青柳碧人氏は過去に「日本の昔話(「一寸法師」、「花咲か爺さん」、「鶴の恩返し」、「浦島太郎」、「桃太郎」)を基にしたミステリーの『むかしむかしあるところに、死体がありました。』」、「同じく日本の昔話(「竹取物語」、「おむすびころりん」、「わらしべ長者」、「さるかに合戦」、「かちかち山」、「分福茶釜」)を基にしたミステリーの『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』」、「西洋の童話(「赤ずきん」、「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」、「眠れる森の美女」、「マッチ売りの少女」)を基にしたミステリーの『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』」、そして「同じく西洋の童話(「赤ずきん」、「ピノッキオの冒険」、「親指姫」、「白雪姫」、「ハーメルンの笛吹き男」、「ブレーメンの音楽隊」、「ほら男爵の冒険」、「三匹の子豚」)を基にしたミステリーの『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』を著して来た。
今回読了「むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。」は日本の昔話を基にしたミステリーの第3弾で、基にしている昔話は多いけれど、主体となっているのは「こぶ取り爺さん」、「耳無し芳一」、「舌切り雀」、「三年寝太郎」、そして「金太郎」。全部で5つの短編小説で構成されている。
「舌切り雀」を読んだ事が在る人なら、「正直で心優しい爺さんが小さな葛籠では無く大きな葛籠を、逆に意地悪爺さんが大きな葛籠では無く小さな葛籠を持ち帰っていた“ならば”、ストーリーはどういう形で終結する事になっていただろうか?」と思ったりしたのではないか?「女か、雀か、虎か」は、そんな人達の思いを汲み取った作品と言っても良く、用意されているのは「女の絵が描かれた小さな葛籠」、「雀が描かれた中位の葛籠」、そして「虎が描かれた大きな葛籠」という3種類。「其れ等の中から正直で心優しい爺さんが、“小”、“中”、“大”、其れ其れの葛籠を持ち帰ったら、どうなったか?」が描かれており、何れもオリジナルの様に「正直で心優しい爺さんにとって、めでたしめでたしな結末。」にならないのが面白いし、又、冒頭で記された或る事件とリンクさせているのは見事!
そして、最後の作品「金太郎城殺人事件」も謎解きの面では悪く無いが、他の3作品は個人的に凡庸な感じがした。数多くの日本の昔話を組み合わせた労力は買うけれど・・・。
総合評価としては、星3つという所か。