと、伸ばすための2本の筋肉を納められないという事情から体のメカニズムを進化させた)

 受講生から質問がありました。

Q1.クモには羽根のある種はありますか?

A1.クモには羽根はありません。節足動物の中で羽根があるものは昆虫だけで、大きな特徴です。

 

 皆さん、地球上にクモは何種類くらいいると思いますか?答えは次の写真をご覧ください。

 

 2023年時点で51,478種(日本だけでも1,600種)ですが、昨日先生がワールドスパイダーカタログで確認されたところ、52,338種に増えていました。平均すると、毎日2.4種の新種が見つかっていることになるそうです。まだ見つかっていないものを含めると、地球上には約12万種のクモが生息しているとか。何だか不思議な感じがしますが、体が小さいことで、生息スペースが狭くて済むし、餌の量も少なくて済むし、いろんなところに適合し易いなどの理由が考えられるそうです。

 

 クモの姿形も多様です。

 

 このクモは、オーストラリアに生息しているピーコックスパイダーです。オスがメスに求愛する時クジャクのように体を広げます。網を張らないタイプのクモです。

 

 このクモはトゲグモの仲間で、日本には居ません。日本にいるものは白黒です。

 

 このクモは、ハワイで塗り絵のお土産にもなっているハッピーフェイススパイダーです。

 

 このクモは、ペリカンスパイダーです。ペリカンによく似ていますね。

 

 このクモも面白い形をしていますが、残念ながら日本には変顔などのクモは少ないそうです。

 

 ここでまた受講生から質問がありました。

Q2.網を張らないクモと張るクモの割合は?

A2.半々くらいです。クモは元々網を張っていたが、進化の途中で網を張らない種が出てきたようです。それらのクモの中には、ハエトリグモのように視力が0.1(クモにとっては凄い視力)もあるものがおり、視野は前方2度と狭いが、目の裏の網膜により目玉を左右に動かせる上、ピントも網膜で前後に動かせるので、獲物を探す能力は高いのです。

 

まだまだいろんなクモがいます。

 これは卵からかえるまで卵のうを守るクモです。子グモを背中で子育てするものも。コモリグモなどがいます。和名はまさにそのままで分かりやすいが、英名ではウルフスパイダーというそうです。狩りの上手さから来ている?ようですが、興味のある方は是非調べてみてください。クモは名前も面白いですね!

 

 女郎蜘蛛はオスとメス(卵を産むため大きい)が同居するタイプのクモです。オスは体が小さい方が動き回りやすいし、餌の量も少なくて済む?などのメリットが大きいようです。網を張るタイプに多いそうです。

 オスの見分け方は簡単?オスの触肢は丸く膨らんでます。中は精子を貯めるためにスポイド状で、交接時にメスを掴む為の爪を折り畳んで仕舞っているそうです。

 

 さて、クモと人との関わりについて。

 クモは身近な生き物ですが、室内の虫の種類を調査した結果、1位ハエ、2位クモでした。映画のスパイダーマンは”親愛なる隣人”でしたね。

 

 そろそろ午前の講座は終わりに近づきましたが、クモは科学研究分野でも貢献しています。

NASAは、重力のない宇宙空間でクモがちゃんと網を張れるかという実験のため、5回クモを宇宙に連れて行きました。その結果、網は張ったが形はひどく歪であったそうです。しかし、照明の光に向いて網を張るという発見もありました。

 

 その他書き切れなかった面白情報を箇条書きにしておきます。

・沖縄のオオジュロウグモはシジュウカラを食べた報告があり、ネズミや小魚なども食べる種がいて、クモは基本的には肉食ですが、ヴィーガングモもいるそうです。

・毒を持っているクモもいるが、人間を殺す生き物の中でクモはほとんど心配しないで良い。

・クモは年間4億~8億トンの虫を食べており、これは全人類の総重量に相当するそうです。

・クモの糸から繊維を作り、販売している会社もあるが、クモの糸は蚕より強いそうです。特殊な加工をしたクモの糸は、断面積当たりの強度が鉄より強いものもあるとのことです。

 

お話の途中に写されたクモの写真を見て、思わず悲鳴に近い声を上げられた受講生も居られま

した。中田先生は、まだまだ話し足りないと言われてましたが、本やネットでは学ぶことができない

面白く、不思議なお話を聞くことができて、受講生の皆さんは楽しい時間を過ごされたように感じま

した。

皆様お疲れ様でした。

 

午後からは、第15回「クモを探そう」です。お楽しみに。

 

(ご紹介)

中田先生はいろいろな本を著されておられます。もっとクモのことやいきものについて知りたい方には、次の本をお薦めします。

「クモのイト」ミシマ社

「もえる!いきもののりくつ」ミシマ社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                              

                              

                

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   


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