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此の島の出来る限りの情報が、何時か全世界の真実と接続する様に。沖縄の古びた郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子(みなこ)は、世界の果ての遠く隔たった場所に居る人達に、オンライン通話でクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。或る台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷い込んで来て・・・。
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「非現実的な世界を描けるのも、小説の魅力の1つ。」というのは、充分理解している。実際、そういう小説を読んで「面白い!」と思った事は何度も在るし、今でも忘れられない物も在る。だから、「非現実的な世界を描いているから。」という理由“だけ”で、其の作品を低く評価する事は無い。「非現実的な世界を描くので在れば、そういう非現実的な部分を忘れてしまう程、引き込まれてしまう魅力的な内容で在れば良い。」のだから。
そういう意味で言えば、近年の芥川賞受賞作品には、非現実的な世界を描いた作品が多い。「現実的な世界を描きつつ、妄想や空想といった物を入れ込んだ作品。」も含むが、其の多くは恐ろしく魅力に欠け、非現実的な部分がとても気になってしまう。
第163回(2020年上半期)芥川賞を受賞した小説「首里の馬」(著者:高山羽根子さん)も、そんな1つだった。未名子がオンライン通話で繋がる人達の状況、彼女自身の“仕事”内容、突然庭に迷い込んで来た宮古馬等々、非現実的な世界がとても気になってしまい、ストーリーの中にどっぷり入り込めなかった。内容が魅力的で在れば、気にならなかったのだろうけれど・・・。
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・どんなに近所の人とうまくやっていても、自分たちの中に特別な暴力性がないと主張しても、人は、知らないことで人が集まって、なにか隠れるような生活をしている人のことを、あのとき以来とても怖がるようになってしまった。みんなが知らないところで、みんなの知らない組織を作っていること、それ自体が政治的な意図の大小にかかわらず罪と認定されるようになってしまった。
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総合評価は、星2.5個とする。