大学に入って卓球部で知り合った馬場共郎君の下宿へ
行ったとき、私は初めてヤッシャ・ハイフェッツの「ツゴイネル
ワイゼン」という曲を聴いた。そこで私は魂を振るわせること
になった。これほど感動したことはなかった。その演奏を聞い
て私は自分の中に何が起きたか初めは気がつかなかった。
馬場君は私の顔をジーッと眺めていたがしばらくして
「君も僕と同じように感動したんだね」
といった。私は涙を流していたらしい。それほどハイフェッツ
の演奏はすばらしかった。それをレコードで聞いたとしても、
価値が下がることはなかった。
その後、アルバイトをして貯めたお金でレコードプレイヤー
とアンプ・スピーカー代わりのステレオラジオを買った。もちろ
んヤッシャ・ハイフェッツのレコードも買いました。この話はも
う55年ほども前のものです。何回も聞いたので少し傷が付い
てしまいましたがいまも大切も保存しています。
古希になったときに記念品としてハイフェッツ全集(数十枚の
CD)を卒業生から贈られました。私の宝物の一つとして大切に
しています。
馬場共郎君には、その他にもSF小説「太陽系帝国の最後」を
紹介されたり、一緒に山へ行ったりしました。若い頃に良い友人
と知り合うことはどれほど人生を豊にするか計り知れませんね。