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バブル崩壊から4年後の1995年、代官山で発生した「カフェ店員殺人事件」。直後、被疑者となったカメラマンは変死。警察は「“恋人”のカフェ店員を殺害した彼が、『もう逃げ切れない。』と考えて自殺した。」と判断し、此の事件は解決したと思われたのだが・・・。
其れから17年後の2012年、川崎で1人の女性が殺害された。現場から採取されたDNAが、代官山の遺留DNAの1つと一致した事で、「カフェ店員殺人事件」の真犯人は別人という可能性が濃厚に。
公訴時効の撤廃により、再捜査の対象となった代官山の事件。「『17年前の事件の真犯人を逃して、2度目の犯行を許してしまった。』となると、警視庁の面目は丸潰れだ。」。斯くして警視庁・特命捜査対策室の水戸部(みとべ)に極秘命令が下された。「神奈川県警に先んじて、事件の真犯人を確保せよ!」。
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佐々木譲氏の小説「代官山コールドケース」は「特命捜査対策室シリーズ」の第2弾で、昨年刊行された「地層捜査」が第1弾となっている。共に「公訴時効の撤廃を受け、再捜査する事になった事件。」を取り扱っており、「コールド・ケース」とは「迷宮入りした凶悪犯罪」を指す。
「『カフェ店員殺人事件』が発生した際、警察で総指揮を執っていた人間が、今や御偉いさん。川崎の事件の真犯人が17年前の真犯人でも在ったなんて事になれば、其の御偉いさんの経歴に傷を付けてしまうし、何よりも警視庁と“犬猿の仲”で在る神奈川県警が、鬼の首を取った様に警視庁の失態を責め立てて来るに違い無い。そういった事態は、断じて防がなければならない。」という実に“内向きな理由”から、水戸部は極秘捜査を命じられる訳だが、極秘捜査という縛りが在る故に、捜査対象者のみならず、警察内部の人間への“駆け引き”には面白さが在った。
又、バブル景気の“残り香”が未だ漂っていた1995年という「時代」の描写、特に代官山近辺の情景描写には、「そうだったなあ・・・。」と懐かしさを感じたりも。
残念なのは、全体的に“流れ”がスローモーに感じた事。“実際に経過した時間”で言えば、「極秘命令を受けてから早い段階での解決。」という事になるのだけれど、文章のテンポの悪さからなのか、焦れったさが在って、何度か読むのを中断した程。水戸部とタッグを組む“女性捜査官”も、其のキャラクター設定は悪くないのに、キャラ立ちしているとは言い難かった。
佐々木作品にしては、今一つ光る物が無い。総合評価は、星3つとする。