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喜寿を迎えた“ばあば”・中前スズエ(冨士眞奈美さん)と暮らす智志(内田裕也氏)夫妻と弱虫な小学生の息子・翼(寺田心君)。翼はばあばの事が大好きで、学校で虐められても、ばあばが助けてくれた。然し或る日、ばあばが急変する。突然怒り出したり、大切にしていた庭の植物を枯らしたりしたのだ。認知症と判り、翼はばあばと距離を置き始める。そんな時、ばあばが突然行方不明になり、智志の妹達も駆け付けるのだが・・・。
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楠章子さんの絵本「ばあばは、だいじょうぶ」が原作の映画「ばあばは、だいじょうぶ」。特に期待もせず、観に行ったのだが・・・。
3年前、「昔はこんなにも・・・」という記事を書いた。「昔はこんなにも美しかった。」という女性有名人を列挙したのだが、自分の中で「“昔の見た目”と“今の見た目”のギャップを最も感じる女性有名人。」となると、冨士眞奈美さんが挙げる。こんな言い方をしては失礼だろうが、デビューした頃の冨士さんは絶世の美女だが、今は・・・。
9年前の記事「介護」で書いた様に、父方の祖父は認知症を罹患した。又、非常に世話になった親戚の1人が、認知症に罹患し、少しづつ記憶を失って行っている。だから、認知症は自分にとって、決して遠い存在では無い。
認知症を罹患し、“昨日迄の自分”と変わって行ってしまう事を恐れたり、何でも無い事に対し、突然起こり出したり、出来ていた事がどんどん出来なくなって行ったりするスズエ。皺だらけの素っぴんや足、毛髪量の少ないざんばら髪等、“老いた姿”を曝け出し、迫真の演技を見せる冨士さんの姿が凄い!
「TVドラマ『おくさまは18歳』での渋沢民子役や『細うで繁盛記』原田正子役等、強烈な印象を残す脇役を過去に多く演じて来た彼女。」だが、「主役としては今回の作品が、彼女の代表作になるだろう。」と思わせる内容だった。
又、大好きなばあばがどんどん変わって行ってしまう事に、戸惑いと恐れを感じ、距離を置き始める寺田心君の演技が秀逸!表情、特に目の使い方が素晴らしく、彼が“スズエが隠していたメモ”を見付け、1つ1つ読む場面は、もう涙が止まらなかった。
話が終わりに近付くに連れて、場内の彼方此方から啜り泣きが聞こえて来た。「エンド・ロールが終わる迄、誰一人席を立たなかった。」というのも、久し振りの経験だ。良い作品を観させて貰った。
総合評価は、星4.5個とする。