現役の最後はジャイアンツで終えて欲しかったけれど・・・

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「松井が引退表明！ＮＹで会見『プロ野球人生に区切りを付けたい。』」（１２月２８日、スポニチ）

 

レイズからＦＡとなっていた松井秀喜外野手（３８歳）が２７日（日本時間２８日）、ニューヨーク市内で会見し、「本日を以ちまして、２０年間に及ぶプロ野球人生に区切りを付けたい。」と語り、現役引退を表明した。日米通算５０７本塁打、平成最強のスラッガーは日米通算２０年間のプロ生活に終止符を打ち、バットを置く事を決断した。

 

松井は引退を決めた理由に付いて「今季はチャンスを貰い乍ら結果が振るわなかった。」と説明。「命懸けでプレーし、メジャーという場で力を発揮するという気持ちで１０年間遣って来たが、結果が出なくなったという事で命懸けのプレーも終わりを迎えた。」と話した。

 

１９９２年夏の甲子園、星稜の４番だった松井は明徳義塾戦で５打席連続敬遠（動画）され、伝説となった。巨人では１０年間プレー、本塁打王に３度輝き、ＭＶＰも３回受賞。２００２年オフにＦＡ宣言し、２００３年ヤンキース入り。２００９年ワールド・シリーズでは日本選手初のＭＶＰを獲得する等活躍した。２０１０年はエンゼルス、２０１１年はアスレチックスでプレーし、メジャー１０年目の今季はシーズン途中でレイズとマイナー契約を結び、メジャー昇格を果たしたものの、３４試合で打率．１４７、２本塁打、７打点に終わり、７月２５日に戦力外通告を受けた。

 

其の後、代理人を務めるアーン・テレム氏がメジャー各球団との交渉を行って来たが、正式なオファーは届いておらず、来季の所属球団は決まらない儘。古巣・巨人を筆頭に国内球団からのラヴ・コールは在ったものの、松井自身は日本球界復帰では無く、引退を決断した。

 

嘗て松井は引き際に付いて「要らないと言われれば、其れ迄。悔いは無い。出来る限りの事を遣って来た積り。」と語っており、前日（２７日）には父・昌雄さんも「日本で１０年、メジャーで１０年プレーした。幸いワールド・シリーズも優勝出来ましたし、そういう夢は到達出来た。（引退は）選択肢の１つ。私自身は驚かない。」と話していた。

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生きとし生ける物、全てが老いるのは節理。此の日が訪れる事を覚悟してはいたけれど、現実として松井選手の引退表明に触れると、堪らなく寂しい。

 

自分が野球に興味を持ったのも、そしてジャイアンツというチームが好きになったのも、其の切っ掛けは「王貞治」という選手が存在したから。「選手」としても大好きだったし、何よりも「１人の人間」として大好き。其れ以降、球界には数多の選手がデビューしたが、王さん程に大好きになった選手は１人だけ。其の１人が松井選手で、だからこそ彼の背番号「５５」に因んで、自分は「ｇｉａｎｔｓ－５５」を名乗っている程。

 

松井選手の思い出は、枚挙に遑が無い。プロ入り前で言えば、上記の「５打席連続敬遠」が、そしてプロ入り後だと「プロとして２打席目に、高津臣吾投手から放った初本塁打。」（１９９３年）や「史上８人目のシーズン５０本塁打達成。」（２００２年）等が忘れられないが、何と言っても一番印象に残っているのは「本塁打を放ってベースを一周した松井選手を、ベンチ前にて満面の笑顔で迎える長嶋茂雄監督の姿。」だ。「長嶋監督から抱擁される松井選手」という場面も在ったと思うが、長嶋監督のみならず松井選手も、常に満面の笑顔だった。

 

１９９２年のドラフト会議では、４球団が松井選手を１位指名。籤引きの結果、ジャイアンツが交渉権を獲得したのだけれど、引き当てた長嶋監督が嬉しそうにサム・アップ・ポーズを取ったのが、つい最近の事の様に思う。

 

【松井選手の交渉権を獲得した際の長嶋茂雄監督】

 

松井選手の類い稀なる才能に惚れ込んだ長嶋監督は、「徹底的に鍛え上げ、千日間で彼を球界屈指の４番打者に育て上げる。」という、所謂「千日構想」を口にし、実際にマンツーマンで鍛え上げていた。練習施設のみならず、長嶋邸の地下に在る「バット・スイング室」にもしばしば呼ばれていたとも聞く。其の甲斐在って、松井選手は球界を代表する大スターに。

 

松井秀喜選手と長嶋茂雄氏の関係は、良い意味で“親子”の様に感じている。長嶋氏の事を語る松井選手、又は松井選手の事を語る長嶋氏、共に嬉しそうな表情だし、実際問題、監督の座を退いて以降も、長嶋氏は折に触れて松井選手にアドヴァイスを送っていたし。

 

昨日行われた引退会見で「野球人生で、一番思い出のシーンは？」と問われた松井選手は、「矢張り、長嶋監督と２人で素振りした時間が、一番印象に残っているかもしれない。」と答えていた。他の質問でも長嶋監督に付いて答える等、２人の強い結び付きを改めて認識させられ、涙が止まらなかった。

 

ジャイアンツ・ファンの知人が以前言っていたのだが、「清原和博選手と松井選手が共にジャイアンツに在籍していた間（１９９７年～２００２年）、ジャイアンツは松井選手よりも清原選手の方に気を遣い過ぎた。松井選手の方が軽んじられている様な感も在り、チームは“悪い意味で”清原色に染まって行き、結果として松井選手がチームから離れる方向に行ってしまった気がする。選手としてだけでは無く、人間としても超一流だった松井選手がチームを離れた事で、ジャイアンツは妙な方向に向かってしまい、再建に長い時間を費やす事になってしまった。」と。自分も全く同感で、「松井選手がずっとジャイアンツに在籍し続けていたならば・・・。」と何度思った事か。

 

ジャイアンツに在籍した１０年間で、総本塁打数は３３２本。１年平均で３３．２本のペース。一方、メジャーに在籍した１０年間では１７５本で、１年平均で１７．５本。年齢や環境の違い等が在るので一概には言えないけれど、日本球界に留まっていたならば、通算本塁打数は７００本近く行っていたのではなかろうか。死んだ子の年を数えても詮無いが・・・。

 

「無事之名馬」と言うけれど、怪我に滅法強かった松井選手が、守備時に左手首を骨折して残り試合を棒に振る事となった２００２年は、彼にとって分岐点だったと思う。其れ以降、下半身を中心に故障が目立つ様になったので。

 

今年のエイプリルフールの日、「松井秀喜選手のジャイアンツ復帰が決定！」という“嘘記事”を書いた。「遠くない将来に、彼の引退が訪れるだろう。」と思っていたからこそ、「現役の最後は、ジャイアンツで終えて欲しい。」と念願していたからだが、其の思いは叶わない儘に。

 

「日本球界への復帰」という道を選ばなかった事に付いて、「ファンの方は『１０年前の姿を見たい。』と期待してくれると思うが、其の姿に戻れる自信を強くは持てなかった。」と口にした松井選手。其の思いに嘘は無いだろうけれど、仮にジャイアンツに復帰したとしても、「十二分に活躍出来ないだろう自分が戻っても、首脳陣や後輩選手達に余計な気を遣わせてしまうだけ。阿部慎之助選手を軸にして、１つに纏まっているチームの和を乱したくない。」という思いも強かったのではないだろうか。松井選手は、其処迄の気遣いをしてしまう人間だから。

 

ワールド・シリーズでＭＶＰを獲得する等、メジャーでも活躍した松井選手。今後の予定は未定だろうけれど、一日も早く日本に帰国して、ジャイアンツ主催で引退セレモニーを行って欲しい。彼程の大選手が、記者会見だけで終わりというのは、余りに寂し過ぎるから。

 

そして、「出来るだけ早い時期に、彼がジャイアンツの監督に就任する。」というのが、自分の夢。ジャイアンツのユニフォーム、其れも背番号５５のユニフォームを着た彼が、東京ドームで采配を振る日を早く見たい。

 

“ゴジラ”、２０年間の現役生活、本当に御疲れ様でした。