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「『北の虫程良く死んだ振りをする。』大学が研究成果を発表 全国38ヶ所のコイン精米機で害虫を採集し調査」(3月29日、RSK山陽放送)
虫にとって、天敵を回避する為に有効な戦略と言えば、「死んだ振り」です。其の死んだ振りに付いて、岡山大学の研究チームは「北の虫程、死んだ振りを良く行う。」という研究結果を発表しました。
此の研究は、岡山大学・学術研究院・環境生命科学学域の松村健太郎研究助教(33歳)と宮竹貴久教授(61歳)の研究チームが行った物です。
研究対象となったのは、全国各地に設置されたコイン精米機から採集した「擬穀盗」という昆虫です。研究チームは、北は青森県五所川原市から南は沖縄県の西表島迄38ヶ所で、此の擬穀盗の野外個体群を採集しました。
採集した個体群を実験室に持ち帰り、「捕まえた個体が “偶” 死んだ振りが長かった。」等の影響を排除する為、孫世代迄繁殖。そして、各個体を仰向けに置いた状態で、木製の棒で腹部を軽く突き、「死んだ振り」を誘発して観察しました。すると・・・。
地域によって、死んだ振りをした「個体の割合」、「持続時間」が異なり、更に「緯度が高い個体群」の方が、「緯度の低い」 方よりも死んだ振りをする割合が高く、持続時間が長い事が明らかになったという事です。
研究チームでは、此れ等の結果は、擬穀盗の死んだ振り行動に「緯度クライン」、詰まり「生物の形質が、緯度と共に変化する現象。」が在る事を示しているとしています。
「死んだ振り」という行動に付いて、此れ迄世界中で充分なデータを取った研究は無かったという事で、此の研究結果は、今日(29日)英国王立協会の国際雑誌「Biology Letters」に掲載されるという事です。
世界中に分布し、米や小麦の粉を食すという擬穀盗。此の「地域で、昆虫の捕食回避行動が異なる。」という知見は、より効率的な害虫駆除法を開発する上でも重要と考えられ、松村研究助教は「身近な所で生息している地味な昆虫からでも、世界を驚かせる発見が在ると思っています。」とコメントしています。
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「自分の様な凡人だと、気に留める事も無く、見逃してしまう事象。」から、優れた人達は“新たな発見”をする。そういう例は古今東西、枚挙に遑が無い。
今回の研究、「地域で、昆虫の捕食回避行動が異なるだろうか?」という疑問は思い浮かんでも、死んだ振りに着眼したというのは、少なくとも自分じゃあ無理。結果として「擬穀盗に関しては、『緯度が高い個体群』の方が、『緯度の低い』 方よりも死んだ振りをする割合が高く、持続時間が長い。」という事実を導き出し、「其の事が、より効率的な害虫駆除方法の開発に結び付くかも知れない。」というのだから、全く以て恐れ入るしか無い。