ケンミジンコのうた

平和な日々の暮らしを綴った日記です

人間国宝の話

2015-08-26 15:12:54 | 雑感
先日、とある焼き物(磁器)を鑑賞する機会があったのだが、
その制作者(Aさんとする)にしか出せない不思議な色があるらしい。

Aさんは長年の研究の末、その色を出す技法を編み出した。
でも、その技法は秘密で、弟子の誰一人にも教えようとしない。
制作現場も秘密で、家族でさえも立ち入ることを許さないそうだ。

そうしてAさんは人間国宝と称されるようになった。
Aさんの作る不思議な色合いの磁器は
海外でも高い評価を得ているという。

私はこの話を聞いて、すこし引っかかるものがあった。

Aさんは、自分の希少価値を高めるために、
色の調合方法の秘密を明かさない。

もしAさんが、色の調合方法を、自分の弟子たちに教えて広めていたら、
弟子たちも、その不思議な色合いを生かして、
たくさんの作品を作り出すだろう。
もしかしたら、Aさんの磁器を超える作品も生まれたかもしれない。

そして、その技法は、その地域全体の磁器の特色になり、
地域の振興に役立ったかもしれない。

でも、その場合、その技法はAさんだけのものではないから、
Aさんが人間国宝と称されることはなかっただろう。

技法を自分だけが独占して、
「人間国宝」という高い地位と名誉を獲得する人生と、

技法を広く公開して、地域の振興に尽くすけれども、
自分は無名の職人で終わる人生と、

どちらが輝かしいだろう。
どちらが美しいだろう。


にほんブログ村 主婦日記ブログ 子供なし主婦へ