*********************************
人気絶頂のシンガーソングライター・上条梨乃(かみじょう りの)は、目を覚ますと渋谷の塵捨て場に居た。素顔を晒しているのに、周囲の人間は上条梨乃だと認識せず、更にビルの電光掲示板には、梨乃が自殺したというニュースが流れていた。
不可解な状況に困惑する梨乃だが、そんな中、大学生の佐伯優斗(さえき ゆうと)だけが、梨乃の存在に気付く。梨乃と同じ境遇に在った少年・立川樹(たちかわ いつき)とも出会い、梨乃は優斗等の助けを借り、嘗て所属していた芸能事務所でアルバイトをし乍ら、事件の真相を探って行く。
*********************************
第13回(2014年)「このミステリーがすごい!」大賞の優秀賞を受賞した小説「いなくなった私へ」。著者の辻堂ゆめさんは、東京大学法学部在籍中の昨年に受賞したという事で、「このミステリーがすごい!」大賞(の賞)を学生で受賞したのは、2人目の事と言う。
「目が覚めたら、自分は死んだ事になっていた。周りの人間は知り合いすらも、自分を“本来の人間”として認識してくれない。」というのは、確かに面白い設定だと思う。
でも、梨乃達を“殺した”犯人を含め、話の流れは想像が付いてしまったし、何よりも“余りに都合の良い設定”の数々には、「そりゃ無いだろう。」という思いが。文章の拙さも気になる。
優斗の正体に関しては、「そう来たか!」という驚きは在ったものの、全体的には「うーん・・・。」という内容。「大人の梨乃は未だしも、幼い樹は今後どう生きて行くのだろうか?」という事が、読み終わった後に気になった点。
厳しいかもしれないけれど、総合評価は星2つとする。