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・死神から与えられた余命15秒をどう使えば、私は自分を撃った犯人を告発し、且つ反撃が出来るのか?一風変わった被害者と犯人の攻防。(「十五秒」)
・犯人当てドラマの最終回、目を離していたラスト15秒で登場人物が急死した。一体何が起こったのか?姉からクイズ形式で挑まれた弟の推理は?(「このあと衝撃の結末が」)
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「2022本格ミステリ・ベスト10【国内編】」の10位に選ばれた小説「あと十五秒で死ぬ」(著者:榊林銘氏)を読了。4つの短編小説から構成されている此の本は、少し変わった経緯で上梓されている。
榊林銘氏が会社員だった2015年、応募した小説「十五秒」が第12回「ミステリーズ!新人賞」の佳作に選ばれる。「文学賞を受賞してから間も無い頃、“鮮度”が落ちない内に(他に作品を書き上げる等して)本として上梓する。」というのが出版社の鉄則と思うのだが、「あと十五秒で死ぬ」が上梓されたのは6年後の昨年。「十五秒」以外に収録された他の3作品の内、1作品は2020年に雑誌に掲載された物で、残り2作品は上梓の為に書下ろしされた物。文学賞受賞した作品が、こんなにも長い間経ってから上梓されるというのは、結構珍しいと思う。
で、「あと十五秒で死ぬ」は、全4作品が「後15秒で死ぬ。」という設定で貫かれている。同じ設定では在るのだけれど、「奇抜だな。」と感じたのは受賞作の「十五秒」よりも、「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」という作品。
「或る島の住人は皆、首が簡単に取れてしまう。でも、直ぐには死なない。自分、又は他人の胴体に“15秒以内に”継ぎ合わせれば(乗せれば)、全く問題無く“復活”する。でも、15秒以内に継ぎ合わせられなければ、其の人物は死んでしまう。」という設定を思い付いたのが凄い!
首を何者かによって落とされてしまった少年が、犯人捜しをするのだけれど、当然首を落とされた状態で15秒過ぎてしまったら、其の儘死んでしまう。だから、他人と自分の首を交互に、15秒以内に胴体に継ぎ合わせ乍ら推理をして行く。「男女間、又は、満年齢が1歳以上離れた者同士の首の継ぎ合わせは拒絶反応が出てしまい、不可能で在る。」という“縛り”も設けられているので、彼は同級生の2人と交互に、15秒以内に首を胴体に継ぎ合わせる。こう書くと何ともグロテスクな感じがするけれど、描写が丸で“ラグビー・ボールのパスし合い”の様で笑ってしまう。
「1人だけ、他の人達とは全く別方向を向いていた。」事の理由は、直ぐに判った。でも、後は意外な真実揃いで、「そういう事だったのか!」という驚きが。現実的な設定では全く無いけれど、謎解きの醍醐味は味わえる。
「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件総」は悪く無いが、他の3作品は凡庸。合評価は、星3つとする。