ミステリー好きならば、“シャーロック・ホームズ”の事を知らない人は先ず居ないだろう。「医師で在る友人のジョン・H・ワトスンを同行し、驚異的な推理力で難事件を、次から次へと解決する名探偵。」、其れがシャーロック・ホームズだ。
「ワトスン自身は推理力が乏しいけれど、“傍に居る人間の推理力を飛躍的に向上させる能力”を持った人間だった。其の事に気付いていたからこそ、ホームズはワトスンを捜査に同行させていたのだ。」という発想で書かれた小説が、今回読んだ「ワトソン力」(著者:大山誠一郎氏)。
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目立った手柄も無いのに、何故か警視庁捜査1課に所属する和戸宋志(わと そうじ)。行く先々で起きる難事件は何時も、居合わせた人々が真相を解き明かす。其れは、和戸が謎に直面すると、傍に居る人間の推理力を飛躍的に向上させる特殊能力、「ワトソン力」の御蔭だった。殺人現場に残されたダイイング・メッセージ、雪の日の不可能犯罪、バスジャックされたバス内の死体・・・。今日も和戸を差し置いて、各人各様の推理が披露されて行く。
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「2020週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の8位に選ばれた此の作品、7つの短編小説から構成されている。“ワトソン力”という発想は面白いと思うが、謎解きという面で言えば、全体的に“物足り無さ”を感じてしまった。「奇抜なトリックに走り過ぎてしまった事で、現実味という部分が置き去りにされてしまった。」という思いが在る。「探偵台本」という作品は面白かったが・・・。
総合評価は、星3つとする。