20番 法界寺
正式名 東光山 法界寺
宗派 古義真言宗
別称 乳薬師・日野薬師
本尊 薬師如来
開基 日野資業 最澄
再び東西線に戻り、石田駅下車20分くらい歩くと、この辺りは伏見区である。昔、日野の里と言われるところに法界寺がある。
京都のお寺には、民間伝承とも言える貴重な行事が残っていてそれを見て回るのも面白い。前回の隋心院の「はねず踊り」もそうだが、即成院の「阿弥陀25菩薩お練り供養法要」も以前紹介した。中には祇園祭の「山鉾巡行」のように大がかりのものもあるが、こちら法界寺は誠に素朴で単純でそれでいて歴史を感じる。「裸踊り」と言われるが、正月明けの14日に修正会に合わせて行われる。極寒の中、下帯だけの男性が子供と大人に分かれて、境内の井戸水を浴びて潔斎の後、国宝の阿弥陀堂の高縁正面で体をぶつけ合う。その際「頂礼・頂礼」と叫ぶのだが、頂礼とは五体投地とも言われ仏に対する最高の儀礼らしい。じっとしていられないほどの寒さの中でも、間もなく彼らの体からはもうもうと湯気が立ち上る。その際に絞められた下帯(ふんどし)を腹帯にすると安産になると言われる。
本尊の薬師如来は、創業時その胎内に最澄が直接彫った小さな薬師如来が納められている為、妊産婦や子育ての方達の信仰を集める。乳薬師と言われる理由である。また、阿弥陀堂と丈六の阿弥陀如来坐像は定朝様の典型例であり共に国宝である。内部壁画の飛天図などは不鮮明なので残念ながら重要文化財だが、本来は国宝級のもので貴重である。
お願いすれば住職が丁寧に説明してくれる。また、近くには親鸞誕生の地を記念して「日野誕生院」と言う本願寺飛び地寺院や、恵那塚と産湯を使った井戸などもある。是非足を伸ばしておきたい。浄土真宗の発祥の地である。