休憩場でしばらく休んだ後、隣のお店へ入りました。2年ぶりの訪問でしたが、関野さん夫婦はにこやかに「ああ、星野さんじゃないですか。いやあ、久し振りですねえ、しばらく来なかったねえ」と迎えてくれました。お仕事の最中のようでしたが、時々手を休めては色々尋ねてきました。今日来たの?どこかにお泊り?いつまで御滞在?などと聞かれました。
隣の休憩場について訊ねると、「ああ、去年に建てたんだよ。それまではテントだったけども、冬は寒いし夏は暑いしでね、年末年始は大勢集まって来るしね、ゆっくりしていられる場所があったらいいんじゃないか、ってことで作ったの。朝から開けてるからね、いつでも来て朝ごはんでも食べてってよ」と嬉しそうに楽しそうに語るのでした。
巡礼ファンの間で「朝ウスヤ」と呼ばれる、ウスヤでの朝ごはんは、お店の色々なメニューとサービスのパン、コーヒーなどを組み合わせたものだそうです。私はまだ食べたことが無いのですが、奥さんは「じゃあ明日来てゆっくりしていったらどう?」と笑顔ですすめて下さいました。
ウスヤの店内は、以前とかなり変わっていました。上図のように、寝そべりぬいぐるみの数が大変なレベルになっていて、天井まわりを占領しつつありました。
何なんだ、この夥しい数は・・・、と茫然と見上げていると、「みんな同じファンの人からなんですよ」と言われました。えっ、と再び驚きつつ振り返ると、奥さんが僅かに困惑と諦めの表情をにじませつつ、苦笑しておられました。寄贈する側は満足なのでしょうが、寄贈される側は必ずしも満足とは限らない、という大洗でのよくあるパターンを改めて見た思いがしました。
「今後も寄贈してくるんですか?」
「でしょうねえ」
奥さんは笑っていましたが、店主さんは無言のまま、背中を向けて仕事に没頭されていました。
例のイラスト群は店内にも多くが飾られていました。劇場版の公開時期ぐらいから一気に数が増えたように錯覚しがちですが、イラストそのものはそれ以前から継続的に描かれていたはずです。ただ、初期のイラストは大進さんのメニュー案内も兼ねていたものが多く、すぐに消してしまって別のを描いてくる、という流れだったのです。
なので、「初期の絵で、ええなあ、というのが結構あったよね。でも消しちゃって新しいのに描きかえちゃってるんだ。いま思うと、けっこう勿体無いな。写真撮っとけばよかったんだね」と語ってくるのには、まったく同感でした。
一枚一枚に気合が入っています。楽しんで全力で描いてることがよく分かります。カラフルですが、きちんとカラーコーディネートをわきまえて配色にも気を配っていることが感じられます。まったくお見事としか、言いようがありません。
地元の方のガルパン愛、がサインペン画の形で鮮やかに発露されています。大洗を代表するガルパンファンアート作品群と言えましょう。
見る度に感心するのは、作者の描画に対するスタンス、情熱が常に高い水準のままで維持されていることです。おそらく、アイデアは無限に涌いてくるのでしょうし、常に何かを描きたい、表現したいという気持ちがみなぎっていているのでしょう。
そして、ガルパンに関する無数のイメージが次々にペン先から発散されて次々にイラスト化されてゆく様子が目に浮かびます。プロのクリエイター顔負けですね・・・。
ガルパン缶バッジも相変わらず豊富に揃えて販売していました。以前の私なら、当たり前のように買ったでしょうが、二年のブランクを経てガルパングッズ類も断捨離した後のことであるので、収集ももちろん止めています。だから、今回は缶バッジを全く買いませんでしたし、勧められても貰いませんでした。
缶バッジの並んだボードをしばらく眺めました。何もかも懐かしい・・、という気分でした。以前に私が寄贈した缶バッジ群の多くは錆が浮き出てしまって見苦しくなってしまっていました。二年の歳月の長さを思わずにはいられませんでした。
関野さんの話では、今の大洗では缶バッジの製作や販売そのものも、全盛期を通り越した感がある、ということです。商店街の各店舗がガンガン出していた数年前の状態とは、今は違うし、缶バッジを出そうという所も少なくなったみたいだ、と語られていました。コストが馬鹿にならないからね、と苦笑されていました。
確かに、そうなのかもしれません。今回の滞在中に立ち寄ったどこのお店でも、缶バッジに関する話はほとんど出ませんでした。以前とはえらい違いです。 (続く)