出版不況が言われて久しい。若い層の活字離れに加えて、本を中古本販売店で購入したり図書館で借りたりする人が増えた事も、出版不況を助長させているとも。昔の様な大ベストセラーが出なくなり、出版に携わっている人達の大変さは想像に難くない。インターネット上で閲覧出来、人気を博した作品は紙媒体として出版される「ケータイ小説」の様に、今後も様々な試行錯誤が出版界で繰り広げられて行く事だろう。
どれだけ魅力的な内容の小説でも、手に取って読んでくれる人が少なければ大ヒットは難しい。そうなると、重要なのは「タイトル」。「このミステリーがすごい!」大賞で何等かの賞を受賞し、そして出版された作品の中には、受賞時と異なるタイトルに変わっているケースが幾つか在る。オリジナルのタイトルを見ると「このままだったら、確かに『手に取って読んでみようかな。』とは思わないかもしれないなあ。」と感じる。凡庸なタイトルでは世の耳目を惹かないだろうし、と言って奇抜過ぎて内容がさっぱり想像し得ないタイトルでも同様。「どういった作品なんだろう?」と好奇心を擽る、絶妙なタイトル付けが求められる。
その意味で言えば、万城目学氏の作品はタイトル付けが上手いと思う。(「ウルトラQ」の主人公を思わせる名前もかなりインパクトが在り、てっきり“狙った”ペンネームかと思いきや、何と本名だとか。)TVドラマ化された「鹿男あをによし」、映画化された「鴨川ホルモー」等、タイトルを目にしたら「どういう内容の小説なのだろう?」と思うだろうし、一度見聞したら忘れられない事だろう。彼の作品を見聞した事は無かったが、ずっと気にはなっていた。そこで今回、彼の近刊本「プリンセス・トヨトミ」を読む事に。この作品のタイトルも、なかなか興味を惹く物が在る。
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35年前、4歳だった松平は或る光景を目にした。当時大阪に住んでいた彼が目にし、今でも忘れられない光景。それは闇夜に浮かぶ大阪城の真赤に染まった姿だった。そして月日は流れ・・・。
この事は誰も知らない。5月末日の木曜日、午後四時の事で在る。大阪が全停止した。通常の街としての営業活動、商業活動は停止。地下鉄、バス等の公共機関も運転を止めた。種々の非合法活動すら、その瞬間、この世から存在を消した。長く閉ざされた扉を開ける重要な“鍵”となったのは、東から新たに遣って来た三人の調査官と、生まれた時から西に居た二人の少年少女で在る。いや、この場合、二人の少女と言うべきか。大阪が完全に停止した日より、遡る事十日。月曜日の朝に、物語は始動する。片や、東海道新幹線東京駅から。片や、大阪の“坂道を抱いた”商店街の一角から。
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大阪を代表する物は数多く在るが、豊臣秀吉が築城した大阪城もその一つだろう。関西人の気質として「御上を信用しない。」というのが良く挙げられるが、これも「天下人・豊臣秀吉を抱き、独自の文化や商業を発達させて来た地。」としての誇りが在り、それ故に「上から抑え付けられるのが嫌。東京なんて、何為るものぞ。」といった反骨心&大阪への深い愛着が育まれて来たとも言える。
豊臣秀吉が築城するも、その約30年後に徳川家康によって豊臣氏の滅亡と共に、灰燼に帰した大阪城。しかし家康の三男で、二代将軍の秀忠の代に再建が開始され、三代将軍・家光(秀忠の次男)が統治する1629年に完成するという、数奇な運命を持つ城でも在る。戦国武将を思い浮かばせる名前の登場人物達が、最後はこの城に終結する事になるのだが、そのストーリー展開は「良くもまあ、こんなシチュエーションを考えたものだ。」と感心してしまう程に突拍子が無い。「時をかける少女」や「なぞの転校生」等のジュブナイル作品を初めて読んだ時に感じた、何とも言えない懐かしさがこの作品には在った。
総合評価は星3つ。
どれだけ魅力的な内容の小説でも、手に取って読んでくれる人が少なければ大ヒットは難しい。そうなると、重要なのは「タイトル」。「このミステリーがすごい!」大賞で何等かの賞を受賞し、そして出版された作品の中には、受賞時と異なるタイトルに変わっているケースが幾つか在る。オリジナルのタイトルを見ると「このままだったら、確かに『手に取って読んでみようかな。』とは思わないかもしれないなあ。」と感じる。凡庸なタイトルでは世の耳目を惹かないだろうし、と言って奇抜過ぎて内容がさっぱり想像し得ないタイトルでも同様。「どういった作品なんだろう?」と好奇心を擽る、絶妙なタイトル付けが求められる。
その意味で言えば、万城目学氏の作品はタイトル付けが上手いと思う。(「ウルトラQ」の主人公を思わせる名前もかなりインパクトが在り、てっきり“狙った”ペンネームかと思いきや、何と本名だとか。)TVドラマ化された「鹿男あをによし」、映画化された「鴨川ホルモー」等、タイトルを目にしたら「どういう内容の小説なのだろう?」と思うだろうし、一度見聞したら忘れられない事だろう。彼の作品を見聞した事は無かったが、ずっと気にはなっていた。そこで今回、彼の近刊本「プリンセス・トヨトミ」を読む事に。この作品のタイトルも、なかなか興味を惹く物が在る。
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35年前、4歳だった松平は或る光景を目にした。当時大阪に住んでいた彼が目にし、今でも忘れられない光景。それは闇夜に浮かぶ大阪城の真赤に染まった姿だった。そして月日は流れ・・・。
この事は誰も知らない。5月末日の木曜日、午後四時の事で在る。大阪が全停止した。通常の街としての営業活動、商業活動は停止。地下鉄、バス等の公共機関も運転を止めた。種々の非合法活動すら、その瞬間、この世から存在を消した。長く閉ざされた扉を開ける重要な“鍵”となったのは、東から新たに遣って来た三人の調査官と、生まれた時から西に居た二人の少年少女で在る。いや、この場合、二人の少女と言うべきか。大阪が完全に停止した日より、遡る事十日。月曜日の朝に、物語は始動する。片や、東海道新幹線東京駅から。片や、大阪の“坂道を抱いた”商店街の一角から。
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大阪を代表する物は数多く在るが、豊臣秀吉が築城した大阪城もその一つだろう。関西人の気質として「御上を信用しない。」というのが良く挙げられるが、これも「天下人・豊臣秀吉を抱き、独自の文化や商業を発達させて来た地。」としての誇りが在り、それ故に「上から抑え付けられるのが嫌。東京なんて、何為るものぞ。」といった反骨心&大阪への深い愛着が育まれて来たとも言える。
豊臣秀吉が築城するも、その約30年後に徳川家康によって豊臣氏の滅亡と共に、灰燼に帰した大阪城。しかし家康の三男で、二代将軍の秀忠の代に再建が開始され、三代将軍・家光(秀忠の次男)が統治する1629年に完成するという、数奇な運命を持つ城でも在る。戦国武将を思い浮かばせる名前の登場人物達が、最後はこの城に終結する事になるのだが、そのストーリー展開は「良くもまあ、こんなシチュエーションを考えたものだ。」と感心してしまう程に突拍子が無い。「時をかける少女」や「なぞの転校生」等のジュブナイル作品を初めて読んだ時に感じた、何とも言えない懐かしさがこの作品には在った。
総合評価は星3つ。
いやあ、この作家の作品も読まれていましたか。以前にも書いたのですが、マヌケ様の読書の守備範囲の広さには、本当に敬服するばかりです。
自分の場合はこの作品しか読んでいないのですが、「良くぞこんなシチュエーションを考え付いたなあ。」と感じました。三崎亜記氏や道尾秀介氏、伊坂幸太郎氏等の作品も、そのシチュエーションの意外さには毎回驚かされるものの、SFタッチな部分に於いては眉村卓氏や筒井康隆氏といった大御所の作風に近い感じもします。
本棚はぉぃらの部屋に入れます。
てなわけで、明日から数日家の大掃除です。
パソには来ますよ。^±^
あまり時間は取れないかもしれないですが。