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大村奈美(おおむら なみ)は、母の実家・吉川(よしかわ)家の納屋の草刈りをする為に、母、伯母、従姉妹と共に福岡から長崎の島に向かう。吉川家には“古か家”と“新しい方の家”が在るが、祖母が亡くなり、何れも空き家になっていた。奈美は2つの家に関して、伯父や祖母の姉に話を聞く。吉川家は“新しい方の家”が建っている場所で戦前は酒屋をしていたが、戦中に統制が厳しくなって廃業し、満州に行く同じ集落の者から家を買って移り住んだと言う。其れが“古か家”だった。島には何時の時代も、海の向こうに出て行く者や、海から遣って来る者が在った。江戸時代には捕鯨が盛んで、蝦夷でも漁をした者が居り、戦後には故郷の朝鮮に帰ろうとして船が難破し、島の漁師に救助された人々が居た。時代が下って、カヌーに乗って鹿児島から遣って来たという少年が現れた事も在った。草に埋もれた納屋を見乍ら奈美は、吉川の者達と2つの家に流れた時間、此れから流れるだろう時間を思うのだった。
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第162回(2019年下半期)の芥川賞を受賞した小説「背高泡立草」(著者:古川真人氏)。今年で32歳になる古川氏は、今回を含めて過去に4度芥川賞の候補に選ばれている。其れだけ、“筆力の高い小説家”として高く評価されているという事なのだろうが・・・。
「背高泡立草」は、“2つの時代”が交互に描かれているのだが、“同じ島に関係する人達”という事以外には互いに関係性が在るとは思えず、どういう意図を持って古川氏が取り上げたのか、全く理解出来ない。
文章は無駄に長文が続き、漢字を使った方が判りが良い部分に使われていなかったりで、読み進めるのが非常に大変。「此の作品で、古川氏は何を訴えたかったのか?」というのが全く判らず、申し訳無いけれど「読む時間が無駄だった。」という思い。
「芥川賞=純文学の新人に与えられる文学賞。直木賞=大衆小説に与えられる文学賞。」という位置付けになっている。過去に何度か書いたが、「直木賞受賞作品には評価出来る物が少なく無いけれど、逆に芥川賞受賞作品は“外れ率”が非常に高い。」という思いが自分には在る。今回の「背高泡立草」も、完全に外れ作品。
総合評価は、星2つとする。