ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ルーズヴェルト・ゲーム」

2012年06月06日 | 書籍関連

*********************************

中堅メーカーの青島製作所の野球部は、嘗ては名門と呼ばれたが、此処の所すっかり成績低迷中。チームを率いていた村野監督は唐突に辞表を提出し、青島製作所とはライヴァル関係に在るミツワ電器の野球部監督に就任。手土産として古巣の青島製作所野球部から、エースと4番打者を引き抜いた上での事だった。

 

主力選手2人を引き抜かれ、創部以来の危機に陥ったチームを、更なる“嵐”が襲う。会社の経営が傾いた事で、大々的にリストラが行われる事になり、「野球部の廃部」が経営陣の間から公然と主張され始めたからだ。

 

そんな中、青島製作所の高い開発力&技術力に目を付けたミツワ電器から、合併の話が持ち掛けられる。企業風土が余りに異なるライヴァル会社からの申し入れを受け、青島製作所の社長・細川充(ほそかわ みつる)は悩み抜いた上、1つの決断を下すが・・・。

*********************************

 

2月に刊行された池井戸潤氏の小説「ルーズヴェルト・ゲーム」は、廃部の危機に陥った社会人野球チームを舞台にして、繰り広げられる人間模様を描いた作品。因みに「ルーズヴェルト・ゲーム」というタイトルは、野球をこよなく愛したフランクリン・ルーズヴェルト大統領が「一番面白い試合は、8対7だ。」と語った事から付けられた様だ。

 

企業がイメージアップを図ろうとする際、「文化」に金を投じるというのは良く在るケース。「スポーツ文化向上に、我が社は此れだけ寄与しています。」とアピールしたいが、社内にアマチュアのスポーツ・チームを設けるケースは良く在る事。そして経営が傾くと、真っ先に其のスポーツ・チームが“切られる”のも、又、良く在る事。

 

果つる底なき」、「M1(エム・ワン)」、「MIST-ミスト」、「鉄の骨」、「下町ロケット」、そして今回の「ルーズヴェルト・ゲーム」と、此れに6冊の池井戸作品を読んで来た訳だが、此の人は「企業小説」、其れも「中小企業を舞台にした小説」を書かせたら本当に上手い銀行員として様々な企業の「光」と「」を見て来たからこそ、リアリティーの在る内容と成り得るのだろう。

 

登場人物其れ其れが、見事にキャラ立ちしている。落魄れた野球部再建の為、大道(だいどう)なる監督が呼ばれるのだが、初登場時の彼は「キャラの濃さ」が可成りの物で、「ストーリーが展開して行く中で、益々濃いキャラを披露するのだろうな。」と想像した。しかし、意外にも彼のキャラは濃くなるどころか、薄くなって行く感じ。最後の最後に登場した或る女性が、キャラの濃さで抜群の存在感を残したのとは対照的

 

*********************************

会社の数字には、ヒトとモノの数字がある。仕入れ単価抑えるといったモノの数字ならいくら減らしてもかまわん。だが、解雇伴うヒトの数字を減らすのなら、経営者としての“イズム”がいる。

 

中略

 

この工場が作ってるのは、カネ儲けのための製品だけじゃない。働く者たちの人生であり、夢もだ。いまこの会社の社員として働くことに、夢があるだろうか。彼らに夢や幸せを与えてやるのもまた経営者の仕事だと思うんだが。

*********************************

 

総合評価は星4つ


コメント    この記事についてブログを書く
« 10位に入ったのは超意外な曲 | トップ | 北海道と長崎県では、人口の... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。