ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「白鳥とコウモリ」

2021年04月24日 | 書籍関連

**********************************************************
遺体で発見された善良弁護士・白石健介(しらいし けんすけ)。「1人の男・倉木達郎(くらき たつろう)が殺害を自供し、事件は解決。」のだった。

「全て、私が遣りました。全ての事件の犯人は、私です。」。2017年東京、1984年愛知繋ぐ或る男の“告白”、其の絶望、そして希望。

「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せる物じゃ無い。」。私達は、未知なる迷宮に引き込まれる。
**********************************************************

1985年、小説放課後」で文壇デビューを果たした東野圭吾氏。自分は1989年に此の「放課後」を読み、其の作風魅了されてしまった。今では超売れっ子小説家の彼も大ヒット作に恵まれず、「こんなに凄い小説家なのに、何で売れないのだろうか?」というもどかしさから書いたのが、2004年の記事「賞に縁遠い男“東野圭吾”」だ。17年前の事とはいえ、売れっ子小説家となった彼を思うと、隔世の感が在る。

デビューから36年目となった今年、上梓されたのが「白鳥とコウモリ」という奇妙なタイトルの作品。殺害された被害者もそうだが、殺害を自供した加害者も、周りからは善良な人と見做されていた。“彼”は何故殺され、そして“彼”は何故殺したのか?

殺害された彼の娘、そして殺害した彼の息子が、事件から浮かび上がって来る“自身の父親のイメージ”との乖離に疑問を感じ、独自に事件を調べ始め、意外な事実が次々と明らかになって行く。時空を超えたミステリーだ。

「賞に縁遠い男“東野圭吾”」の中でも書いた様に、自分が一番好きな東野作品は「魔球。記事を書いてから17年経った今でも、其れは変わっていない。小説家として数多くの作品を生み出して来ているので、当然“文章力”は格段に上がっているのだが、文章の稚拙さは在っても、此の超初期の作品を初めて読んだ時の“衝撃”は、今でも忘れられない。東野作品の最大の魅力と思っている読後の何とも言えない物悲しさが一番堪能出来る作品でも在る。

そんな「魔球」に、「白鳥とコウモリ」は雰囲気が似ている。「良かれと思ってした事が、結果的に“大きな不幸”を生み出してしまい、そして其の大きな不幸が、33年の時を経て“新たな不幸”を生み出してしまう。」というのは、“善意”が介在しているからこそ、何とも言えない物悲しさ覚えてしまう。

“真犯人”は意外な人物で在り、其の“動機”は更に意外。「そんな事で?」と思ってしまうのだけれど、現実社会で言えば、珍しく無い動機になりつつ在るのが不気味だ。又、「罪と罰」という物に付いても、改めて考えさせられた。

総合評価は、星4つとしたい。


コメント    この記事についてブログを書く
« “国民の質”が一番の問題では? | トップ | ジャイアンツの4番打者と3塁打 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。