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“御遍路さん”を迎える場所として、道後温泉に在る架空の宿「さぎのや」。行く場所も帰る場所も失った15歳の少女・鳩村雛歩(はとむら ひなほ)は、此の宿の美人女将から、こう声を掛けられる。「貴方には、帰る場所が在りますか?」。女将や地元の人々との交流を通じて、少女は、自らの生き方と幸せを見付けられるか?
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「他者に対して不寛容になって行く時代だからこそ、手を差し伸べ合って、希望と悲しみを分かち合う理想郷が必要で在る。」と語る小説家・天童荒太氏は、愛媛県松山市の出身。「道後温泉本館から、300m程しか離れていない。」という家で生まれ育ったという彼が、道後温泉の架空の宿「さぎのや」を舞台に、人と人との温かみを描いた小説が、今回読んだ「巡礼の家」で在る。
天童作品と言えば、「“心に深い傷を負った人々”を取り上げ、重いタッチで描いた内容。」が特徴なのだけれど、そういう作風を期待して読むと、「えっ!?」という意外性が在る事だろう。心に深い傷を負った人々は登場するものの、全体としてコミカルな文章なので。コミカルと言っても、「売れない御笑いタレントがギャグを“執拗に”繰り出すも、全く受けずに、場を凍らせてしまった。」時の様な、非常に“寒さ”を感じさせる類いの物。
ネット上のレビューは、概して高評価。「現実社会が不寛容さを増して来ているだけに、こんなにも人と人との温かみが感じられる作品は、とても感動した。」という事なのだろうが、時折入る“幻想的な描写”に加え、「全く面白さが感じられないコミカルさ。」が、自分を思いっ切り鼻白ませた。
総合評価は、星2.5個とする。