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“歩く一人諜報組織”=“クルス機関”の異名を取る神奈川県警外事課の来栖惟臣(くるす これおみ)は、「日本に潜入している北朝鮮の工作員が、大規模テロを企てている。」という情報を得る。一方、其の頃、北の関係者と目される者達が、口封じに次々と暗殺されていた。暗殺者の名は、呉宗秀(オ・ジョンス)。日本社会に溶け込み、冷酷に殺戮を重ねる宗秀で在ったが、彼の下に謎の女子高生が現れてから、歯車が狂い始める。
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第15回(2016年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の優秀賞を受賞した小説「県警外事課 クルス機関」(著者:柏木伸介氏)。範疇で言えば、 公安警察物という事になる。
「在日韓国・朝鮮人に対し、排他的な言動を続ける組織。」、「自虐史観の否定&日本至上主義を訴え、戦前の日本を矢鱈と美化する文化人や政治家達。」、「次々と狼藉を働く北朝鮮。」等々、現代日本に大きな影響を及ぼしている“病巣”が取り上げられ、又、登場人物達のキャラクター設定が確立されている事からも、面白い内容だとは思う。
然し、筆致力の弱さは否定し難く、正直読み辛さを感じる所が在る。どんでん返しも想定内の範疇だし、優秀な工作員の筈の呉宗秀としては、脇が甘い言動の多さが現実感を薄れさせている。展開としては悪く無かったのに、結末が駄目過ぎ。「こんな感じなの!?」というがっかり感だけが残った。
総合評価は、星2.5個とする。