「V9」とは、「ジャイアンツが1965年から1973年迄、9年間連続してセ・リーグ優勝を果たし、且つ日本シリーズを制覇した事。」を意味する。9年間連続のリーグ優勝も然る事乍ら、9年間連続の日本シリーズ制覇なんて、今後は恐らく達成される事は無いだろう。
「V9という偉業達成には、“ON”の存在が欠かせなかった。」と言って良い。「王貞治氏と長嶋茂雄氏という不世出の超一流選手が、同じ時代の同じチームに存在した。」という事は、奇跡に近い。
・・・と言っても、自分は世代的に長嶋選手の全盛期を知らない。長嶋氏と言えば、監督のイメージが強い。一方で、王選手の全盛期は知っている。王選手が存在しなかったら、自分はプロ野球に興味を持つ事が無かったかも知れない。
「記録の王、記憶の長嶋。」と、良く言われる。「日本プロ野球の野手記録に関して言えば、『1位』の多くを王氏が押さえているのに対し、記録の面では王氏に及ばないものの、多くの野球ファンの記憶に残るプレーを長嶋選手は見せて来た。」という事を現した表現だ。
今季、長嶋氏が残した“1位記録”が、2つ破られた。1つは“セ・リーグの新人選手のシーズン最多安打記録”で、1958年に長嶋選手が記録した「153安打」が最多だったが、タイガースの近本光司選手が「159安打」を放ち、最多記録を更新した。(新人シーズン最多安打は、1956年に高橋ユニオンズの佐々木信也選手が記録した「180安打」。)
又、“ジャイアンツ生え抜き右打者のシーズン最多本塁打記録”は、1968年に長嶋選手が記録した「39本」だったが、坂本勇人選手が「40本」を放ち、最多となった。
“記憶の長嶋”と呼ばれるが、“セ・リーグの新人選手のシーズン最多安打記録”は61年間、そして“ジャイアンツ生え抜き右打者のシーズン最多本塁打記録”は51年間破られなかったのだから、記録の面でも凄い選手だったのだ。
其の事を改めて感じさせられた別の記録が、通算本塁打数「444本」で在る。王氏の「868本」と比べると見劣りしてしまうが、今季引退する事となった阿部慎之助選手が「406本」と追い抜けなかった事を考えると、凄い記録で在る。
2013年終了時点で、阿部選手は「327本」を放っていた。プロ13年間での記録なので、約25.1本/年のペース。「此のペースで行けば、2018年には長嶋氏の記録『444本』を追い抜く。」と当時は期待していたけれど、残念乍ら叶わなかった。プロ17年間で444本(約26.1本/年)の長嶋氏と、プロ19年間で406本(約21.3本/年)の阿部選手。本塁打を打ったペースでも、長嶋氏が上回っている。