越後路2日目、まずは開館直後で入館者無人の十日町市博物館に立ち寄り、国宝の火炎土器などを心安らかに堪能することができました。民宿のご主人の推薦の博物館でした。
そしていよいよ本成寺(三条市)へ向かいます。
雲蝶が江戸から最初に向かったのは本成寺でした。ここに長期滞在し、本成寺とその塔頭に多くの作品を残しています。残念ながら本成寺の作品はほとんどが灰燼に帰してしまいました。しかしながらその塔頭には多くの作品が現存していると聞きます。
紅葉真っ盛りの越後路をマイカーで順調に走ります。
黄葉が敷き詰められた本成寺境内にしばし佇みましたが、一転、拝観中止の掲示に我々は落胆するのでした。しかしここは元々焼け残った赤牛だけの拝観とか、それで500円とはなんでなのでしょう。たぶん他に見どころがいっぱいあるに違いありません。
ならば気を取り戻して、雲蝶の墓を探すしかありません。しかしこれが難儀でした。ドイツのニュルンベルクでファイト・シュトースの墓探しの困難さを思い出しました。
親切な寺の受付でヒントをもらい、ようやく探し出しました。
はてさて、ここからが我らの旅の醍醐味、『越後の名匠 石川雲蝶』(木原尚)を頼りに6つの塔頭を巡ります。外観は自由に拝観可能という所が多く、感謝しながら撮影させてもらいました。「要連絡」のところは、意を決して、ラジオ深夜便で好評だった緑に門前で電話してもらいました。「東京から雲蝶作品を拝観しに来たのですが、拝観は可能でしょうか。」というのが電話のポイントです。
ファーストアタックの蓮如院で「軌跡」が起こりました。快く迎え入れてくれた座敷には猿の置物と雲蝶の位牌が鎮座していました。撮影もオーケーということで感激しながらカメラを構えました。わずかですがお布施をして寺を後にしました。
要住院は作品が出展中、青蓮華院は所在がわからず、蓮如院、静明院、久成院、本照院は訪れる人もなくゆったりとカメラを構えました。どこでも、雲蝶の技の冴えに圧倒されるばかりです。
本成寺近辺では観光客らしき人に出会ったのは1人の男性と2人組の女性だけでした。穏やかな日和に充実感いっぱいの我ら2人でした。
余勢を駆って同じ三条市の五十嵐神社に向かいます。近くの駐車場に車を止めて、急な坂を上って五十嵐神社に辿り着いたところ、明かりは付いているものの誰もいません。開け放した堂内に入るも雲蝶作品は見当たりません。しかし、よく見ると、壁のかなり上の方に3枚の欄間彫刻が見つかりました。獅子と鳳凰でしょうか、あとは暗さも手伝ってしかとは確認できません。
しかし、満足してホテルルートイン見附に向かうのでした。
2000年になってからの国内古寺古仏巡り、さらにはドイツを中心とした後期ゴシック彫刻巡り、そして今回の雲蝶巡り、それぞれに共通する出合いの新鮮さ、私たちを興奮させる何物かがあるなあと実感するのでした。