此の前の日曜日、「シルシルミシルさんデー」で「餃子の王将」を取り上げていた。「そう言えば此の所、餃子の王将行ってないなあ。餃子や天津飯が美味そう。」なんぞと思い乍ら番組を見ていたのだが、手際良く餃子を焼いている場面で、ふっと或る出来事が思い浮んだ。
今からもう30年以上前の話だけれど、メジャーな某つけ麺チェーン店へ行った時の事。開店してから間が無かった様で、店先には開店祝いの花輪が幾つか並んでいた。自分達はカウンター席に座る事になったのだが、其処は厨房が目と鼻の先。料理人が料理を作っている様子を見るのが好きなので、其の時も料理人の一挙手一投足を凝視していた所、餃子の蒸し焼きを担当していた人物に目が吸い寄せられてしまった。30代半ば位の彼は、蒸し焼き用の蓋をチョコチョコ開け閉めしては「もう良いかな?あ・・・未だだ。」、「もうそろそろかな?うーん、未だかあ。」、「もうちょいかな?」等とブツブツ言っていて、挙句に「あ・・・焦げ過ぎだ。」と黒く焦げ付いた餃子をポイとゴミ箱に。「おいおい大丈夫かよ?」と心の中で呟き、引き続き彼が餃子を蒸し焼きし直すのを見ていたら、録画した動画を再生しているかの様に同じ言動をした挙句、又しても黒焦げの餃子が。結局、3度目の蒸し焼きで、何とか“其れなり”の餃子が出来上がった。「開店して間も無いとは言え、客にきちんとした物が出せない状態って、プロとしてどうなの?」と思ったもの。
父親の幼馴染みが中華料理店を始めたという事で、開店から1週間程経った頃に家族で食べに行った事が。「本格的な中華料理を御出しします。」という紙が店内に張られていたので期待していたのだけれど、頼んだ料理は何れも“素人料理”といったレヴェルの味。特にラーメンは「インスタント・ラーメンを其の儘出したのでは?」と勘繰ってしまう程。店を出た時に父親が「悪いけど、彼の味じゃあ駄目だな。」と独り言ちたが、案の定と言うか其の店は半年もしない内に閉店。
此れも矢張り30年以上前だが、静岡に家族旅行で行った際、人通りが余り無い場所に比較的新しい鰻屋を見付けた。昼時だったので、其の店に入って鰻丼を注文。矢鱈と待たされた挙句、出て来た鰻丼が凄かった!ガブリと鰻に噛み付いた所、ガリッと嫌な感触が。「何だ?」と思って断面を見ると、取り除き忘れた骨が何本か。其れだけでは無く、全体が生焼けで、鰻の血が御飯にポタポタ落ちる有り様。とても食べれる代物では無かったのだ。其の旨を店員に伝えたのだが、「あれ~、生焼けでしたか~?済みませんねえ。今から作り直しますよ~。」と“危機感”の全く無い言動。「こりゃあ駄目だ。」と思った父親が「もう良いです。」と言ったので、家族一同はホッとしたもの。
今でも「“素人料理”としか思えない物を平然と出す店」は、残念乍ら在る。当然と言えば当然で、そういった店は時を置かずに潰れるものだが、「開店するのに千万単位の金銭が必要だろうに良くもまあ、あんな素人料理で勝負しようと思ったものだ。金銭を溝に捨てる様な物なのに・・・。」と不思議でならない。
しかし彼の料理は決してうまくはなく、褒めないと機嫌が悪くなるので周囲はおだてざるを得なかったのです。
結局気まぐれ出店計画は実現せず、皆ほっとしました。自分の母親、「あのヤロ、いつ金借りに来るかと心配で夜も寝られなかった!」と本音を^^;(競艇狂いで評判の悪い兄弟だったのです)。
今は「美味い。」と「安い。」だけでは人が集まらない御時勢で、プラスαがないと経営を続けるのは無理。其れなのに、素人料理を平然と出す店が未だ在るのは、本当に理解出来ません。
自身の考えを一方的に捲し立てても、聞く者の立場に立って話をしない限り、中々伝わる物では無い。料理も同様で、「俺が美味いと思うんだから、客が美味いと思わない訳が無い。」といった自分本位さでは駄目でしょうね。