「王様のブランチ」内の「ブック・コーナー」を始めとして、多くのメディアで推奨されていた小説「教場」(著者:長岡弘樹氏)。「教場」は「きょうじょう」と読み、「教室」を意味する用語だが、此の小説では警察官を養成する「警察学校」を指している。
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君には、警察学校を辞めて貰う。
此の教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。
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「教場」の帯に記された惹句だ。小説に登場するのは「警察官の卵達」と「教官達」で、こう書くと「スポ根的な内容」をイメージされる方も居られるだろう。「其のイメージ、部分的には当たっているかもしれないが、全体的に言えば、全く違う。」と言わざるを得ない。
「警察学校とは何か?」と問われ、警察官の卵の1人が「篩」と答えるシーンが在る。「警察官としての資質に欠ける学生を、早い段階で弾き出す為の篩。」という意味だが、此れはオブラートに包んだ表現で、「教場」を読み終えて自分が感じたのは、「在りと在らゆる悪意を用いた篩。」だった。登場する警察官の卵達&教官達からは、其れ程迄に強烈な悪意が放出されている。悪意の根幹に在るのは、嫉妬や虚栄心、恨み等々、人間が持つ「負の要素」。
「こんな爽快な読後の悪さは初めてだ!」と此の作品を評している方が居たけれど、「むかむかする様な不快感」は十二分に感じた。知り合いに警察関係者は居ないし、警察学校の内情も知らない。だから、「教場」で描かれた警察学校の様子が、実際の警察学校と大差無いのかどうかは判る由も無いけれど、元警察関係者が警察の内情を暴露した本等を読むと、「当たらずと雖も遠からず。」という気がする。
善く善く考えてみれば、企業等他の世界でも、足の引っ張り合い等、悪意が満ちている。警察の世界だって所詮は「人間社会」なのだから、悪意が満ちていてもおかしくは無いのだけれど、「正義の味方」という観点からすると、「警察学校で、こんな酷い事が・・・。」と衝撃度も増してしまうのだろう。
「パトカーの乗務員になるには、検定を受けて合格しなければいけない。検定は1級から4級迄在り、サイレンを鳴らしてパトライトを点灯させて走る、所謂『緊急走行』をするには、2級以上の検定に合格しなければならない。」とか、「警察学校では、提出する日記ですら“嘘の表記”は許されない。」とか、知らなかった話が天こ盛り。異業種の人間からすると、「此処迄心身共に締め付けられると、頭がおかしくなりそう。」と感じてしまう。
「全てが伏線。一行も読み逃すな。」と帯の惹句に記されていたけれど、此れは当たっている。「こんなにも伏線が敷かれていたのか・・・。」と、感心してしまうレヴェルだ。
「面白い。」というのでは無く、「怖い物見たさで読み進めてしまう。」というのが正しいのだろうが、でも、多くのメディアが激賞する程の内容には思えなかった。総合評価は、星3つ。