「仕事でミスをしたんです。」
「…うん。」
カフェで、いつも優しい坂元先輩と向き合っていた。
「田岡主任は、いつも厳しくて…」
「うん。」
「それでも山口女史…あ、女史と呼んでるんですが…。私を信頼してくれていたのに…」
「そんな事もあるよ。いちいち気にしてたら身が持たないよ。時には聞き流さないと」
坂元先輩は、そっとカップに手を添えていた七美の手に触れた。
「あ…はい。……そうですね」
七美は、戸惑った。
坂元は優しい…。
優しさに甘えていると、誤解をさせてしまう。
「ありがとうございます。先輩からのアドバイスをちゃんと心に刻んで頑張ります!」
添えられた坂元の手からそっと自分の手を引っ込めた。
一瞬、坂元は寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。