ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「虚人魁人 康芳夫」 Part2

2005年05月07日 | 書籍関連
学生時代の破天荒な言動*1も凄いが、プロデューサーとなって以降の逸話の数々が実に興味深い。

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「素性も怪しいヨーロッパの流れ者を掻き集め、頭にはターバンを巻かせた、顔には靴墨を塗って黒くさせた上で、『アラビア大魔法団来日!』とぶち上げ、大儲けをした話」(ポスターには当時売り出し中だったイラストレーターの横尾忠則氏を起用し、大評判になったのだとか。あの三島由紀夫氏も、この”インチキ興行”にまんまと騙され、何度も観戦に訪れた上、雑誌やTV等で賞賛を繰り返したのだとか(笑)。)

「ジャズ界の大御所マイルス・デイビスの日本招請を企図するも、デイビス氏の過去の逮捕歴(麻薬)から入国拒否を食らい、公演キャンセルに追い込まれた話」(時の政治家達との”ブラック”な遣り取りが生々しい。結局は裏金も功を奏さず、康氏は大損害を被り、奈落の底に突き落とされる事になる。)

起死回生を図り、高級日本料理店の美人女将を「世紀の女占い師」に仕立て上げ、”第一次美人占い師ブーム(?)”を巻き起こした話」(単なる”カモ”として、美人女将に近付いて行ったとする康氏のドライさが或る意味凄い。当時、若手リポーターだった梨本勝氏も、康氏の”仕掛け”にまんまと引っ掛かった一人だったのだとか。マスメディアでこの女占い師が広く取り上げられる様になり、康氏は再び大金を手にする事となる。) 等々
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イベントへ地元ヤクザを介在(金銭供与等。)をさせない為に、地元有力紙に”金を払って”共同開催者(乃至は主催者)になって貰う形式を最初に編み出したのが康氏だったとか、初期の頃のボリショイサーカス*2招請が半端じゃなく儲かった理由。そして、様々なロシア興行が打てた裏には池田勇人元首相の大親友であり、共に「宏池会」を立ち上げて初代事務局長になった人物の協力が在った為だったのだが、その人物は実はソ連のスパイだったと明かしている等、戦後の世俗史や芸能史のみならず、政治史の”裏”の部分をも赤裸々に記している。福田赳夫元首相や石原慎太郎氏等の有名人との意外な交流関係も描かれ、ついつい惹き込まれてしまう内容。

自信過剰に過ぎ、個人的には友達になりたいタイプで無い康氏。しかし、上記した様に自らを「虚業家」等と称し、露悪な面を前面に押し出している彼の自伝は、下手なピカレスク小説よりも遥かに痛快さを覚えるのも事実。妙な御為倒し弄して、乗っ取り工作を画策し、挙句の果てに”泡銭”を巻き上げる様な輩と比較すると、余程にそのストレートさが心地良い。

*1 康氏と同じ東大出身で今や自民党の大幹部である亀井静香氏が学生だった際、「駒場祭」の焼き鳥の模擬店で、キャンパスをうろついていた野良犬や飼い犬を殺して焼いて売ってしまったという話(全く知らなかったのだが、「犬殺し事件」と呼ばれて有名な話なのだそうだ。)は強烈だった(^o^;;;。

*2 或る日、サーカスの駐車場を何とは無しに歩いていた康氏の耳に、駐車中のサーカス団の車から聞こえる激しいロシア語の怒鳴り声が飛び込んで来たという。「何事か?」と思い近付いた彼の目に映ったのは、サーカス団の団長に対して、これ以上ないという位の罵声を浴びせていたサーカス団の運転手の姿だった。下向き加減で怒られっ放しの団長の姿に、立場逆転の不思議さを覚えた康氏。後で判った事には、運転手というのは仮の姿で、実際にはKGBの幹部だったとの事。運転手に化けてサーカス団と行動を共にしつつ、諜報活動に励んでいたというのだから、007顔負けの話だ。
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3 コメント

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トラックバックありがとうございます (金鵄堂)
2005-05-08 21:49:07
いやあ、亀井静香さんの「犬殺し」にはビックリしました。私もこの事件は全く知らなかったんです。しかし、近頃これほど興奮させられた本はありません。康さんの次なる行動が楽しみです!
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虚人魁人康芳夫 (たなかま)
2005-09-25 23:49:04
『虚人魁人康芳夫』についてとても詳しく書かれていたのでTBさせていただきました。
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コメントありがとうございました。 (たなかま)
2005-09-26 21:40:25
遅ればせながら、はじめまして。私の愛想のないコメントに、大変丁寧なコメントを頂きまして、ありがとうございました。



私のブログに書いている竹熊健太郎氏の「篦棒な人々」(残念ながら絶版なので図書館ででも借りてください)をぜひお読み下さい。社会批評家としての康氏の側面がかいま見られます。また、三島由紀夫の作品で氏が最も好きだと語っている「鏡子の家」もお勧めです(既読だったらごめんなさい)。



では、これからもよろしくお願いします。
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