日本人は地方を見捨てるのか。2024年、少子高齢化で認知症が這い回る地獄絵図となる=鈴木傾城の転載
●少子高齢化による「日本をあきらめた地方の悲惨な現状」を知らねばならぬ。
●2018年9月16日、「日本の総人口に占める70歳以上の割合が2割を超えた。」65歳以上で見ると日本の総人口比の28.1%である。
●高齢者が極端に増え、子供が極端に減っている。人口も消えていく。
●少子高齢化は日本を崩壊させる致命的な病苦。日本人は、これから生々しい「日本の崩壊」を現実に見ることになる。少子高齢化という病魔は、「地方」という最も弱いところを破壊して壊死させてから、都市部に侵食していく。
●しかし日本人の人口の半分が三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)に暮らしており、「日本人が減っている」ということに気づいていない。
●2050年までに、国土の約6割は無人化する。
●地方は人口が少ないので、地方に進出するビジネスは少ないし、逆に地方のビジネスはチャンスを求めて都会に向かう。仕事が消えれば、若者も消える。地方に残されるのは常に高齢層。高齢層は消費が弱い。次々と廃業を余儀なくされていく。地方ではモノを買いたくても買えない、買い物すらできない陸の孤島になる。交通機関も赤字経営となって維持できない。電車もバスもなくなり、いよいよ不便になる。銀行も、病院も、郵便局も、赤字経営になれば撤退していく。地方は「壊死」する。人口が減り、高齢化し、やがて消えていく。地方は再生よりも荒廃に向かう。
●2024年には日本で最も人口の多い団塊の世代がすべて「75歳以上」となる。2026年には高齢者の5人に1人が認知症患者となる。あと10年もしないうちに、見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図が発生すると危惧される。地方の人々は日本をあきらめた。少子高齢化が日本を破壊する時限爆弾になっている。
●少子高齢化によって税収が減り、高齢者にかける社会保障費が膨れ上がっている。
●日本を愛し、日本の未来を憂うのであれば、日本最大の国難は少子高齢化であると強く認識しなければならない。もう手遅れの一歩手前まで来ている。
●しかし「少子高齢化が日本を自滅させる」という共通認識・危機感が共有できていない。今、ここで少子高齢化の危機感が共有できなければ、日本は破滅的な結末を迎えてしまう。
●まず最初に日本を救うために「大変なことが起きている」と叫ぶ必要がある。もう時間がない。
日本人は地方を見捨てるのか。2024年、少子高齢化で認知症が這い回る地獄絵図となる=鈴木傾城
少子高齢化の問題を真剣に考えている人は少ない。日本人の半数が大都市圏に住んでいるため、その深刻さを理解できないのだ。日本をあきらめた地方の悲惨な現状を知っても、まだ見て見ぬふりを続けられるだろうか。
2018年9月16日、総務省は「日本の総人口に占める70歳以上の割合が2,618万人となり、初めて日本の人口の2割を超えた」と報告している。団塊の世代が70代に達しているのだ。65歳以上で見ると3,557万人で、日本の総人口比の28.1%である。
一方で出生数の方は、200万人超えだった1974年以後から明確に減少の方向にあり、2016年にはとうとう100万人を割って97万6,978人になってしまっている。
高齢者が極端に増え、子供が極端に減っている。まさに、超少子高齢化が進んでいる。また、人口の自然増減率を見ると2007年から一貫してマイナスを記録するようになった。
これらのデータから、日本は3つの危険な事態が進行しているということが分かる。
1. 高齢者が増え続けている
2. 子供が減り続けている
3. 人口も減り続けている
高齢者が増えて、子供が減って、人口も消えていく。日本が静かな危機に直面している。
高齢者が増え続ける国にイノベーションは生まれない。子供が減り続ける国に活力は生まれない。人口が減り続ける国に成長は見込めない。
少子高齢化は日本を崩壊させる致命的な病苦なのだ。そろそろ日本人は、これから生々しい「日本の崩壊」を現実に見ることになる。
日本人のほとんどは少子高齢化という病魔に無関心
社会・文化・経済における「日本の崩壊」があるとしたら、その原因となる確率が最も高いのは、間違いなく少子高齢化の進行だ。
しかし、日本人のほとんどは少子高齢化という日本を蝕む病魔に無関心だ。まるで他人事なのだ。なぜなのだろうか。それは、半分以上の日本人が「少子高齢化をまったく実感できていない」ことにある。
なぜ実感できないのか。それは、日本人の人口の半分が三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)に暮らしており、この三大都市圏に暮らす人たちは「日本人が減っている」ということに肌で気づかないからでもある。
総務省統計局「国勢調査」及び国土交通省「国土の長期展望」がまとめた資料を元に、総務省市町村課が作成した『都市部への人口集中、大都市等の増加について』の資料を読むと、この三大都市圏に住む人たちの割合はさらに増えていき、都市部の人口集中がこれからも続くことが示されている。
一方で、三大都市圏以外の地域は着実に人口減となる。2050年までに、現在、人が居住している地域の約2割が無居住化し、国土の約6割は無人化すると分析されている。
人口の半分以上は三大都市圏に暮らすので、少子高齢化はまったく実感できていないのである。だから、地方がどんどん死んでいくのに無関心のまま放置されている。
日本崩壊の過程が人口動態から透けて見える
この現象を見ると、日本の崩壊はどのように始まるのかは明確に見えてくるはずだ。
「都会に住む日本人が無関心のまま最初に地方が死んでいき、やがて都市部もまた少子高齢化に飲まれて崩壊する」
これが、人口動態から見た日本の崩壊の姿である。少子高齢化という病魔は、「地方」という最も弱いところを破壊して壊死させてから、都市部に侵食していくのだ。
増え続ける「買い物弱者」
最近、地方で買い物ができずに孤立する「買い物弱者」の問題が表面化しつつある。
地方は人口が少ないので、そこでビジネスをしても割が合わない。だから地方に進出するビジネスは少ないし、逆に地方のビジネスはチャンスを求めて都会に向かう。
仕事が消えれば、若者も消える。地方に残されるのは常に高齢層である。高齢層は消費が弱い。だから地方の個人商店は売上が上がらず、店主の高齢化も相まって次々と廃業を余儀なくされていく。
地方で暮らすというのは、不便と隣合わせである。都会ではどこにでもあるファストフード店やコンビニも採算が合わないので進出しない。
そこに今まであった個人商店さえも消えていくのだから、地方ではモノを買いたくても買えない人たちが大量に出現しているのである。
地方は、もはや買い物すらできない陸の孤島に
2015年の経済産業省調査では、こうした60歳以上の買い物弱者数は700万人いると試算している。
若年層であれば、こうした環境であっても「インターネットで買い物すればいい」と考える。しかし、高齢者はそんなわけにいかない。
高齢層は年齢層が高くなればなるほどテクノロジーから疎くなり、インターネットの基本さえ分からない。
それだけではない。人口が減り、出歩く高齢者も減っていくと、交通機関も赤字経営となって維持できない。電車は走らなくなり、バスの路線もなくなり、交通はいよいよ不便になる。
銀行も、病院も、郵便局も、赤字経営になれば撤退していくしかない。当然のことながらATMもない。
そうなれば、地方は陸の孤島も同然の状態となり、いくら郷土愛が強くても、そこで暮らしていけなくなってしまう。こうした状況が延々と続いており、少子高齢化によって状況は悪化するばかりだ。
自然災害からのインフラ復旧すら危うい
ファストフード店もない、コンビニもない、個人商店もない、交通機関もない、銀行もない、病院もない、郵便局もない。少子高齢化はそうやって地方を「壊死」させてしまう。
人口が減り、高齢化し、やがて消えていくのだから、地方が再生できると思う方がどうかしている。
昨今は地震やゲリラ豪雨や台風と言った自然災害も大型化しているが、地方がこうした自然災害に被災していくと、やがてはインフラの復旧ができなくなる可能性も高い。
インフラが消えれば生活環境は極度に悪化する。地方は再生よりも荒廃に向かう。
見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図
2018年、「70歳以上の割合が2,618万人となった」と総務省は発表したというのは冒頭でも書いたが、気がかりなのは2024年には日本で最も人口の多い団塊の世代がすべて「75歳以上」となってしまうことだ。
認知症は75歳を過ぎると急激に増えていく。2024年から認知症は大きな社会問題として見えるようになっていく。2026年には高齢者の5人に1人が認知症患者となる。これは患者数にすると約730万人である。
日本の地方は病院も介護施設もなくなっている。だとすれば、あと10年もしないうちに、見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図が発生したとしてもおかしくない。実際、そうなると危惧する人もいる。
地方の人々は日本をあきらめた
少子高齢化に叩きのめされ、地方は疲弊し、荒廃し、そして見捨てられた。そして、地方の人々はもうこの状況が改善できないことを悟り、再生をあきらめ、日本をあきらめた。
しかし、都会に住む日本人はまったくそのことに気づいていないか、気づいても無関心のままである。これで日本はこれからも大国でいられると楽観的に思える人はどうかしている。
日本を愛し、日本の未来を憂うのであれば、日本最大の国難は少子高齢化であると強く認識しなければならない。もう手遅れの一歩手前まで来ている。
危機感が共有できていないうちは何も始まらない
少子高齢化が日本を破壊する時限爆弾になっているという意識は、まだ日本人全体に共有されていない。そして、危機感もまた希薄だ。
すでに少子高齢化が地方をじわじわと殺している現状にあっても、国民の半数は三大都市圏に住んでいるので、まるで他人事のように「見て見ぬふり」をしている。
しかし、少子高齢化によって税収が減っている上に、高齢者にかける社会保障費が膨れ上がっている。
少子高齢化の放置によるツケは、年金受給年齢の引き上げ、年金の削減、医療費負担の増大、税金の引き上げ……という見える形で、日本人全員にのしかかってくるようになっている。
人口動態から見ると、少子高齢化問題は解決するどころかより深刻化してしまうわけで、もう日本人はこの問題を無視できないところにまできていることを認識すべきなのだ。
自滅へのトロッコに乗った私たちにできること
最初にやらなければならないのは、とにかく「少子高齢化が日本を自滅させる」という共通認識を持ち、これを広く周知して国民の意識と議論を高めていくことだ。
危機感が共有できていないから問題は先送りされてきた。ここで少子高齢化の危機感が共有できなければ、日本は破滅的な結末を迎えてしまう。
この危機感が共有できたら、出生率を上げるためにどうするのか、地方をどう救うのか、少子高齢化を解決するために税金はどのように配ればいいのか、政治家は何をすべきなのか、社会はどのように変わるべきなのか、すべての議論が進んでいくことになる。
危機感が共有できていないうちは何も始まらない。だから、「少子高齢化による日本の崩壊」という未来が見えた人は、まず最初に日本を救うために「大変なことが起きている」と叫ぶ必要がある。もう時間がない。
●少子高齢化による「日本をあきらめた地方の悲惨な現状」を知らねばならぬ。
●2018年9月16日、「日本の総人口に占める70歳以上の割合が2割を超えた。」65歳以上で見ると日本の総人口比の28.1%である。
●高齢者が極端に増え、子供が極端に減っている。人口も消えていく。
●少子高齢化は日本を崩壊させる致命的な病苦。日本人は、これから生々しい「日本の崩壊」を現実に見ることになる。少子高齢化という病魔は、「地方」という最も弱いところを破壊して壊死させてから、都市部に侵食していく。
●しかし日本人の人口の半分が三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)に暮らしており、「日本人が減っている」ということに気づいていない。
●2050年までに、国土の約6割は無人化する。
●地方は人口が少ないので、地方に進出するビジネスは少ないし、逆に地方のビジネスはチャンスを求めて都会に向かう。仕事が消えれば、若者も消える。地方に残されるのは常に高齢層。高齢層は消費が弱い。次々と廃業を余儀なくされていく。地方ではモノを買いたくても買えない、買い物すらできない陸の孤島になる。交通機関も赤字経営となって維持できない。電車もバスもなくなり、いよいよ不便になる。銀行も、病院も、郵便局も、赤字経営になれば撤退していく。地方は「壊死」する。人口が減り、高齢化し、やがて消えていく。地方は再生よりも荒廃に向かう。
●2024年には日本で最も人口の多い団塊の世代がすべて「75歳以上」となる。2026年には高齢者の5人に1人が認知症患者となる。あと10年もしないうちに、見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図が発生すると危惧される。地方の人々は日本をあきらめた。少子高齢化が日本を破壊する時限爆弾になっている。
●少子高齢化によって税収が減り、高齢者にかける社会保障費が膨れ上がっている。
●日本を愛し、日本の未来を憂うのであれば、日本最大の国難は少子高齢化であると強く認識しなければならない。もう手遅れの一歩手前まで来ている。
●しかし「少子高齢化が日本を自滅させる」という共通認識・危機感が共有できていない。今、ここで少子高齢化の危機感が共有できなければ、日本は破滅的な結末を迎えてしまう。
●まず最初に日本を救うために「大変なことが起きている」と叫ぶ必要がある。もう時間がない。
日本人は地方を見捨てるのか。2024年、少子高齢化で認知症が這い回る地獄絵図となる=鈴木傾城
少子高齢化の問題を真剣に考えている人は少ない。日本人の半数が大都市圏に住んでいるため、その深刻さを理解できないのだ。日本をあきらめた地方の悲惨な現状を知っても、まだ見て見ぬふりを続けられるだろうか。
2018年9月16日、総務省は「日本の総人口に占める70歳以上の割合が2,618万人となり、初めて日本の人口の2割を超えた」と報告している。団塊の世代が70代に達しているのだ。65歳以上で見ると3,557万人で、日本の総人口比の28.1%である。
一方で出生数の方は、200万人超えだった1974年以後から明確に減少の方向にあり、2016年にはとうとう100万人を割って97万6,978人になってしまっている。
高齢者が極端に増え、子供が極端に減っている。まさに、超少子高齢化が進んでいる。また、人口の自然増減率を見ると2007年から一貫してマイナスを記録するようになった。
これらのデータから、日本は3つの危険な事態が進行しているということが分かる。
1. 高齢者が増え続けている
2. 子供が減り続けている
3. 人口も減り続けている
高齢者が増えて、子供が減って、人口も消えていく。日本が静かな危機に直面している。
高齢者が増え続ける国にイノベーションは生まれない。子供が減り続ける国に活力は生まれない。人口が減り続ける国に成長は見込めない。
少子高齢化は日本を崩壊させる致命的な病苦なのだ。そろそろ日本人は、これから生々しい「日本の崩壊」を現実に見ることになる。
日本人のほとんどは少子高齢化という病魔に無関心
社会・文化・経済における「日本の崩壊」があるとしたら、その原因となる確率が最も高いのは、間違いなく少子高齢化の進行だ。
しかし、日本人のほとんどは少子高齢化という日本を蝕む病魔に無関心だ。まるで他人事なのだ。なぜなのだろうか。それは、半分以上の日本人が「少子高齢化をまったく実感できていない」ことにある。
なぜ実感できないのか。それは、日本人の人口の半分が三大都市圏(東京圏・名古屋圏・大阪圏)に暮らしており、この三大都市圏に暮らす人たちは「日本人が減っている」ということに肌で気づかないからでもある。
総務省統計局「国勢調査」及び国土交通省「国土の長期展望」がまとめた資料を元に、総務省市町村課が作成した『都市部への人口集中、大都市等の増加について』の資料を読むと、この三大都市圏に住む人たちの割合はさらに増えていき、都市部の人口集中がこれからも続くことが示されている。
一方で、三大都市圏以外の地域は着実に人口減となる。2050年までに、現在、人が居住している地域の約2割が無居住化し、国土の約6割は無人化すると分析されている。
人口の半分以上は三大都市圏に暮らすので、少子高齢化はまったく実感できていないのである。だから、地方がどんどん死んでいくのに無関心のまま放置されている。
日本崩壊の過程が人口動態から透けて見える
この現象を見ると、日本の崩壊はどのように始まるのかは明確に見えてくるはずだ。
「都会に住む日本人が無関心のまま最初に地方が死んでいき、やがて都市部もまた少子高齢化に飲まれて崩壊する」
これが、人口動態から見た日本の崩壊の姿である。少子高齢化という病魔は、「地方」という最も弱いところを破壊して壊死させてから、都市部に侵食していくのだ。
増え続ける「買い物弱者」
最近、地方で買い物ができずに孤立する「買い物弱者」の問題が表面化しつつある。
地方は人口が少ないので、そこでビジネスをしても割が合わない。だから地方に進出するビジネスは少ないし、逆に地方のビジネスはチャンスを求めて都会に向かう。
仕事が消えれば、若者も消える。地方に残されるのは常に高齢層である。高齢層は消費が弱い。だから地方の個人商店は売上が上がらず、店主の高齢化も相まって次々と廃業を余儀なくされていく。
地方で暮らすというのは、不便と隣合わせである。都会ではどこにでもあるファストフード店やコンビニも採算が合わないので進出しない。
そこに今まであった個人商店さえも消えていくのだから、地方ではモノを買いたくても買えない人たちが大量に出現しているのである。
地方は、もはや買い物すらできない陸の孤島に
2015年の経済産業省調査では、こうした60歳以上の買い物弱者数は700万人いると試算している。
若年層であれば、こうした環境であっても「インターネットで買い物すればいい」と考える。しかし、高齢者はそんなわけにいかない。
高齢層は年齢層が高くなればなるほどテクノロジーから疎くなり、インターネットの基本さえ分からない。
それだけではない。人口が減り、出歩く高齢者も減っていくと、交通機関も赤字経営となって維持できない。電車は走らなくなり、バスの路線もなくなり、交通はいよいよ不便になる。
銀行も、病院も、郵便局も、赤字経営になれば撤退していくしかない。当然のことながらATMもない。
そうなれば、地方は陸の孤島も同然の状態となり、いくら郷土愛が強くても、そこで暮らしていけなくなってしまう。こうした状況が延々と続いており、少子高齢化によって状況は悪化するばかりだ。
自然災害からのインフラ復旧すら危うい
ファストフード店もない、コンビニもない、個人商店もない、交通機関もない、銀行もない、病院もない、郵便局もない。少子高齢化はそうやって地方を「壊死」させてしまう。
人口が減り、高齢化し、やがて消えていくのだから、地方が再生できると思う方がどうかしている。
昨今は地震やゲリラ豪雨や台風と言った自然災害も大型化しているが、地方がこうした自然災害に被災していくと、やがてはインフラの復旧ができなくなる可能性も高い。
インフラが消えれば生活環境は極度に悪化する。地方は再生よりも荒廃に向かう。
見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図
2018年、「70歳以上の割合が2,618万人となった」と総務省は発表したというのは冒頭でも書いたが、気がかりなのは2024年には日本で最も人口の多い団塊の世代がすべて「75歳以上」となってしまうことだ。
認知症は75歳を過ぎると急激に増えていく。2024年から認知症は大きな社会問題として見えるようになっていく。2026年には高齢者の5人に1人が認知症患者となる。これは患者数にすると約730万人である。
日本の地方は病院も介護施設もなくなっている。だとすれば、あと10年もしないうちに、見捨てられた高齢者が認知症で這い回る地獄絵図が発生したとしてもおかしくない。実際、そうなると危惧する人もいる。
地方の人々は日本をあきらめた
少子高齢化に叩きのめされ、地方は疲弊し、荒廃し、そして見捨てられた。そして、地方の人々はもうこの状況が改善できないことを悟り、再生をあきらめ、日本をあきらめた。
しかし、都会に住む日本人はまったくそのことに気づいていないか、気づいても無関心のままである。これで日本はこれからも大国でいられると楽観的に思える人はどうかしている。
日本を愛し、日本の未来を憂うのであれば、日本最大の国難は少子高齢化であると強く認識しなければならない。もう手遅れの一歩手前まで来ている。
危機感が共有できていないうちは何も始まらない
少子高齢化が日本を破壊する時限爆弾になっているという意識は、まだ日本人全体に共有されていない。そして、危機感もまた希薄だ。
すでに少子高齢化が地方をじわじわと殺している現状にあっても、国民の半数は三大都市圏に住んでいるので、まるで他人事のように「見て見ぬふり」をしている。
しかし、少子高齢化によって税収が減っている上に、高齢者にかける社会保障費が膨れ上がっている。
少子高齢化の放置によるツケは、年金受給年齢の引き上げ、年金の削減、医療費負担の増大、税金の引き上げ……という見える形で、日本人全員にのしかかってくるようになっている。
人口動態から見ると、少子高齢化問題は解決するどころかより深刻化してしまうわけで、もう日本人はこの問題を無視できないところにまできていることを認識すべきなのだ。
自滅へのトロッコに乗った私たちにできること
最初にやらなければならないのは、とにかく「少子高齢化が日本を自滅させる」という共通認識を持ち、これを広く周知して国民の意識と議論を高めていくことだ。
危機感が共有できていないから問題は先送りされてきた。ここで少子高齢化の危機感が共有できなければ、日本は破滅的な結末を迎えてしまう。
この危機感が共有できたら、出生率を上げるためにどうするのか、地方をどう救うのか、少子高齢化を解決するために税金はどのように配ればいいのか、政治家は何をすべきなのか、社会はどのように変わるべきなのか、すべての議論が進んでいくことになる。
危機感が共有できていないうちは何も始まらない。だから、「少子高齢化による日本の崩壊」という未来が見えた人は、まず最初に日本を救うために「大変なことが起きている」と叫ぶ必要がある。もう時間がない。