1965年~1973年迄の連続9年間、ジャイアンツはリーグ優勝&日本一達成を成し遂げた。この所謂「V9」の記憶、自分は皆無に等しい。V9に纏る書籍や映像を折に触れて読んで(見て)来たので、それなりのイメージは持っていたのだが・・・。
「全1192試合 V9巨人のデータ分析」は、従来のV9関連本には無い切り口の本。当時のジャイアンツ関係者や対戦相手達が「V9とは何だったのか?」に付いて、その戦術や印象を記して来た本はこれ迄にも多く出版されて来たが、この本は著者の小野俊哉氏が「V9時代のジャイアンツの全1,192試合」と「2004年~2008年迄の各年で最高勝率だった両リーグ10チームの1,406試合」を徹底分析&比較し、「勝利の為の普遍法則」を導き出しているのが斬新。著者も書いているが、「年度別の成績が記された本は存在したけれど、その内容を詳細に分析した本は無かった。」からだ。当時はスコアラーが算盤を用い、手計算で記録を集計していた時代で、スコアを電子化したり、コンピューターでデータ解析する事が出来た時代では無かったのだから、データ分析に限界が在ったのは致し方無い事。V9時代の全1,192試合の諸データを一つ一つ入力し、徹底分析&評価した小野氏の執念には感服するばかりだ。
先ず「V9の9年間を振り返る」という章で、各年のジャイアンツの状態が簡単に紹介されているのだが、必ずしも毎年独走状態に在った訳では無かったのが興味深い。V9の最終年で在る1973年のジャイアンツが青息吐息状態でゴールしたのは知っていたが、V4を達成した1968年等、その他にも苦しい中で日本一を達成し年が在ったというのは意外だった。
とは言え、V9の9年間で「2位と10ゲーム差以上での優勝」が3シーズン、9年の平均では約7ゲーム差の開きが在ったというのだから、当時のジャイアンツが無敵の強さだったとは言えるだろう。全1,192試合を闘った1,126日の内、1位だった日数は全体の70.2%。特にV8迄の8年間は、7月以降で見るとジャイアンツの1位だった日数は全体の98.7%だったとか。
*************************************
「V9時代9年間のセ・リーグ各チームの勝率、勝敗数、貯金、ゲーム差」
勝率順位
1位 ジャイアンツ
703勝449敗40引き分け
勝率:.610
貯金:254
ゲーム差:―
2位 タイガース
614勝537敗43引き分け
勝率:.533
貯金:77
ゲーム差:88.5
3位 ドラゴンズ
585勝566敗39引き分け
勝率:.508
貯金:19
ゲーム差:29.0
4位 ホエールズ
546勝600敗42引き分け
勝率:.476
貯金:-54
ゲーム差:36.5
5位 カープ
521勝628敗49引き分け
勝率:.453
貯金:-107
ゲーム差:26.5
6位 スワローズ
483勝672敗39引き分け
勝率:.418
貯金:-189
ゲーム差:41.0
*************************************
V9というと、どうしてもONの存在ばかりに目が行き勝ちだが、様々な分析結果から見えて来るのは「川上哲治監督の想像していた以上に緻密な戦略と非情さ。」*1、そして「監督の戦略に合った(合わせた)選手達の存在。」に在ったのが判る。
例えば9年分の投手27タイトルで言えば、ジャイアンツの選手が獲得したのは5個に対して、タイガースは15個と大きくリードしているが、タイトルには手が届かなかったものの、“脇役として”チームの勝利に貢献した投手がジャイアンツには多かった事が、様々なデータから浮かび上がって来る。
当時のセ・リーグ9年間の総盗塁数は3,977個だそうだが、その内ジャイアンツは1,009個とリーグの4分の1以上を占めており、「走るチーム」だったというのも面白い。
小野氏が見出した「勝利の為の普遍法則」だが、それは「初回を終えた(1回裏を終えた)時点でのリード」に在ると言う。V9時代のジャイアンツが初回終えた時点でリードしていた試合の勝率は、何と.777(269勝77敗3引き分け、貯金192)と7割を超えているのだ。この法則はV9時代のジャイアンツにのみ当て嵌まる訳では無く、2004年~2008年迄の5年間で最高勝率だった両リーグ10チームを見た場合でも、初回を終えた時点でリードしていた試合の勝率は.774とV9時代のジャイアンツとほぼ等しい結果になっている。*2
「打順が『ON』の場合と『NO』の場合では、どっちが勝率が高いか?」、「V9時代、ジャイアンツ戦打率が.302の川藤幸三選手はV9キラーだった。」、「V9時代、最強の5番打者は?」、「川上ジャイアンツと原ジャイアンツん類似性。」、「意外に多くなかったV9時代のバント。」等々、意外な事実がデータによって証明されている。
“印象”では無く、“数字”によって裏打ちされた評価がずらっと並んでおり、ジャイアンツ・ファンのみならず、他チームのファンの興味をも惹く内容だと思う。実に面白かった。
*1 戦術や選手の査定、トレーニング、栄養管理から情報収集等々、プロ野球の近代化の端緒が“川上流”に在ったと言える。
*2 2004年~2008年の両リーグの“全試合”に於いて、初回を終えた時点でリードしていたチームの勝率は.713と、やはり7割を超えている。
「全1192試合 V9巨人のデータ分析」は、従来のV9関連本には無い切り口の本。当時のジャイアンツ関係者や対戦相手達が「V9とは何だったのか?」に付いて、その戦術や印象を記して来た本はこれ迄にも多く出版されて来たが、この本は著者の小野俊哉氏が「V9時代のジャイアンツの全1,192試合」と「2004年~2008年迄の各年で最高勝率だった両リーグ10チームの1,406試合」を徹底分析&比較し、「勝利の為の普遍法則」を導き出しているのが斬新。著者も書いているが、「年度別の成績が記された本は存在したけれど、その内容を詳細に分析した本は無かった。」からだ。当時はスコアラーが算盤を用い、手計算で記録を集計していた時代で、スコアを電子化したり、コンピューターでデータ解析する事が出来た時代では無かったのだから、データ分析に限界が在ったのは致し方無い事。V9時代の全1,192試合の諸データを一つ一つ入力し、徹底分析&評価した小野氏の執念には感服するばかりだ。
先ず「V9の9年間を振り返る」という章で、各年のジャイアンツの状態が簡単に紹介されているのだが、必ずしも毎年独走状態に在った訳では無かったのが興味深い。V9の最終年で在る1973年のジャイアンツが青息吐息状態でゴールしたのは知っていたが、V4を達成した1968年等、その他にも苦しい中で日本一を達成し年が在ったというのは意外だった。
とは言え、V9の9年間で「2位と10ゲーム差以上での優勝」が3シーズン、9年の平均では約7ゲーム差の開きが在ったというのだから、当時のジャイアンツが無敵の強さだったとは言えるだろう。全1,192試合を闘った1,126日の内、1位だった日数は全体の70.2%。特にV8迄の8年間は、7月以降で見るとジャイアンツの1位だった日数は全体の98.7%だったとか。
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「V9時代9年間のセ・リーグ各チームの勝率、勝敗数、貯金、ゲーム差」
勝率順位
1位 ジャイアンツ
703勝449敗40引き分け
勝率:.610
貯金:254
ゲーム差:―
2位 タイガース
614勝537敗43引き分け
勝率:.533
貯金:77
ゲーム差:88.5
3位 ドラゴンズ
585勝566敗39引き分け
勝率:.508
貯金:19
ゲーム差:29.0
4位 ホエールズ
546勝600敗42引き分け
勝率:.476
貯金:-54
ゲーム差:36.5
5位 カープ
521勝628敗49引き分け
勝率:.453
貯金:-107
ゲーム差:26.5
6位 スワローズ
483勝672敗39引き分け
勝率:.418
貯金:-189
ゲーム差:41.0
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V9というと、どうしてもONの存在ばかりに目が行き勝ちだが、様々な分析結果から見えて来るのは「川上哲治監督の想像していた以上に緻密な戦略と非情さ。」*1、そして「監督の戦略に合った(合わせた)選手達の存在。」に在ったのが判る。
例えば9年分の投手27タイトルで言えば、ジャイアンツの選手が獲得したのは5個に対して、タイガースは15個と大きくリードしているが、タイトルには手が届かなかったものの、“脇役として”チームの勝利に貢献した投手がジャイアンツには多かった事が、様々なデータから浮かび上がって来る。
当時のセ・リーグ9年間の総盗塁数は3,977個だそうだが、その内ジャイアンツは1,009個とリーグの4分の1以上を占めており、「走るチーム」だったというのも面白い。
小野氏が見出した「勝利の為の普遍法則」だが、それは「初回を終えた(1回裏を終えた)時点でのリード」に在ると言う。V9時代のジャイアンツが初回終えた時点でリードしていた試合の勝率は、何と.777(269勝77敗3引き分け、貯金192)と7割を超えているのだ。この法則はV9時代のジャイアンツにのみ当て嵌まる訳では無く、2004年~2008年迄の5年間で最高勝率だった両リーグ10チームを見た場合でも、初回を終えた時点でリードしていた試合の勝率は.774とV9時代のジャイアンツとほぼ等しい結果になっている。*2
「打順が『ON』の場合と『NO』の場合では、どっちが勝率が高いか?」、「V9時代、ジャイアンツ戦打率が.302の川藤幸三選手はV9キラーだった。」、「V9時代、最強の5番打者は?」、「川上ジャイアンツと原ジャイアンツん類似性。」、「意外に多くなかったV9時代のバント。」等々、意外な事実がデータによって証明されている。
“印象”では無く、“数字”によって裏打ちされた評価がずらっと並んでおり、ジャイアンツ・ファンのみならず、他チームのファンの興味をも惹く内容だと思う。実に面白かった。
*1 戦術や選手の査定、トレーニング、栄養管理から情報収集等々、プロ野球の近代化の端緒が“川上流”に在ったと言える。
*2 2004年~2008年の両リーグの“全試合”に於いて、初回を終えた時点でリードしていたチームの勝率は.713と、やはり7割を超えている。
でも1,009個の盗塁の内、半分近くは柴田勲のような気がしますね。
この本はV9野球を「攻・走・守」等、あらゆる面から数字で浮かび上がらせた、非常に面白い内容でした。
V9時代のジャイアンツは1&2番打者だけで537盗塁と、つまり総盗塁数の半分以上をこの打順で叩き出しているそうです。この打順の盗塁レシオ(「出塁数÷盗塁」で算出され、「1盗塁するのにどの位の出塁を要するか?」の指標となる。)は6.07で、対戦した相手チームの19.76と比べると、3倍以上の数値となり、多くの人が持っているで在ろうV9野球のイメージとは異なる、「足を絡めた攻撃」というイメージは驚きでした。
柴田勲氏はV9時代に344盗塁を決めており、総盗塁数の約3分の1を占めていた事になります。この内の80.5%に当たる277盗塁を1&2番打者で決めており(彼はONの現役時代に於いて、この両者が共にスタメン出場し乍ら、彼等を抑えて4番を務めた唯一の打者としても有名。)、この打順での盗塁レシオは3.74。因みにやはりV9時代の1&2番打者のイメージが強い高田繁氏の1&2番打者としての盗塁レシオは7.13と、柴田氏の2倍近い数値だとか。柴田氏の盗塁成功率の高さが感じられますね。