映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』 私だから苦しいのではなく「女性」だから苦しい 

2020-10-15 | 映画感想
原作小説はこれから読みます。

感想書かないと忘れそうなので、書いときます。





女性差別の釣瓶打ち!物凄いのさ。

画面で行われていることは『第三夫人と髪飾り』と同じ。

ただ
『第三夫人と髪飾り』は1800年代のベトナムの話だったので
「現代でも変わらないのではないでしょうか?」という脳内変換が必要だったんですが。


でもこの映画は、思いっきりビキビキの現代劇。
生活水準も低くもなくそんなに高くもなくって感じ。
ほとんどの人がビッチリと自分と合致してしまう。

まさに「今」の差別問題としてゴンゴンガンガン羅列していく。



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これが韓国映画のすごいとこですよね。
『 パラサイト 半地下の家族』でもそうだったけど、

現代社会の問題提起を
「昔話」として描いて「今でも通じるのでは?」と投げかけたりするのではなく、
怪奇映画として描いて「我々の社会でも起きていることでは?」と投げかけるのではなく、

現代劇として描いておきながらも、絵的な美しさや迫力は十分あって、登場人物のキャラクターも面白く描ける。



****


主演のチョン・ユミが超絶美人でしかも旦那がコンユ、それでもこれだけ追い詰められている、というのが表現できている点で、美男美女であることの意味もわかる。
「幸せなはず」という圧力が思いっきりかけられてる分、もしかしたら不自由かもしれない。


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チョン・ユミさんは超絶美しいし可愛いんですけどちょっと顔に個性がない(失礼…)。。

それも今回の映画ではぴったり。

基本的に松本若菜に見えるし、たまに松岡茉優にも見えるし、蓮佛美沙子にも見えるし、麻生久美子に見えたりもする。

しかも彼女はたまに体を乗っ取られて、他の女性の言葉を代弁する役でもある。

巫女的な存在であり、今で言うとリツイッターのようなことをやってる。

彼女の独自の存在感てのがない。


空虚さを抱えていながらも感情を押し殺した演技が素晴らしかった。


***



この人物は「女性」という大きなカテゴリーに苦しめられている。
キム・ジヨンだから苦しいのではなく、「女性」だから苦しい。

個人である前に「女性」ってことで道が絶たれる。
ラストで希望を掴むまでそれは続く。


ラストに希望があることで、それまでの苦しみが際立つと思うので、希望のあるラストはいいと思いますけどね。



***



あと、
原作小説よりも男性が優しく描かれているそうですね。


旦那の好人物ぶりはちょっとSF(空想科学小説)レベルでしたけど、
他の男たちは十分クソでしたけどね。。
クソっていうかアホ?
見えない力によってアホにされてるって感じでしたよ、男たち。

これよりもひどいの?小説での描写は。。



で、
旦那がこれだけ好人物であっても苦しみは軽減されない、ってことの方が地獄じゃない?

だから映画の方が地獄なのではないかと思ってしまう(原作まだ読んでない状態なので)。



***


レディースデイってこともあって客席はほとんど女性。


姑とか差別意識バリバリのスポンサーとかがあまりにも言動がひどいので
僕はちょっと笑っちゃたりしたんですが、
全然笑いが起きない。。

たぶん笑えないんでしょうね。。。
現実と重なり過ぎて笑う余裕もきっとなかったんでしょう。。


***


なんか、
結婚がゴールっていう考え方も弱まってきてはいるけど
まだ結婚したら「おめでとう〜!」「幸せ〜!」ってこの世の終わりみたいにお祝いしてますよね。。

代わりにこの映画を一族郎党で鑑賞したらええねん。


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