Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

リニア・鉄道館

2014-12-28 03:40:55 | 東海地方

 



名古屋のりものづくしの旅をした際、あおなみ線の終点・金城ふ頭駅にあるリニア・鉄道館を訪れました。

ここは東海道新幹線を中心とした鉄道車両の展示を行っている、JR東海の企業博物館です。

かつて万世橋にあった交通博物館が2006年に閉館して以来、JR東日本がさいたま市に、JR東海がここ名古屋に新たに自社の企業博物館を開館しました。
2016年春にはJR西日本が梅小路に京都鉄道博物館を完成させる予定です。

国鉄分離に伴い、JRもそれぞれ異なる理念で運営していることもあって、
このようにそれぞれ独自の博物館をつくることは分離以降の発展と歴史をアピールすることも兼ねています。









入館料を支払って入場すると、薄暗い館内に3つの車両が並んでいます。
手前から、C62蒸気機関車、955形新幹線試験電車、超電導リニアMLX01-0。
どちらも当時、世界最高速度を記録した名車両で、JR東海を象徴する車両です。

SLと聞いてすぐに高速鉄道とは思い浮かばないものの、リニアと言えば誰もが知っている近未来の高速鉄道。
JR東海は、これまで高速鉄道の開発に積極的に取り組んできました。
東海道新幹線に始まり、今世紀中には実用化されるであろうリニア中央新幹線など日本および世界をリードする高速鉄道を開発しています。
これがJR東海の売りであり、誇りでもあるのでしょう。

東西都市の通過点という皮肉的な役割を逆手に取り、独自の社風を築いてきた自信が垣間見えます。

高速化は新幹線にとどまらず、在来線にも言えることです。
例えば、東海道本線の新快速列車は転換クロスシートを導入して、快適かつ充実した運転本数を誇っており、
豊橋-岐阜間で並走する名古屋鉄道には速度面でも運賃面でも大きく差をつけています。

設備投資も惜しまず、駅改良工事や車両の統一化を進めている点もJR東海らしさでしょう。
利便性を追求した反面、鉄道としての面白みに欠けてしまっていることは一部の鉄道愛好家たちに指摘されています。


東海道新幹線の車両は運行上、車両性能と座席数が全車両同じであることが望ましく、旧型車両は次々と廃され残すところは700系のみになってしまいました。
山陽新幹線は先頭車運転席側に入り口のない500系や、コンパートメント席を持つひかりレールスターなど、豊富な種類の車両が運行していることからも、東海道新幹線の徹底ぶりが伺えます。











シンボル展示を抜けた先のメイン展示では、東海道新幹線の車両たちがそろい踏み。
外光が射し込む吹き抜け空間の中で、静かに余生を過ごすことが許された車両たちが並んでいます。
フラットな空間に、新幹線も在来線特急も電気機関車も一緒に並んでいるところがテーマパークっぽくて子供ならずとも心躍りそうです。

車両の展示はいわば昆虫の標本のようで、動くはずのものが動かない寂しさもあります。
しかし、じっくりと見学する事ができるため、普段は気付くことがないような発見もあることでしょう。
新幹線を目の前から眺める機会など他ではなかなかできない体験です。


入り口から近いところにまず、新幹線。
ついに乗車することなく現役を終えてしまった団子鼻の0系や、元祖のぞみ号の300系など幼い頃に絵本でよく見た夢の超特急。
普段は見る事ができない角度から眺めてみると、思いのほか流線が美しいです。
展示されている300系にはえくぼのようなものがあって可愛らしい。このえくぼがあるのは量産先行試作車なのだそうです。


車両の側面にまわると、ひっそりと紹介パネルが設置されています。
その中には最高速度が大きく表記されているのもJR東海らしさではないでしょうか。
説明は裏方に徹して、展示は実物を目で見ることが重視されているようにも思います。


中央には在来線車両。
過去に名古屋と長野を結ぶしなの号として活躍した特急型車両、キハ181とクハ381が配置されています。
急勾配やカーブの多い中央西線や篠ノ井線での高速運転を可能にした名車です。

隣にはついに首都圏でも見ることが少なくなった湘南色の車両も並んでいました。








一番右手には、電気機関車や客車など20世紀中ごろに活躍した車両が集まっています。
どれもがチョコレート色の外観をしていて、見た目は地味ですが、よく眺めてみるとそれぞれに個性があります。

丸っこいモハ52が可愛らしい。
プラットホームに上っての車内に入ると、ノスタルジックな内装に驚かされます。
木調に優しい電球の明かりが射して暖か味のある車内は、都市の人々を運んでいたとは思えないほど趣のある車内です。

こんな車両に乗って車窓の風景が流れたらどんなに素敵でしょう。

現代の車両は車内の雰囲気もだいたい想像できてしまいますが、異なる時代の車両は特に内部をゆっくり観察してみたくなります。
同じ鉄道でも時代によって内部空間も大きく異なっていて、比較しながら時代背景などを考えたりするのも楽しいかもしれません。


最近では水戸岡デザインの車両が各地で運行されて、観光列車ブームが続いています。
JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」はそのブームにさらに拍車をかけ、JR東日本もJR西日本も負けじと開発に着手しました。
移動手段としての鉄道に本来は不要である娯楽性や芸術性が求められてきているのだな、と改めて感じます。

JR東海は少なくとも今現在では観光列車も少なく、速さ重視。
それは悪いことではなく、この博物館全体からもJR東海のぶれない姿勢が伝わってきます。

車両展示のほか、1階では「鉄道のしくみ」や「超電導リニア」の展示など技術を紹介するコーナーが設けられています。
技術開発に力を注いできたJR東海の見せ場でもありますが、機械には疎いのであまりじっくりとは見ずに通り過ぎてしまいました。


子供たちはシュミレーターやジオラマに夢中ですが、2階へ上ると、「収蔵展示室」と「歴史展示室」があります。
資料を基に展示を行っており、1階の技術展示とは対照的に文系の博物館のようです。

技術面を紹介することが多い中、このような展示があると異なった面から鉄道を考える事ができていいですね。



全鉄道が並べるだけでなく、企業の色を出しつつもシンプルにまとまった展示は非常に完成度が高と思います。
シンプルすぎて、整然としているとも言われかねない展示方法にもJR東海らしさを感じてしまいました。

最も印象深い展示は導入部のシンボル展示。
JR東海を象徴する車両が集う空間は、この博物館が私たちに何を伝えたいのかを明確にし、見学者を迎え入れています。
博物館は入り口が重要なのだなと改めて感じたのでした。

名古屋駅からは離れた辺鄙な場所に建っているものの、一見の価値がある博物館です。


 






C62蒸気機関車









蒸気機関車の無骨さ









新幹線の進化論







300系新幹線









700系新幹線







モハ52形















在来線列車







最奥には整然と並べられた旧車両









カラー写真のない時代の名車







2階からの全景




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