私のガルパン巡礼、大洗行きは、2013年の11月からほぼ毎月続いていますが、暑さに弱いため、夏季の訪洗は控えようと考えていました。が、諸事情によって7月も8月も大洗へ出かけたため、9月ぐらいは休もう、と本気で考えていました。だから事前の計画づくりも宿泊予約も、9月第二週の末まで全くやっていませんでした。
そうして休日には久しぶりにガルパン戦車プラモデルを作ろう、と思って部屋に積んである未製作のキットを色々チェックしたりしました。次はカメさんチームの38t戦車をインテリアも再現して楽しむか、と箱を開けて中身をチェックし、ガルパン仕様への追加工作および改造ポイントをノートにまとめたりしているうちに、玄関の方で郵便物が投函される音が聞こえました。公共料金の請求書類か、と思って取り出すと、知人のK氏からの手紙でした。意外な気がしました。
と言うのは、K氏とはひと月前に京都のアニメイベントで初めて会ったばかりで、話も少ししただけの顔見知り程度であったからです。愛知県岡崎市の人で年は四つほど下ですが、京都の大学で聴講生としてアニメ文化について研究している、と聞きましたので、勉強熱心なんだなあ、と感心したのを思い出しました。
さらに意外だったのは、手紙の内容でした。大洗ガルパン缶バッジの動向について興味があり、研究テーマの参考資料にしたいので、詳しいデータまたは数値を調べて教えていただきたい、という旨でした。添えられた紙を開くと、「大洗町のガルパン缶バッジの諸数値」と題した未記入のリストでした。施設名、ボード有無、缶バッジ数、公式、同人、32ミリ、他サイズ、総個数、といった要目が並べられていて、K氏が知りたいデータまたは数値というのが、大体理解出来ました。
そういえば、大洗発のガルパン缶バッジに関しては、その総数はおろか、種類や在庫状況や各店舗での配布実態などもほとんど明らかになっていません。缶バッジを作成している商工会すら全容を把握しないままに推移しているらしく、ファンの中にも全部の缶バッジをコレクションしている方は居ないと聞きました。
今年に入ってからは数が増えるだけでなく、ファンや同人の作成による缶バッジも加わり、また商店街の各店舗がオリジナルバッジを相次いで出しているため、頻繁に大洗へ通っているファンですら、缶バッジの動向の全てを掴み切れないそうです。私自身はイベント等にはあまり参加しないため、イベント限定の缶バッジにはほとんど縁が無く、通常の大洗行きにて入手可能な分しか把握していません。
なので、K氏が知りたいデータまたは数値、というのも、私の場合は正確に得られていないな、と改めて思いました。
手紙をしまいながら考えていると、計ったように携帯電話が鳴りました。K氏からでした。手紙の内容に関する丁寧な説明があり、自身は勤務のかたわらで休日には大学へ行ってるので、大洗に行きたくても行けない、という話をしてきました。星野さんは毎月大洗へ行かれているし、ブログにも缶バッジの画像を豊富にアップされているし、缶バッジを自作して寄贈しておられるし、時々中間報告の形で大洗ガルパン缶バッジの動向をまとめておられるので、ガルパンファンのなかでもかなり缶バッジに詳しい方とお見受けする、出来れば9月中に大洗へ行って、ガルパン缶バッジの諸数値を録ってきていただけないか、と言われました。
そういうことか、と理解し、なんだか面白そうな研究をしてるんですね、と問い返しました。
「いやあ、実はですね、アニメ文化をグッズにおいて多角的に捉えて考えてみようと思いまして、グッズの中でも安価で普及率がたかい缶バッジに注目してるんですね。これが日本のアニメの人気と普及と構築される文化的土壌にどのように関わるか、というのがいま僕が考えてるテーマなんですけど。それで、缶バッジというのは、だいたいはアニメグッズとして企業が作って、アニメの専門店で販売して、ファンの中に広がるという流れですよね」
「まあ、そうですね」
「星野さんも御存知だと思いますけど、僕は艦これのファンなんで、艦これの缶バッジの動向とかいろいろ調べてるんですけど、ファンやサークルが作ってるのも大体はアニメの専門店で販売して、ファンの中に広がるので、流通のパターンは共通している。でもガルパンのはどうもそうじゃないみたいですね」
「そう、違いますね」
「僕の大体の理解ですと、企業つまりバンダイは認可だけ出して、実際に作るのは大洗町の商工会。それを商店街の各店に配って、販売するのでなく原則的には販促品として使用。それをファンだけでなく各店でもコレクションして回る。しかもどういうバッジを作って出したか商工会でも把握していないから、これまでの動向や状況が熱心なファンにも掴めていない、地元の商店街でも正確に知らない。こういう理解で合っていますか?」
「それで合っていると思います。私の理解もそんな感じですので」
「ああ良かった、しかもですね、ガルパンの缶バッジというのはアニメグッズのマーケットに全然流通していないらしい。アニメイトでもらしんぱんでもメロンブックスでも売ってないんですよ。どうも大洗町でしか手に入らないらしい」
「そうですよ。私も大洗以外では見たこと無いですね。アニメイトが発売しているやつは少し出回ってますがね、大洗発のはネットオークションで見かける以外は実物を見たことが無い」
「でしょう?そうなんです。それって、非常に珍しいパターンだと思いません?他のアニメの缶バッジは、レア物だって交流イベントとかでも出てくるし、販売や交換もやってますよね。でも大洗のガルパンの缶バッジだけは、ガルパンファンが持ってきてくれなきゃ、全然本物を見られないんですね。僕だって、星野さんに見せてもらって初めて知りましたしね」
「その大洗発のガルパン缶バッジの詳細やデータを知りたい、ということですが・・・」
「そうなんです。それなんです。手紙につけました調査リスト、あれに数値を録って入れていただけませんか、とお願いしたいのです」
「それは分かりますが、今月は大洗に行くという予定がありませんのでね・・・」
「そこをなんとかお願いしたいのです。僕が大洗に行って調べるのが筋なんですけど、休みは全て大学かレポート作成なんで、行く暇が全く無いんです。レポートもほとんど10月に提出締め切りがあるんで、缶バッジのテーマも中間レポートを出さないといかんのです」
「うーん」
「無理をお願いしているのですから、費用はこっちで出します。切符と宿を手配しておきますよ」
「いや、それは・・・」
そんな流れで二度は辞退したものの、三度目の電話で長々とお願いされてついには押し切られ、受けざるを得なくなりました。仕方なしに大洗行きの日時の候補案を伝えると、K氏はその日のうちに全ての手配を完了したらしく、夕方には嬉しそうな声で報告の連絡を入れてきました。
「とりあえず全部取っておきましたんで、切符は明日に届くと思います。宿の方は星野さんのお気に入りの「さかなや隠居」です」
そして翌日には往復の切符が一通り送られてきました。どの列車に乗ってもいいように、特急券は自由席で買ってありました。驚いたことに、一万円相当のギフト券まで添えられてありました。これで大洗で土産でも買って下さい、ということなのでしょうが、大洗のお店で使えるものなのかな、と疑問に思いました。
かくして9月も大洗へ行くという成り行きになりました。これもガルパンファンの宿命か、となにか諦めたような、悟ったような心境に陥りました。アルバイトの一種と思えば良いか、とも考え直しました。
今回は、大洗の各店舗における大洗ガルパン缶バッジのデータまたは数値を調査する、というのが目的なので、時間的にはそんなにかからないだろうと判断しました。午後から調査に回っても余裕があると考えたので、朝は9時過ぎから列車利用でのんびりと行って、水戸駅には12時過ぎに着きました。そのまま鹿島臨海鉄道のホームに移動しました。
ラッキーなことに、今回の12時33分発の列車はガルパンラッピング車輌の2号車でした。最近は毎回ガルパンラッピング車輌に乗ることが叶っているので、不遇続きの自分にもようやく運が向いてきたか、と大げさでなく本気で感動しました。
とにかく、これでテンションもあがってまいりました。最初は行く積りが無く、突発的な事情にて出向いた次第ですが、いざ大洗に向かう機会に立ち会ってみると、やっぱり大洗へ行くのは楽しいもんだ、と感じました。目的がどうであれ、ガルパンファンとして大洗へ行くのは当たり前で自然なことなのだな、とも思いました。
何度見ても楽しいガルパンラッピング車輌です。サンダース大附属校のケイとナオミが並んでいますが、なぜかアリサはいないのです。劇中ではけっこう目立っていたのに、忘れ去られてしまったのでしょうか・・・。
あんこうチームのデザインも楽しいですね。最近はこのチームの立体商品化が相次いでアナウンスされていまして、ついには1/12スケールのフィグマ搭乗用Ⅳ号戦車D型もリリースが決定したということです。しかも「シリーズ最初の製品」と銘打っていたそうですので、この大きなスケールの商品が続けて幾つか出されるということらしいです。買っても置き場所に悩む人が続出しそうですね・・・。
聖グロリアーナ女学院のメンバーはダージリンとオレンジペコだけで、アッサムが居ません。ラッピングのデザイン案にも組み込まれなかったのでしようか・・・。だとすれば寂し過ぎますが、しかし劇場版ではどうやらセリフが入っている様子、アッサムにもようやくスポットがあたって輝き出すのでしょう。
以前に、ガルパン交流板か何かでアッサムの本名の苗字が「浅見」であるという記事を見ましたが、公式設定にはありません。私自身は「浅見」と言えば名探偵浅見光彦を連想しますが・・・。
ここでもあんこうチームが目立っています。チームで主役をつとめているのも、アニメのキャラクターの有り方としては珍しいほうだと思います。
繰り返しますが、ダージリンとオレンジペコの間にはアッサムが居るべきなのです。乗務員室昇降口の窓が無ければ、堂々とアッサムの姿が貼られていたのではないでしょうか。
この列車は、大洗が終点となっていました。折り返して水戸へ戻るわけですね。時刻表を見ると、この水戸と大洗とを連絡する列車にガルパンラッピング車輌が含まれる確率が高いようです。
車内も相変わらずガルパン一色です。毎月同じものを見るので、定期的な付け替えはやっていないのかもしれません。
この日もガルパンファンが二人ほど乗ってきて、吊り下げられたガルパンポスターを一枚一枚順に撮影していました。撮影し終わると、降りて駅構内へ消えてしまいました。どうやらガルパンラッピング車輌だけが目当てだったようです。
窓の外に広がる田の多くは、稲の刈取りを終えていました。暦は冬に近づいているのだなと実感出来ました。
話題の田んぼアート「みとちゃん」はまだ健在でした。と言うより、まだ稲穂が黄金色になりきっていないのでした。刈取り収穫のタイミングは10月に入ってからかな、と思いました。しかし、ここまで育ってもデザインの輪郭がはっきりと保たれているのは素晴らしいですね。
大洗駅のインフォメーションコーナーは、冷泉麻子で埋め尽くされていました。9月1日の誕生日イベントに際して展示替えを行ったわけですね。
さあ、問題の大洗ガルパン缶バッジです。K氏に依頼された調査活動は、ここ大洗駅の展示缶バッジを調べてカウントすることからスタートしました。前述のように、調査項目には「ボード有無」というのがあり、K氏の追加説明では「原則としてボードに並べてある分をカウント対象にして下さい」とのことだったので、調査対象となる施設や店舗はかなり絞り込まれます。
調査は、ボードの数、缶バッジの総数を捉えたうえで、缶バッジのうち公式のもの、非公式のものに分類し、またサイズ別にもカウントする、といった形で進めました。星野さんの寄贈したバッジもカウントして下さい、とのことだったので、私としてもこれまでの寄贈分の再確認といった側面がありました。
カウントを行ってリストに数値を記入し、駅舎を出ました。調査そのものは数分もかからないので、これは思ったよりも楽なアルバイトだな、と感じました。交通費も宿泊費も全て依頼者持ちでしたから、こんな楽な大洗行きというのも良いかもしれないな、と思いました。 (続く)