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江戸・本所に在る徳兵衛長屋の奥には祠が在り、「お守様」という人形が祀られている。町で殺人事件が連続し、岡っ引の甚八(じんぱち)は、被害者が強い恨みを買っていた事、そして「お守様に御願いすれば、恨みを晴らしてくれる。」という噂が出回っている事を知る。甚八は、子供の頃に起きた或る事件を思い出し乍ら、出戻りの姉・おしのと幼馴染みの有森柳治郎(ありもり りゅうじろう)と共に、事件の真相に迫る。
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第16回(2017年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の隠し玉に選ばれ、今夏に上梓された小説「本所憑きもの長屋 お守様」(著者:福田悠さん)は、江戸を舞台にした“時代ミステリー”だ。以前に同じ隠し玉に選ばれ、そして上梓された「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」も同じ江戸を舞台にしていたが、此方は「時代ミステリーとSFを合わせた作品」だったが、「本所憑きもの長屋 お守様」の方は純粋な時代ミステリー。
「祠に祀られた『お守様』なる人形に御願いすると、恨みを晴らしてくれる。」というのは、「必殺仕事人シリーズ」を思い浮かばせる設定だが、「本所憑きもの長屋 お守様」はそういう“既視感の在る設定”が少なく無い。其の最たる物は、“真犯人の真の姿”。
「真犯人が誰なのか?」のみならず、其の真犯人の真の姿も、容易に察しが付いた。「もっとも真犯人らしく無い人間が真犯人。」というのはミステリーの鉄則と言っても良いが、其の場合、「真犯人が、真犯人で在る事を周りに気付かれない様に装っている。」以外で在れば、考えられるパターンは限られている。「恐らくは此のパターンだろうな。」と予想したら、全く其の通りだったので興醒めしてしまった。
或る存在に対する復讐の為、真犯人が採った手法は、回りくどさを感じなくは無かったものの、「成る程なあ。」と思わされたけれど、上記した様に「既視感の在る設定が多い。」という点が、此の作品の評価を下げさせてしまっている。
総合評価は、星2.5個とする。