平成猿蟹合戦図 | |
吉田修一 | |
朝日新聞出版 |
吉田修一 著 : 平成猿蟹合戦図
を、読みました。
歌舞伎町のバーテン純平が、ビルの隙間に乳飲み子を抱いてうずくまる
美月を見つける場面から始まる物語。
バーテンの純平、ホステスの美月、ホストの朋生、クラブのママ美姫、と、
歌舞伎町のメンバーから始まって、なぜかチェロ奏者の湊、そのマネージャー夕子
そして、ひき逃げ事件で服役中の犯人の娘友香、そして友香の曾祖母のサワ。
登場人物たちはみんなありふれた世界で生きている人々。
そんな彼らが、結束して未来をかえようと立ち上がる!
吉田修一のコメディー作品と言えば、“横道世之介”ですが、
あの作品は、ラストシーンがなんとも悲しくて、
それまでの楽しさが吹っ飛ぶ作品だったのですが、
この作品は、最初から最後まで笑ってられる作品でした。
長崎の五島から出てきた、ホステスの美月と、ホストの朋生の
長閑さが、とてもリアルに描かれています。
実際の彼らを知っているんじゃないのか?と、
思えるほどにです。
作中彼らが、心の中で呟いている西九州の言葉は
本当にスルッと心の中に滑り込んでくるので、不思議です。
名もなき人々の巻き起こすムーブメントと、
爽やかな大団円。楽しい気分になりたいときにはお勧めの本です。