勝海舟の研究で知られる松浦玲氏の「明治の海舟とアジア」(岩波書店)という本があります。勝海舟といえば江戸無血開城の西郷隆盛との談判で知られ幕末の行動に注目され、明治に入ってからは明治政府の求めに応じて役職に就いたりはしていますが政治の第一線からは退きもっぱら評論活動をしていて、あまり注目されていません。しかし明治に入ってからの勝海舟の言動は非常に興味深いものがあります。その辺のことがこの本に実によく書かれています。明治政府は欧米列強に追いつけ追い越せと必死に欧米に注目して技術や文化などの導入に努力します。勝海舟もまちろん幕末に咸臨丸でアメリカにわたりその技術・文化には非常に関心をしめしていましたが、明治政府が欧米諸国に関心を示しているときに勝海舟はアジアに目を向け実際に清国の実力者と交流していました。また、明治政府が推し進めた日清戦争にも反対していました。また、国内に向けては鉱山開発など国をあげて殖産興業を推し進めているときに、足尾鉱毒問題で苦しんでいる被害民の支援活動に奔走している田中正造を応援したりしています。勝海舟は、その時代の流れを十分に把握しながらも、その流れに流されず、また誰に何を言われようとも、物事の本質を見極め一人になっても独自の行動をとっています。ここに勝海舟の信念が見られます。
現代のグローバリゼーションの流れの中で、今は・・・。
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