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「引き籠もり」作家として活躍する石田水瀬(いしだ みなせ)と幼馴染みの徳川大樹(とくがわ だいじゅ)。「隠れキリシタン」の新説に挑む為、「引き籠もり」なのに、何とか取材に遣って来たが、調査は思わぬ方向へと広がって行く。キリシタン大名、河童の一種「ヨッカブイ」、更には「妖怪」、「ユダヤ教」、「一向宗」・・・。「河童の手」、山に入り山童となる河童。次から次に繋がって行く謎。彼等は、歴史の常識を覆す新説に辿り着けるのか。
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第18回(2019年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の隠し玉に選ばれた小説「ガラッパの謎 引きこもり作家のミステリ取材ファイル」(著者:久真瀬敏也氏)は、キリシタン大名の小西行長やイエズス会員のルイス・デ・アルメイダ、武士・相良清兵衛等、歴史好きが引き込まれる人物が次々に登場する上、河童や妖怪等、UMA好きを喜ばせる存在も登場する。そして、何よりも「河童=キリシタン」という説を取り上げているのが興味深い。「河童の頭頂部が禿げているのは、宣教師の剃髪で在るトンスラを指している。」、「頭に水が無いと死んでしまうという河童の特徴は、キリスト教の洗礼で頭に水を掛ける事から来ている。」、「九州の河童は、仏飯や線香の匂いが嫌いという事になっているが、此れは一神教を信じるキリシタンが、他の宗教をイメージさせる物を嫌っているから。」等、確かに共通点を感じる。
又、歴史が好きな人間だが、「隠れキリシタン」と「潜伏キリシタン」の違いを知らなかった。他にも初めて知る事が結構在り、とても勉強になった。
そんな感じで、「良く調べたなあ。」と感心する筋立てなのだが、非常に残念なのは「何とも締まりの無い結末になってしまっている。」事。「色々盛り上げておいて、最後はこんな終わり方なの?」と、がっかりしてしまった。
全体の3分の2位の段階では、総合評価「星3.5」を与えても良い感じだったけれど、余りにも残念な結末が響き、総合評価は星2.5個とする。