揶揄で「大先生」の呼称をしばしば用いる皮肉屋な自分が、心底敬愛の念を込めて「先生」と呼ぶ数少ない一人の手塚治虫氏。彼の作品を通じて多くの知識を得て来たので、彼の存在無くして今の自分は無かったと言っても良い。
あの立川談志氏をして「俺が天才と認めるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチと手塚治虫だけだ。」と言わしめた手塚氏だが、1960年代後半から1970年初頭に掛けて大スランプに陥っていた。スポ根漫画や劇画が全盛となり、ディズニー作品の影響を強く受けた手塚氏の丸みを帯びた絵柄は古臭いと指摘される様に。そして設立したアニメーション制作会社「虫プロダクション」は1973年に経営難で倒産する等、彼は心身共に追い込まれていたと言える。1973年11月に発表された「ブラック・ジャック」が好評を博す迄、“氷河期”に描かれた作品には「アポロの歌」や「アラバスター」の様に鬱々とした内容の物が少なくない。
1928年11月3日、手塚氏はこの世に生を受けた。つまり、今年で生誕80周年を迎える。それを記念して様々なイベントが組まれているが、彼の或る作品の実写化が一昨昨日発表された。その作品名は「MW(ムー)」。自分もそうだが、この作品の実写化に驚きを感じた手塚ファンは結構居たのではないだろうか。大スランプ時代に生み出されたこの作品は、露骨な性描写や猟奇的殺人シーンが登場し、実写化には諸々の問題が立ちはだかっている様に感じるからだ。
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梨園に生まれ、エリート銀行マンとして働く結城美知夫。絶世の美青年の彼には、冷血な連続殺人犯の顔が隠されていた。犯行を重ねる度に教会を訪れ、旧知の賀来神父の元で懺悔する彼。二人は同性愛の仲だった。
嘗て美知夫は少年時代に南国の沖ノ真船島を訪れ、この地にたまたま来ていた不良少年グループに勾引かされた経験が。その際、同島に駐留する某外国軍の秘密化学兵器「MW(ムウ)」が漏れ、島民は相次いで変死。その地獄絵を目の当たりにしたトラウマと自らも毒ガスを吸ったショックから、美知夫は心身を蝕まれる。そして不良グループの一員だった賀来の手で凄惨な場面から逃げ果せたのも束の間、避難先で賀来に強引に犯される美知夫。それ以降、主従関係は変わるも、2人の複雑な関係は続いていたのだった・・・。
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1969年7月8日、沖縄のアメリカ軍基地内ので発生した「致死性VX神経ガスの漏出事故」。24人の米兵が被害となったこの事件を下敷きにしたとされるこの作品、最初から最後迄鬱々としており、救いが感じられない内容。ハッピー・エンドよりもバッド・エンドが多く見られる手塚作品の中でも、「MW」はその筆頭格に在ると言える。
来年公開予定の実写版、「結城美知夫=玉木宏氏、賀来神父=山田孝之氏」というキャスティングとか。原作のイメージにかなり近いキャスティングだと思う。特に「端正なマスクの下に冷血さを秘めた結城役」を玉木氏が演ずるというのはなかなかGood。結城を追い詰めて行く目黒検事役も気になるが、発表された役者の顔触れからすると石橋凌氏が演ずるのだろうか?個人的には蟹江敬三氏の方が在っている気がする。
今から公開が楽しみな作品。唯、難在りと思われたこの作品が実写化されるのならば、同様に問題が在りそうな「きりひと讃歌」も実写化して欲しい。やはり“氷河期”に描かれた重苦しい内容の手塚作品だが、自分の好きな作品の一つで在るからだ。
あの立川談志氏をして「俺が天才と認めるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチと手塚治虫だけだ。」と言わしめた手塚氏だが、1960年代後半から1970年初頭に掛けて大スランプに陥っていた。スポ根漫画や劇画が全盛となり、ディズニー作品の影響を強く受けた手塚氏の丸みを帯びた絵柄は古臭いと指摘される様に。そして設立したアニメーション制作会社「虫プロダクション」は1973年に経営難で倒産する等、彼は心身共に追い込まれていたと言える。1973年11月に発表された「ブラック・ジャック」が好評を博す迄、“氷河期”に描かれた作品には「アポロの歌」や「アラバスター」の様に鬱々とした内容の物が少なくない。
1928年11月3日、手塚氏はこの世に生を受けた。つまり、今年で生誕80周年を迎える。それを記念して様々なイベントが組まれているが、彼の或る作品の実写化が一昨昨日発表された。その作品名は「MW(ムー)」。自分もそうだが、この作品の実写化に驚きを感じた手塚ファンは結構居たのではないだろうか。大スランプ時代に生み出されたこの作品は、露骨な性描写や猟奇的殺人シーンが登場し、実写化には諸々の問題が立ちはだかっている様に感じるからだ。
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梨園に生まれ、エリート銀行マンとして働く結城美知夫。絶世の美青年の彼には、冷血な連続殺人犯の顔が隠されていた。犯行を重ねる度に教会を訪れ、旧知の賀来神父の元で懺悔する彼。二人は同性愛の仲だった。
嘗て美知夫は少年時代に南国の沖ノ真船島を訪れ、この地にたまたま来ていた不良少年グループに勾引かされた経験が。その際、同島に駐留する某外国軍の秘密化学兵器「MW(ムウ)」が漏れ、島民は相次いで変死。その地獄絵を目の当たりにしたトラウマと自らも毒ガスを吸ったショックから、美知夫は心身を蝕まれる。そして不良グループの一員だった賀来の手で凄惨な場面から逃げ果せたのも束の間、避難先で賀来に強引に犯される美知夫。それ以降、主従関係は変わるも、2人の複雑な関係は続いていたのだった・・・。
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1969年7月8日、沖縄のアメリカ軍基地内ので発生した「致死性VX神経ガスの漏出事故」。24人の米兵が被害となったこの事件を下敷きにしたとされるこの作品、最初から最後迄鬱々としており、救いが感じられない内容。ハッピー・エンドよりもバッド・エンドが多く見られる手塚作品の中でも、「MW」はその筆頭格に在ると言える。
来年公開予定の実写版、「結城美知夫=玉木宏氏、賀来神父=山田孝之氏」というキャスティングとか。原作のイメージにかなり近いキャスティングだと思う。特に「端正なマスクの下に冷血さを秘めた結城役」を玉木氏が演ずるというのはなかなかGood。結城を追い詰めて行く目黒検事役も気になるが、発表された役者の顔触れからすると石橋凌氏が演ずるのだろうか?個人的には蟹江敬三氏の方が在っている気がする。
今から公開が楽しみな作品。唯、難在りと思われたこの作品が実写化されるのならば、同様に問題が在りそうな「きりひと讃歌」も実写化して欲しい。やはり“氷河期”に描かれた重苦しい内容の手塚作品だが、自分の好きな作品の一つで在るからだ。
役者としては一つのイメージが出来上がってしまうのも痛し痒しですから、今回の冷血な役を玉木氏がどう演じるか興味深い所です。
隠し子騒動以来パッとしない山田孝之もこれで脱皮かな?
玉木氏、かなりの嵌り役だと思います。「顔立ちから言えば、谷原章介氏も在りかな。」という感じもしたのですが、内面に含まれた“毒”という点で物足りなさが。
今日「20世紀少年」の予告が劇場で流れたんですが、監督の名前を見てちょいと不安になったもんで(苦笑)
初めて読んだ時、驚いたのは、たとえば「ブラックジャック」や「火の鳥」のようなシビアで重いテーマの作品でも、楽屋落ち的なギャグをちらりと挿み込むのが手塚作品の特徴だったのに、「MW」にはそういう部分が一切無かったことです。僕の姉がいみじくも語ったのは
「ヒョウタンツギが出てこない、手塚さんの漫画を読むのは初めて。」
ということでした。
「きりひと賛歌」の実写化、う~ん、無理かなあ。「手塚版白い巨塔」という評価もありますけどね。
れんたろう様はこの作品を御存知でしたか。「奇子」や「一輝まんだら」、「きりひと賛歌」、「シュマリ」、「アドルフに告ぐ」等は、仰る様に楽屋落ち的なギャグが無い作品ですね。手塚作品にそれ程触れていない人達にとって「MW」は、「手塚治虫ってこんな救いの無い、暗い作品も描いていたのか。」と驚きを与えるかもしれません。それだけに自分も、この作品を実写化しようと決断した制作者の英断を評価します。
「きりひと賛歌」、やはり実写化は厳しいですかねえ。まあ色々問題の在る作品では在りますが、個人的には結構好きなのですが。