後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔771〕清瀬市の図書館危機の今、木村まきさんの遺してくれた『疎開した四〇万冊の図書』(金髙謙二、幻戯書房)を手にしています。

2025年02月13日 | 図書案内

  清瀬市の図書館危機をブログで再三綴ってきましたが、今こそ木村まきさんからいただいた『疎開した四〇万冊の図書』(金髙謙二、幻戯書房)を手にして読んでいます。
  木村まきさんは私どもと同世代、清瀬の住民で清瀬・憲法九条を守る会などで行動を共にしてきた仲間です。惜しくも2023年の夏、自宅で亡くなられました。多くのマスコミでそのことが取り上げられました。

■「横浜事件」元被告木村亨さんの妻、木村まきさん死去 元再審請求人
編集委員・北野隆一2023年8月25日 19時08分 朝日新聞

 戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」元被告の木村亨さんの妻で、再審請求人として亨さんの無罪を訴えた木村まきさんが14日、東京都清瀬市の自宅で発見され、警視庁が死亡を確認した。74歳だった。
 岩手県生まれ。出版社などに勤務した。中央公論社の編集者だった亨さんと1992年に結婚。亨さんが98年に死去後、横浜事件第3次再審請求人になった。
 2003年に横浜地裁で再審開始決定が出たが、地裁は実体審理に入ることなく06年に免訴の判決を言い渡し、08年に最高裁で確定した。
 遺族として請求した刑事補償は10年に認められた一方、国家賠償請求訴訟は19年に最高裁で敗訴が確定した。
 亨さんが書き残した文章をまとめ、「横浜事件 木村亨全発言」として出版した。
 横浜事件を振り返り、亨さんとまきさんの遺品や資料を展示する企画展を、知人らが東京都内で12月に開く予定。 
     …………

  まきさんが亡くなられる少し前、大きな包みにいっぱいのパンと数冊の本を我が家に届けてくれました。お別れの意思表示だったのかも知れません。その中の一冊が『疎開した四〇万冊の図書』でした。特段興味がわかなかったのでそのまま保持していましたが、清瀬図書館危機の今、この本に目が吸い寄せられました。

  作者の金髙謙二は映画監督で2013年に同名のドキュメンタリー映画を公開しています。
  太平戦争時、東京の100回を超える空襲で多くの文化財が消失しました。そうした情況の中で、旧都立日比谷図書館の蔵書40万冊を現在のあきる野市や志木市に運んだ人びとがいました。図書館員、学生、藏を提供した人たちでした。1944年5月25日、日比谷図書館は焼夷弾で全焼します。蔵書は間一髪守られました。蔵書の中には江戸時代の本や浮世絵なども混ざっていたようです。貴重な文化財でした。
  もちろん日本全国での空襲で、東京はじめ多くの図書館が壊滅状態になりました。

  まきさんのこの本に託したメッセージとは何だったのでしょうか。


◆裁判所は最後の正義
  石川一雄さんは無罪だ
                                       鎌田 慧(ルポライター)

 先週の5日、評論家の佐高信さん、落語家の古今亭菊千代さんらと東
京高裁の門をくぐった。1963年に女子高校生が、殺害された狭山事件
で、石川一雄さんの家から発見され、重要証拠となった「被害者の万年
筆」のインクを科学的に分析した結果、被害者のものではなかった。そ
の鑑定人の意見を聞いてほしい(証入尋間)との家令和典裁判長への要
請だった。

 当時、容疑者・石川宅の家宅捜索で1回目12人、2回目14人が
バラック造りの小さな家を徹底捜査した時はなかった万年筆が、3回目
で勝手口の鴨居の上に発見された。
 自分の名前さえ「一夫」ですませていた非識字者が、犯罪の証明にな
る被害者の万年筆を自宅に持ち込むわけはない。
 この事件で唯一犯人と結びつくのは、カネを要求する脅迫状だけだ
が、非識字者が文字の力でひとを脅そうと考えるとは、非識字者の苦悩
と悲しみを、想像したことのない人間の傲慢さでもある。

 脅迫状を書いた真犯人は教育の低い人間に仮託して誤字だらけの漢字
を使った。検事も裁判官もその程度が石川さんの識字能力と判断したの
だが、実際は残念ながら、当時の石川さんには書けない明快な手紙だった。
 石川さんは86歳。最近、急に体力が低下してきた。鑑定人尋問、再審
開始決定、無罪判決、それまでの時間が心配だ。高裁への期待は強い。
        (2月11日「東京新聞」朝刊17面「本音のコラム」より)