TV放送の黎明期は生放送が殆どだった為、当時の映像は残っていなかったりする。又、録画放送が多くなった時代でも、収録テープが非常に高価だった事から、収録した内容に“上書き録画”するケースが結構在った為、昭和50年代の作品ですら、放送局に保存されていない事は珍しく無い。“放送文化”が軽んじられていた証左と言えるだろう。
NHKの公式サイト内に、「NHK番組発掘プロジェクト通信」というコンテンツが在る。此処では、「放送局に保存されていない作品の映像を、有名人や一般人から提供して貰い、一般公開して行くというプロジェクトの現状。」を、毎週紹介している。
今でこそ1家に1台どころか、1人に1台という感じになった“録画機”だが、昔は非常に高価だった。有名人ですら所有していなかった時代、一般人なら猶更だ。そんな時代でも録画機を所有し、今となっては貴重な作品を録画&保存して来た人が居たからこそ、文章だけでは伝わって来ない“当時の作り手達の熱さ”に、我々は触れる事が出来るのだ。
で、12月22日に公開されたNo.177「34年前のお正月番組『正しい正月のすごし方』」では、1984年1月2日にNHKで放送された「あんけーとショー 正しい正月のすごし方」という番組を紹介している。(今は2017年なので、厳密に言えば「33年前」なのだが、元記事に合わせて、「34年前」という形で記す。)
司会の伊東四朗氏が異常に若く、非常に懐かしい。当時は46歳なのだから、今より遥かに若いのは当然なのだが、今の彼しか知らない世代にとっては、「えー。」という感じだろう。
スタジオに集まった「会社の課長100人」、「OL100人」、そして「小学生100人」に其れ其れ質問し、回答を紹介するという内容。回答からは“当時の世相”が感じられたりして、実に興味深い。
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【会社の課長100人】
1位:家族と共に
2位:寝正月
3位:酒浸り
4位:海外旅行
5位:読書
【OL100人】
1位:海外旅行
2位:スキー
3位:家族と共に
4位:寝正月
5位:酒浸り
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1点を除いては、今と余り変わらない正月風景という感じ。異なる1点と言えば、元記事でも触れられている様に、「OL100人」の2位に「スキー」が入っている事。1987年に公開された映画「私をスキーに連れてって」がヒットし、スキー・ブームが再来。ピークの1993年には、スキー人口が約1,860万人にも達したそうだ。(当時、自分は全くスキーをしなかったが、周りでは冬になるとスキー場に行く人間が少なく無かった。)番組が放送された1984年は、スキー・ブーム再来よりも以前だが、バブル崩壊直後という事も在り、費用の掛かるスキー場に足を運ぶOLが多かった訳だ。
小学校高学年に聞いたアンケート「年賀状を出す枚数は?」では、「28枚」というのが平均。「意外と少ないな。」という感じもしたが、今の同学年の子達ならば、メールやLINEでの代用に加え、「個人情報保護の観点から、住所が判らない。」という理由等から、もっと少ないのかもしれない。因みに、スタジオに集まった「会社の課長100人」の平均枚数は「113枚」。此れも、今より多そうだ。
「1人の人から貰った御年玉の平均金額」というのも紹介されている。都市銀行が行ったアンケート結果で、対象となった年代が記されていないのだけれど、恐らくは小学生対象と思われる。「2,577円/人」との事。今の小学生だと、相場は「3千円~5千円」という事なので、半額位のイメージか。
管理人さんが書かれているように、テレビ文化が充実して作り手の熱情が伝わる、というのは、家庭でゆったりしたいという、男性層が居間でテレビでも見ながら、だらだらしたいという意見と一致するものでしょう。
テレビに「力」があるからこそ、その忠実な視聴者で居られる、という事は、ライフスタイルへの干渉する事が出来る、という事で、テレビにとって良かった時代とは、何も、テレビ製作陣を甘やかすものではなく、イケイケの攻めのスタンスにあった時代を映すものと思うのです。
テレビは、社会の世論や勢いを映すもので、それが元気であって欲しいというのは、その社会の一員である事を自覚する個人の願いでもあると思います。テレビは、保守であり、リベラルでもある。いつの時代も、変わらないものもありますね。
「正月はゆったりとし、だらだら過ごす。」、此れは一定年齢以上の人間の少なからずにとって、ずっと変わらない習慣なのかもしれませんね。逆に、「若者はアウトドアに勤しむ。」というのも、此れ又概して変わらない習慣の様にも。
「TVは保守で在り、リベラルでも在る。」、そういうスタンスが良いのだと思います。何方かに極端寄ってしまうのでは無く、双方のスタンスを提示する事で、視聴者の側が考え、そして自分で取捨選択する。そういう環境で在って欲しい物です。
今年も1年、何卒宜しく御願い致します。