後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔172〕東博の「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝」展に心躍りました。

2018年03月08日 | 美術鑑賞
 東京国立博物館で開催されている「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 」展が気づいたら3月11日(日)で終了してしまうということで、少し慌てて見に行くことにしました。
 仁和寺は2回ぐらい訪れたでしょうか。私は仏像鑑賞を目的に赴くことが多いのですが、もちろん見たい仏像がすべて公開されているわけではありません。今回の展覧会には仁和寺の仏像がほぼ「全員集合」し、御室派の秘仏までもが「上京」したのです。だからどうしても見ておきたい展覧会でした。私の仏像のこだわりについては後ほど書くことにして、まずは展覧会のコンセプトを引用してみましょう。 

■特別展「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」
■パンフレットより
 御室桜で知られる仁和寺は、宇多天皇が仁和4年(888)に完成させた真言密教の寺院です。歴代天皇の厚い帰依を受け、すぐれた絵画、書跡、彫刻、工芸品が伝わります。創建時の本尊である国宝「阿弥陀如来坐像」や秘仏・国宝「薬師如来坐像」、さらには空海ゆかりの国宝「三十帖冊子」など、本展では仁和寺に伝わる名宝を一堂に紹介します。さらには、仁和寺を総本山とする全国約790箇寺の御室派寺院から、選りすぐりの秘仏や名宝も集結します。天平彫刻の最高傑作として知られる葛井寺(ふじいでら)の国宝「千手観音菩薩坐像」は、千本以上の手を持つ唯一の、そして最古の千手観音像です。江戸時代の出開帳以来、初めて東京で公開されます。また、通常は非公開の仁和寺の観音堂が、33体の安置仏と壁画の高精細画像により再現される特別な空間も登場します。

 さらに詳しく東京国立博物館のHPで展覧会のねらいを確認してみます。

■東博HPより
○秘仏や本尊を含む仏像など66体が一堂に!
 仁和寺創建当時の本尊・国宝「阿弥陀如来坐像および両脇侍立像」、秘仏・国宝「薬師如来坐像」など仁和寺が誇る仏像に加え、全国の御室派(おむろは)寺院の中から、葛井寺の国宝「千手観音菩薩坐像」、道明寺の国宝「十一面観音菩薩立像」、中山寺の重要文化財「馬頭観音菩薩坐像」、神呪寺の重要文化財「如意輪観音坐像」、雲辺寺の重要文化財「千手観音菩薩坐像」などの普段は公開されていない数多くの“秘仏”、さらに明通寺などの仏像ファン待望の名宝まで、合計66体を一堂に公開します。
○仁和寺所蔵の国宝「三十帖冊子」、修理後初の全帖公開!
 2014年度に修理が完了した、弘法大師空海ゆかりの国宝「三十帖冊子」を公開します。特に、1月16日(火)~28日(日)限定で全帖を一挙公開します(1月30日(火)~は2帖ずつ公開)。書のファンを魅了してやまない空海ゆかりの書を、全帖にわたりご覧いただきます。
○仁和寺の観音堂を展示室に再現!
 江戸時代の仁和寺再興期に再建され、僧侶の修行道場のため一般には非公開の観音堂を、展示室に再現します。実際に安置されている仏像33体に加え、壁画も高精細画像で再現し、仁和寺の僧侶により守り伝えられてきた観音堂の姿を体感いただきます。本展が観音堂改修工事を記念して開催されることにより実現した、特別な空間となります。


 会場に到着したのは朝の10時頃(開場は九時半)だったでしょうか。上野駅の券売り場ではすでに券はなく、国立西洋美術館脇売店で購入できました。東博窓口では購入に手間取ると判断したからです。
 運慶展は入場までに1時間半以上並んだでしょうか、今回は30分ということでしたが、すでに20万人以上が来場しているということでした。会場内での賑わいはかなりのものでした。低い位置にある巻物や書き物は覗き込むのに難儀し、あきらめたものも多かったです。
 展覧会の構成は次のようになっていました。

第1章 御室仁和寺の歴史
第2章 修法の世界
第3章 御室の宝蔵
第4章 仁和寺の江戸再興と観音堂
第5章 御室派のみほとけ

 私が今回どうしても見たくて、興奮を抑えきれなかった「展示物」を列挙していきましょう。(引用は東博HPより)

●国宝 千手観音菩薩坐像(せんじゅかんのんぼさつざぞう)
奈良時代・8世紀 大阪・葛井寺(ふじいでら)蔵
 西国33所第5番札所である葛井寺の本尊で、天平彫刻の最高傑作の1つ。優美な表情、均整の取れた体や衣の表現は、究極の天平美といえる。千手観音像は、40本の手で千手をあらわすのが一般的だが、本像は大手・小手あわせて1041本をもち、合掌した手を中心に千の手が広がる本像の表現は見事である。千本以上の手を持つ千手観音像は、本像しか確認されていない。

→本展覧会最大の目玉であることは間違いありません。毎月18日に開帳される千以上の手を持つ実に優美な仏像です。葛井寺で参拝者と拝観したときは、御簾の奥に鎮座していて、全体像が充分捉えきれませんでした。今回は四方八方から心ゆくまで見ることができました。千の手が羽のようで造形的にも素晴らしいものでした。日本の仏像の中で最高傑作の1つであることに疑いはありません。

●秘仏本尊
国宝 薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)
円勢・長円作
平安時代・康和5年(1103)
京都・仁和寺蔵
 11世紀後半から12世紀前半にかけて活躍をした、当時を代表する仏師円勢(えんせい)とその子長円(ちょうえん)の作。仁和寺北院(きたいん)の本尊で、大御室・性信親王(おおおむろ・しょうしんしんのう)の念持仏(ねんじぶつ)であった薬師如来像が火災によりほとんど焼失してしまった後、すぐさま造り直されたのが本像である。白檀(びゃくだん)をきわめて精緻に彫刻し、木地に直接截金(きりかね)技法とよばれる金箔で細やかな文様をほどこした大変美しい作品。

→本像は仁和寺に行っても見ることができません。初めての拝観でした。約6寸の像で、台座の装飾も見事で、まさに精緻な彫りとしかいいようがないものです。小ぶりでありながら存在感がある仏像です。確かにこれこそ国宝ですね。

●国宝 孔雀明王像(くじゃくみょうおうぞう)
中国 北宋時代・10~11世紀
京都・仁和寺蔵
 様々な災厄を払う密教修法・孔雀経法を修する際の本尊画像。仁和寺においては、歴代の門跡が鎮護国家など様々な祈りを込めて孔雀経法を修した。大きな孔雀に乗った明王の三面六臂(さんめんろっぴ、三つの顔に六つの腕)の姿は、経典には見られない特異な図様。現存作例の乏しい、中国・北宋で制作された仏画としても極めて重要な位置を占める。

→どうしても見たかった画像ですが、期間限定展示で未見です。もちろん仁和寺でも見られないので、生きているうちに拝観はできないのでしょうか。

●秘仏本尊
重要文化財 馬頭観音菩薩坐像(ばとうかんのんぼさつざぞう)
鎌倉時代・13世紀
福井・中山寺蔵
 若狭から丹後、現在の福井県南西部から京都府北部にかけての日本海沿海部には、興味深いことに馬頭観音を本尊とする寺院が集中している。中山寺(なかやまでら)もその一つで、本像は鎌倉時代の名品として名高い。秘仏として伝えられ、鮮やかな彩色だけではなく、光背や台座も当初のものが残されている貴重な作例。

→馬頭観音菩薩像の最高傑作と断言します。33年に1度開帳の秘仏と聞きます。以前中山寺を訪ねたとき、無理は承知で住職に拝観を頼んだのですが、やはり無理でした。気の毒に思った住職は、座敷に案内してくれて、掛けてあった絵や書を見せてくれました。どんなものだったかは記憶にありませんが。若狭湾を見下ろせる美しいお寺でした。

●秘仏本尊
重要文化財 如意輪観音菩薩坐像(にょいりんかんのんぼさつざぞう)
平安時代・10世紀
兵庫・神呪寺蔵
 兵庫県西宮市のシンボル、六甲山系の甲山(かぶとやま)の中腹に所在する神呪寺(かんのうじ)の秘仏本尊で、古くより信仰を集めてきた。一木造(いちぼくづくり)で、細身の表現が特徴。制作は平安時代半ばにさかのぼる。如意輪観音像の古い例として重要な像である。毎年5月18日にのみ開扉(かいひ)される秘仏である。

→河内観心寺、大和室生寺とともに日本3如意輪の1つ。アンニュイな雰囲気を漂わせる独特の表情にやっと会えました。

 今回ようやく会えた国宝重文に子島曼荼羅(奈良・子島寺)、千手観音菩薩座像(香川・屋島寺)、千手観音菩薩座像(徳島・雲辺寺)があります。こうしてみると今回の展覧会は私にとって実に貴重で有意義なものでした。入場料1600円は高くない!
 あそうそう、今展覧会の1番人気はひょっとして大阪・道明寺の十一面観音菩薩立像かもしれません。皆さん「美しい。」と声をあげてましたので。何度見てもため息が出る素晴らしさです。大阪・金剛寺の仏像群も懐かしいです。