本日は秋葉原のUDXシアターで行われたエイズ予防財団主催の講演会・シンポジウム「エイズの発見から30年」に参加してきました。正にエイズの発見から30年ということで発見から今までのエイズ治療、治療薬やエイズを取り巻く社会状況、予防施策を歴史をたどって説明があり、また今後の課題も話がありました。この30年のエイズ治療は他の疾病に比べても格段の進歩があり、最初のころはエイズは死ぬ病気と言われていましたが、最近の10年では治療薬の開発や多剤併用療法によりコントロールが出来、もはやエイズでは死ぬ病気ではなくなりました。しかし、治療の進歩によりHIVに感染した陽性者でも治療をすれば生き続けられる時代になりましたが、治療薬は飲み続けなければならず、薬の値段が高く経済的な問題や多くの薬を飲み合わせるので副作用による他の疾患を併発したり、何よりも社会のエイズに対する理解不足からくる差別・偏見がHIV陽性者の生活を難しくしています。エイズ治療にはHIV感染の早期発見が重要で、発見が遅れてエイズを発症したら手遅れになります。早期発見にはHIVの抗体検査が重要ですが最近では検査件数が減少しています。検査件数が減少傾向にある状況も懸念されるところです。国立国際医療研究センター病院のエイズ治療・研究開発センター長の岡先生は「HIVを見つけてあげることが命を救うことになる」とおっしゃられていました。
医療技術の進歩によりHIVに感染しても生き続けられる時代になりましたが、社会のエイズに対する理解不足からHIV陽性者への差別・偏見を生み、そのことがHIV陽性者が生き続けることの難しさを感じているのも現状です。人間の英知を結集した医療技術の進歩により生命の存続はなしえても、人間の愚かさから生命の存続を危うくしています。HIV陽性者に対する差別・偏見は、私たち人間社会が生み出した社会病理であり、決して他人事ではなく全ての人々に関わってくる問題です。HIV陽性者を受け入れ社会の中で分かち合うことが、人間らしい生きやすい社会を創る第一歩ではないでしょうか。