「孔子のような聖人でも、はじめのうちは言葉のよってその人を信じてしまい、判断を誤られたようだ。われわれ凡人は、一般に人を軽々しく信じて失敗することがある。人は経験を積むにつれて、飼い犬に足を噛まれたりして、簡単に人の口車に乗ってはならないことに気づくものである。
また、大事業をなしとげる人には、自分の腕前よりも、人物を見分ける眼を備えることが必要となる。一人の才能はどれほど非凡でも、その力には限りがある。何もかも一人でさばくことはできない。人物をよく見分ける眼さえあれば、部下に優秀な人材を招くことができるから、自分一人の働きよりも、はるかに好成績を挙げることができるものである。人には一長一短があるもの、これを見分けて適所に配置すれば、どんな大事業も完成するに違いない。」(渋沢栄一の「論語講義」より)
言葉だけではなく人との継続的な付き合いの中から人の才能を見いだし活かしていくことが社会全体の発展につながっていくのでしょう。渋沢栄一の「論語講義」はなかなか面白いです。