ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「蹴れ、彦五郎」

2022年10月05日 | 書籍関連

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桶狭間での父・義元の急死を受け、 彦五郎氏真駿河今川氏当主となった。だが、落日直ぐ其処に。家臣だった松平元康(徳川家康) 離反甲斐武田からも圧迫され、正室で在る相模北条氏の娘・早川殿と共に、転々落ち行く日々。そんな中にも、救いは在った。氏真は近江で出会った童子達の師となり、或る希望を抱く然し無情にも、天下其の掌中に収めつつ在った織田信長は、氏真と心通わせた子等を叛乱縁者として殺してしまう。蹴鞠名手で在り、歌をこよなく愛した男が見せた最後の心意地とは・・・。
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小説塞王の楯」(総合評価:星4.5個)で第166回(2021年下半期直木賞を受賞した今村翔吾氏は、関西大学文学部を卒業後、ダンス・インストラクター作曲家埋蔵文化財調査員を経て、30歳から作家活動を始めたという異例経歴有する。そんな彼が書いた短編小説収めたのが、今回読んだ「蹴れ、彦五郎」。初期の作品が多く、表題となっている「蹴れ、彦五郎」は、今村氏が最初に書いた作品とか。

今川氏真、織田秀信安本亀八太田道灌間部詮勝
新発田重家武田義信、そして北条氏規が、其れ其れの作品の主人公。歴史好きならば知っているが、一般的な知名度という点で言えば、太田道灌以外は低いのではなかろうか。特に安本亀八なんて、恐らく知っている人は極めて少数だろう。誰もが知っているという訳では無い歴史上の人物に“光”を当てている所に、今村氏の非凡さを感じる。

何の作品も良いが、特に印象に残ったのは、武田義信を描いた「晴れのち月」という作品。武田義信は武田信玄嫡男で、武田氏継ぐだったが、信玄から謀反の疑いを掛けられ、廃嫡されてしまった人物。戦闘能力のみならず、指導者としての能力も高かった様で、「勝頼では無く、彼が信玄の跡を継いでいたら、武田氏は滅亡しなかったかも知れないなあ。」と思ってしまう。悲運武将”の1人と言って良いだろう。

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生人形江戸時代の後期から明治時代に掛けて製作された細工物で在り、実際に生きている人間の様に見える程の精巧細工施された人形。
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「三人目の人形師」という作品で、生人形という存在を始めて知った。色々調べてみると、確かに“生きている人間”と見紛う程、実に精巧に出来た人形だ。何も知らないで夜中にパッと見たら、ドキッとしてしまうだろう。そんな生人形を手掛けていた1人が安本亀八。他2名の人形師を交えた話で、子供の頃に読んだ怪談(「雨月物語」の中の1作品と記憶していたが、どうも違う様だ。記憶が非常に曖昧になっているので、微妙に違っているかも知れないが、「作りの名人を父に持つ娘が、思う様な音色を出す鐘が作れずに悩んでいる父を見兼ねて、或る決心をする。そして、何とか作り上げた鐘が思い通りの音色を出せて喜ぶ父親だったが、『等を溶融する過程で、娘が其の中に身を投じていた事(「若い女性の血を混ぜ合わせると、良い音色の鐘が出来上がる。」という話を娘は聞いたので。)により、良い音色が出せる様になった。』事を知り、嘆き悲しむ。」といった話だったと思う。)を思い起こさせる内容。

今村氏が記した後書きも印象的。作家になって間も無い頃、北方謙三氏と会って話した内容等、此の位強い意志が無ければ、一流の作家にはなれないのだろうな。」と思わされる逸話許りなので。とても自分には無理だ。

総合評価は、星4.5個とする。


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