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私は真尋、不破真尋(ふわ まひろ)。会社の飲み会の後、深夜に出会った“彼女”は、何処か翳の在る、優しくて有能な女性だった。辛い過去に囚われて苦しむ真尋は、密かに彼女の様になりたいと願うが、次々と不可解な出来事に巻き込まれ、追い詰められた末に、人を殺めてしまう。其処に彼女から、或る提案が為され・・・。
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第9回(2010年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で、最終候補に残った小説「ハナカマキリの祈り」(著者:美輪和音さん)。辛い過去を持ち、男性不信になっている不破真尋の前に或る日、矢向いづみ(やこう いづみ)という女性が現れる。何処かに翳が在るものの、自分の身を常に案じてくれる上、優しくて有能という事から、真尋は「いづみの様になりたい。」と願う様になるのだが、以降、真尋の周りでは、不可解な出来事が次々と起こる様に。
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「ハナカマキリ。胡蝶蘭にそっくりな姿のカマキリで、葉っぱの上にいると、本当にそこに花が咲いているみたいに見えるのよ。」。(中略)「ハナカマキリはね、花に化けることで自分を狙う捕食者から身を守ると同時に、花だと勘違いして寄ってくる虫を食べることができるってわけ。」。
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ハナカマキリの特徴、そして「完全変態」と「不完全変態」、「寄生」という概念を、上手く取り込んだ作品だ。又、複雑な関係性に頭がこんがらがるけれど、人間関係が明らかになって行く事で、「そういう事か。」という驚きも。
範疇で言えば“イヤミス”で、読み終えて残るのは不快さと不条理さ。ホラー映画に良く見受けられる結末は、個人的に好きでは無い。非現実的で、突っ込みを入れたくなる箇所も幾つか在った。
総合評価は星3つ。