猛スピードで母は 長嶋 有 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る |
天気 朝から降ったりやんだりこんな天気だいすき
長嶋有 著 : 猛スピードで母は
を、読みました。
北海道のどこかの、小さな町の市営団地に住む、
慎(まこと)と、母の物語。
慎は小学校5年生。父はいません。
慎は、自分ひとりで易々とスパイクタイヤに交換する母に、
憧れと、尊敬の念を持っています。
きれいで、孤高でかっこいい母との、二人の生活に満足していました。
そんなとき、自分と母の間に割り込んできた、母の恋人、
祖母の事故死、学校でのいじめ。
少年は、1000年も昔から生きているのではないか?と思うほど、
達観していて、動じません。
ただ静かに、慎の目線から描かれる物語ですが、
静かなのに、疾走感を感じてしまうのは、
きっと、二人の無力の母子が、挑むように前を見据えて
毅然と生きているからでしょう。
芥川賞を受賞したのが、納得の凄い作品です。
しかし、私は最初に収録されていた【サイドカーに犬】
という短編のほうが好きでした。
薫は、所用で上京した東京で、暇つぶしに入ったコンビニで、
麦チョコを買い、忘れていた過去を思い出します。
小学校4年生の10歳の夏に、薫が経験したことは、
まぎれもなく、凄い事件でしした。
この本に収められている二つの物語は、
どちらも子供の目線で描かれているため、
何かを描写したり、物事をとらえたりするときの
表現が、どこかとんちんかんで、しかし、言いえて妙なことばかり。
芥川賞候補作になった、本当にすごい作品でした。
角田光代が絶賛した長嶋有は、角田ファンの私も
絶賛させていただきますよ