宮本輝 著 : 満月の道
を、読んだ。
引き続きモータープールを切り盛りし、つつがなく暮らす
熊吾達、松坂家族だったが
モータープールの管理人の片手間に始めた
中古車販売店“ハゴロモ”が、予想以上に拡大し
大所帯になって行く。
あくせくと大阪の街を、動き回る熊吾だったが
一度縁を切ったはずだった、西條明美が現れ
物語に軋むような不協和音が、混ざり始める。
輝ちんの代表作、流転の海シリーズ大河小説
始めて第1部を読んだのは、もう25年以上前で
その本を買った本屋さんは、現在跡形もなく
今では、本は家で注文する時代になってしまった。
それほどの時間と共に、物語の中では17年程の時間が流れている。
この小説の主人公である、松坂熊吾は
輝ちんの父親がモデルで、実際の出来事を軸に展開して行く。
輝ちんは昔から、50歳で初めて人の親となり
波乱万丈の人生を豪快に生きつつ
結局は、没落の一途を辿った自父の事を
事あるごとに語ってきた、だからわかっている。
よほど宮本輝を知らずに、最近このシリーズから
読み始めた人ではない限り、往年の輝ちんファンであれば
熊吾の最後の悲壮さは、嫌という程知っているのである。
そして、この満月の道の終盤は
その転落を予感させるシーンが満載で
次回作が楽しみでもあり、憂鬱でもある。
そんな複雑な心理をもってしても
やっぱり読みたい。豪放磊落な熊吾の生涯を見届けたい。
そう、思える凄い物語。
ゆっくり読んできて、良かったと思える名作。