
梅原屋のNさん製作の黒森峰エレファント、インテリア見学の続きです。車体前部の操縦席の天板を外したところです。

最近のフルインテリアキットの精巧さは驚くほどに向上していることが改めて理解出来ます。この精密なキットを丁寧にカラフルに塗装して綺麗に仕上げるNさんの情熱にも敬意を表します。
Nさんの記録によれば、このキットに使用した塗装カラーは、車台内部の工作分だけでも約30色だそうです。基本方針として、メカの塗装は「現代のメカ」風にする、特に大電力を扱っている雰囲気を持たせる、というのがあり、車内の発動機、冷却器、発電機、駆動機構の区画ごとに壁面色を塗り分けているそうです。それだけ細分化して色をちりばめてあるのですから、約30色に達するのも頷けます。
ちなみにほぼ同時期に私が製作していた知波単学園の特二式内火艇カミの塗装色は、外装で6色、内装で7色の計13色しかありませんが、それだけでも塗装作業に一ヶ月余りを要しました。製作期間は約4ヵ月でした。
しかし、Nさんのエレファントは、製作と塗装あわせて一ヶ月半で仕上げたそうです。驚くべきスピードです。

よく見たら、操縦席と通信席の間の後壁に西住流の標語が貼ってあります。いかなる製作でもユーモアを欠かさないNさんの基調が鮮やかに示されます。その右側の戦車道連盟の認証マークも笑えます。認証って、どこをどうチェックして出すんでしょうか・・・。

全体を見るとすごい迫力です。素晴らしい精密感です。実際の車輌に限りなく近づけてあるのでしょうが、これだけの車輌を生産出来たドイツの基礎工業力の高さがよく理解出来ます。ほぼ全体が機関室という、このレイアウトと機構でないと、65トンもの重戦車を動かせないわけですね・・・。

エンジンは左右に2基が並列で配置されます。フリードリヒスハーフェンのマイバッハHL120TRM V型12気筒液冷ガソリン・エンジンです。キットはフェルディナントですから、最初はポルシェ101/1 V型10気筒空冷ガソリン・エンジンかなと思いましたが、Nさんに訊いたらマイバッハだ、とのことでした。

エレファントの特徴は、駆動装置に電動モーターを使用する電気式が採用されている点です。電気式ではトランスミッションが不要となります。第二次大戦中のドイツでは、50トンを超えるような重戦車用のトランスミッションの製作は困難であり、設計者ポルシェはその問題の解決方法として電気式システムを採用しました。ガソリンエンジンで発電機を動かし、その電気でモーターを作動するので、ミッションが不要で、無段階変速できる利点がありました。

手前左右に並ぶ2基の円筒がモーターです。後輪駆動であることが分かります。モーターの奥には給排気区画があり、エアーフィンもエンジンにならって左右2基つけられます。
Nさんによれば、発電機先端のファンによる風を、車台左右のダクトを通してモーターの空冷ファン室に送っているそうです。
ガルパンではレオポンさんチームのポルシェティーガーも同じ機構を持っていると聞きましたが、そうすると、このフェルディナントのキットを使ってポルシェティーガーのフルインテリア仕様を作れるということになりますか・・・。

左右に並ぶ方形のユニット列は、88ミリ砲弾の収納ラックの台座です。左右あわせて38発分がありますが、エレファントの砲弾装備数は50発です。あとの12発はどこに収納されているのかを聞き忘れました。たぶん戦闘室のどこかだろうと思いますが・・・。
見ていてふと思い出したのですが、同時期に私が製作していた特二式内火艇カミのインテリアには、砲弾ラックはありません。カミの実車に搭乗してパラオ戦線で戦った旧海軍の艇長さんの証言では、カミ車内の弾庫は7.7ミリ機銃の箱型弾倉用のみしか無かったそうなので、その通りに再現製作しています。37ミリ戦車砲の砲弾はどうやって収納したのかというと、6発入りの木箱を定数で22個車内各所に置いていたそうです。
なので、エレファントのように砲弾が壁面に並ぶという状態は、カミでは有り得ません。カミのインテリアを作っている際に、その点が物足りなかったので、今回のエレファントの88ミリ砲弾の収納ラックの台座を見ていて、凄いものだ、と感心せざるを得ませんでした。

エンジンの左右隔壁上に立つクローバーみたいな形状の部品は、Nさんによれば給気ユニットであるそうです。これは戦闘室内にあるので、乗員の位置からも見える筈です。そして、その給気口までの空気取り入れ口が車体の外見においては見えないので、どこにあるんだろうね、等と話していました。どうやら、車体側面の段差の内側にあるらしいです。

面白かったのは、操縦席の計器パネルが前ではなくて左側斜め後ろに付けられている点でした。上図の操縦席の左側斜め後ろの上にある白い計器ボックスがそれです。隣に赤い消火器もあります。操縦者はいちいち左側斜め後ろ上方を見ないと、自車のスピードなり走行状況なりが分からなかったようですが、かなり不便な設計ですね・・・。
上図でも分かるように、前面は増加装甲板ですので、計器板を操縦席前に付けると、敵弾の直撃を前面装甲に受けた場合に衝撃で計器類が破損してしまう危険があります。それで計器パネルが前ではなくて左側斜め後ろに設けられているのでしょう。

今回も、大変に素晴らしい作品を見せていただきました。Nさんに感謝!!

元通りに外板をはめ直して、かかる外見の状態に戻りました。その後にNさんが思い出したように逸見エリカのフィギュアを取り出して車輌の前に立てました。
えっ、なぜエリカ?エレファントの車長は?・・・と思いましたが、よく考えたらアニメ劇中にエレファントの乗員は全く出ていませんでしたね・・・。
なお、外見からは分かりませんが、Nさんの記録によれば、履帯の製作に相当の紆余曲折があったそうです。一度、溶解してしまって新たなパーツを注文したりして苦労したそうです。
作品全体についてみると、フェルディナントからエレファントへの改装は30箇所を越えていますが、Nさんらしい情熱的行動力をもって積極的に改修し、黒森峰仕様で仕上げているわけです。実際の車輌顔負けの工作ぶりです。

この作品は、6月に予定されている「大洗でみんなのガルパン模型やガレキなどを鑑賞する会」に出す予定であると聞きました。同時に私の特二式内火艇カミも並べて、フルインテリアキット2作品の展示の形にする方針だったのですが、私が6月の該当日に休みが取れなくなったため、実現不可能となりました。
ですが、私の特二式内火艇カミは曲松カノウヤ応援作戦の寄託展示に出すことになりましたので、このエレファントも共に出していただけませんかとNさんに打診したのですが、「それはちょっと・・・」と辞退されました。
その後、新型肺炎感染の拡大によって大洗町でも来訪自粛要請が公表され、6月の「大洗でみんなのガルパン模型やガレキなどを鑑賞する会」も8月に延期となりました。しかし、盆休みになっているため、私はこのタイミングにも出られませんので、不参加となります。
そして、曲松カノウヤ応援作戦の寄託展示の準備も、5月までの予定分が全て延期となりましたので、今後はいつ大洗へ行けるのか、見通しは全くたっていません。 (続く)