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「働かない蟻は長生き 琉大・辻教授等研究チーム発見」(9月18日、琉球新報)
琉球大学農学部の辻和希(本名・辻瑞樹)教授と日本学術振興会の土畑重人特別研究員の研究チームは此の程、働き蟻よりも、働き蟻の労働に只乗りする、働かない蟻の生存率の方が高い事を突き止めた。「個々が社会の目標より自分の目標を優先してしまう事で、社会を作る事が出来なくなる。」という、人間社会でも見られる「公共財ジレンマ」の実例を、人間と微生物以外で初めて発見した。研究成果は「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」(オンライン版)に掲載される。
辻教授は「此の研究成果は、人間が何故助け合うのかを理解するのにも役立つ。」と強調した。
「公共財ジレンマ」とは、「協力して社会を作れば、最終的な利益が大きいにも拘らず、他者よりも大きな利益を得る為に、他者の働きに只乗りするという事態が起こり、社会を作る事が出来ない事。」を指す。
研究チームが網目蟻を使い実験した所、労働せずに産卵許り行う蟻が交じっている事を発見し、其れ等は働き蟻とは遺伝的に異なる系統に属する事を確認した。働かない蟻は、働き蟻による助け合いの利益に只乗りしている。
研究によると、働き蟻は働かない蟻の分迄、巣の外に出て労働する為「過労死」し、生存率が下がる。働かない蟻は働き蟻よりも多く子供を産むが、其の子供は親と同様に働かない。だが、働かない蟻のみの社会では、子孫を残す事は出来ないと言う。
「自由競争の下では、相手からの助けに只乗りし、利益を得た方が得で在るにも拘らず、助け合いの社会が発生する事。」に付いて辻教授は、自然科学と社会科学の両分野で重要なテーマと指摘。「蟻社会に於て、助け合いが何故生じるかを理解する事が、人社会の助け合いをより深く理解する事に繋がる。」と研究の意義を強調した。
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昔、講義で「パレートの法則」というのを習った。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が提唱した物で、「経済に於て、全体の数値の大部分は、全体を構成する内の一部の要素が生み出している。」という考え。此方に様々な例が紹介されているが、近年では“本来とは全く異なった意味合い”で「パレートの法則」という用語が使われる事が多く、所謂「80:20の法則」も其の1つ。
巷間良く使われる「80:20の法則」とは、「法則」と言うよりも「経験則」と言った方が正しく、「社会を構成する要素の中で、全体の80%は重要だが、残り20%は重要では無い。」といった意味で用いられている。会社組織に当て嵌められる事が在るし、以前読んだ本では「働き蟻の社会」も同様と記されていた。即ち「働き蟻の社会は、全体の20%が必死で働き、60%は適度に働く。そして、残りの20%は全く働かない。」と。本当かどうかは判らないけれど、「何となく判るなあ。」と感じたものだった。
今回の研究結果により、「働き蟻の社会にも、其の割合は不明なれど、働かない蟻が居る。」というのは事実の様だ。他者の働きに只乗りするという要領の良い奴は、何処の世界にも居るという事か。
結局は自由であろうとすることに縛られる不自由だったりするのかな??なんて思うのです。
こういった件って、行き着く所は「権利」と「義務」という点にリンクして来るんじゃないかなあって気がするんです。「自由で在りたい。」というのは誰しも思う事だろうし、自分も全く同感。でも、「社会」という組織で生きて行く為には、1人では生きて行くのが困難。そうなると、誰かの助けを得なければいけない訳で、当人が“出来得る限り”(此れがポイントだと思うのですが。)の義務を負わないといけないというのが在る。「権利」と「義務」のバランスというのが、非常に難しいですけれども。
近年、「思考を司っているのは、脳だけでは無い。腸もそうで在る。」なんていう説が出ていますね。「脳を持たない生物でも、腸で思考している。」という事ですが、「面白い説だなあ。」と思います。
蟻に関しては「本能と反射だけで行動している。」という感じは確かに在りますが、もしかしたら深い思考を有しているのかも。